2011年02月19日

高齢化と自動車保険

 乙は日経ビジネスオンラインで見ました。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20110215/218447/
 高齢化が進展すると自動車保険の保険料が上がるという記事です。今まで30歳以上は保険料が一律だったものを、60歳以上とか70歳以上という区分で保険料を上げるということになっているようです。
 どのくらい保険料があがるのかについては、
http://hakuzou.at.webry.info/201101/article_7.html
によれば、以下の通りです。
一例として 損保ジャパンでは 標準モデルの現行自動車保険料を今年4月から以下の如く値上げするそうです。
59歳以下: 年齢層ごとに1000円以下
60〜69歳: 3000円
70歳以上: 7150円

 日経ビジネスオンラインの記事の弱いところは、高齢者は事故率が高いことを主張しながら、それがどのくらいかを示すデータを一切挙げず、高齢ドライバーが増えている、若年ドライバーが減っているということばかりを述べているところです。年齢別の運転免許比率などは、本質的な問題ではなく、年齢別の事故率こそが問題です。もしも、年齢別の事故率がすでにはっきりしているなら、日本社会の高齢化率が進展しようとしまいと、年齢別の保険料徴収をしなければ不公平です。「今は高齢者が少ないから、みんなで面倒を見ましょう」という話ではないはずです。
 ところで、年齢別の事故率は、実際のところどうなっているのでしょうか。
http://spaceglow.at.webry.info/200904/article_55.html
http://spaceglow.wordpress.com/2006/12/02/%E9%AB%98%E9%BD%A2%E8%80%85%E3%81%AE%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A%E4%BA%8B%E6%95%85%E7%8E%87%E3%81%AF%E5%B9%B4%E3%82%92%E8%BF%BD%E3%81%A3%E3%81%A6%E6%B8%9B%E5%B0%91%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B/
では、高齢者の自動車事故率は年を追って減少しているとしています。
http://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/files/tosi_kei/ruijikikan1/shiryo/h16/shiryo_3/part7.pdf
では、高齢者の事故件数が増大していることを述べていますが、それは高齢者の数が増えているからであって、事故率の話ではありません。
 また、平成15年の交通年鑑を資料として、北海道内の年齢階層別事故率が載っていますが、千人あたりで
0-15 歳  0.1 未満
16-24 歳  1.7 程度
25-64 歳  1.4 程度
65 歳以上  2.9 程度
となっています。しかし、これは、クルマを運転しているときの事故率ではなく、「事故にあった率」ですから、高齢者が歩いていてクルマにぶつけられることが多いのかもしれません。
http://ghe.med.hokudai.ac.jp/Others/new_page_kotsujiko1.htm
には、「2.高齢運転者事故の実態 (過去のデータから)」のところに北海道限定のデータですが、1996-2000年の年齢別の事故率が掲載されています。事故率の「%」が何のパーセンテージか、よくわかりませんが、しかるべき人数(千人?)あたり、しかるべき期間(1年?)あたりの運転者としての事故の発生率でしょう。
 それによれば、年齢別事故率は以下の通りです。

25歳未満 1.51
25〜29  0.86
30歳代   0.8
40歳代   0.76
50歳代   0.88
60〜64  1.21
65〜74  1.74
75歳以上 3.6

 なるほど、高齢者は事故を起こしやすいようです。こういうデータが全国的にあると思いますが、それを参照しないと、高齢者が事故を起こしやすいのかどうかについては何ともいえないのではないでしょうか。
 ところで、これに関連するものとして、別のデータもあります。
http://cwaweb.bai.ne.jp/~zxr250/tokutyou.html
によると、平成12年の年齢別交通事故発生件数の表(B)がありますが、それによれば、免許保有者数あたりの事故件数を見ると、若い人が高い傾向は見てとれますが、高齢者は特に高くなっていません。

 なお、日経ビジネスオンラインの記事では、自動車保険と年金を結びつけて論じていますが、乙はこれはミスリーディングだと思います。自動車保険は保険であり、みんなで払った保険料で事故を起こした人に保険金を払おうということです。したがって人口の高齢化は直接には制度に影響しません。しかし、年金は、若いうちは一方的に保険料の形で払うだけで、年をとると今度は一方的に受け取るだけです。しかも年齢層ごとに人口が大きく違っているという性質をもっています。ですから、こちらは人口の高齢化が直接影響します。
posted by 乙 at 05:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 保険 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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