インパクトのあるタイトルだったので、読む気になりました。
第1章「財政破綻はいつ起こるのか?」では、日本の借金大国のありさまを描きます。2020 年ころには政府が国内から借金できなくなるということで、外債を発行することになると予想しています。単なる破綻本と違い、客観的な記述がされているように思いました。まあ、財政破綻があるかどうかはよくわからないわけですが……。なお、消費税を増税するときは、段階的に増税するよりも一気にあげる方がいいということは初めて知りました。もっとも、そんなことは政治的に非常に困難でしょうが。
第2章「債務超過の日本財政」も第1章の続きで、日本のバランスシートを考えると相当にひどいということになります。債務超過は 280 兆円と聞くと、一体どうすればいいのだと思います。さらに大きな問題は、社会保障(年金・医療・介護)が抱える「暗黙の債務」がかなり大きく、実は 1430 兆円あるのだということです。
第1章と第2章の二つの章は、日本の現状を描き出すものです。
第3章「「埋蔵金」で問題は解決しない」では、「埋蔵金」を活用することは国債を発行することと同等であり、問題は解決されないとしています。
第4章「縮む日本経済、進む世代間格差」では、財政が抱える本当の問題は世代間格差であると説きます。
第3章と第4章の二つの章は、誤解されやすい認識を正そうとしているかのようです。
第5章「「崩壊する社会保障」の再生プラン」では、日本の現状を改善するにはどうしたらいいかということで、「事前積立」などのいろいろな方策を提案しています。
第6章「いまこそ世代間の公平を実現せよ」では、「世代間公平委員会」を作り、「世代会計」を予算編成に活用し、世代間の公平を実現することを提案しています。
第5章と第6章の二つの章は、問題を解決するための著者からの提案です。
こうしてみてくると、タイトルは本書の内容からかなり外れています。まあ、編集者が付けたものだと思いますが、タイトルに誘われて読む気になったのはやや的外れでした。特に「2020年」と明記してあると、あと10年もないのかということで、日本の財政を憂える人は本書を手にとることが多いのではないでしょうか。
それはともかく、財政破綻の問題は、年金をはじめとする多くの問題とリンクしていることがわかります。それだけに、日本を根本的に改造するような大手術をせずに、今のままズルズルと運営していくと、天地がひっくり返るような事態になりかねません。
でも、今の民主党政権を見ていると、とてもこんなことはできないと思えます。それが一番悩ましいところです。
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