2011年03月10日

武富士創業家が怨嗟の的?

 乙はダイヤモンドオンラインで読んだのですが、最高裁判決で巨額還付金を得た武富士創業家が怨嗟の的になっているという話です。
http://diamond.jp/articles/-/11287
 何だか、勘違いしている人がたくさんいるような気がします。
 まず、2000 億円が還付されたことをどう考えるかですが、これは還付が当然で、そうしなければ、日本は法律が機能せず、お役所が勝手に何でも課税できる国だということが世界中にばれてしまいます。日本の将来を非常に暗くするものになったでしょう。今回、最高裁は法律に則って常識的な判断をしたと思います。
 というわけで、2000 億円は武井俊樹氏に還付されて当然の話です。このお金は個人の所有物です。したがって、この資金に関して個人に請求するというのは、会社に対して請求するべきものを個人に求めているということで、勘違いとしかいいようがありません。個人に対して請求できると考える人は、仮に今回の訴訟で武井俊樹氏が敗訴して、1330 億円の追徴課税がそのままになった場合でも、武井俊樹氏に請求するべきです。だって両者はまったく別の事件ではないですか。2000 億円があるから請求する、ないなら請求しないというのはスジが通りません。今回の訴訟の決着がどう付こうと、それとは別に訴訟を起こすべきです(でした)。
 そもそも、武富士の過払い金問題だって、相当におかしい話です。当時のグレーゾーン金利で借りた人が、返済を終えたあとで、利息はもっと安かったはずだとして訴訟しているわけで、こんなことを認めたら(実は裁判所がすでに認めてしまっているわけですが)「契約」が根本的に成り立たなくなってしまうではないですか。本人同士が納得して「契約」したものをあとから取り消すことができるという判断は、非常に慎重にやらなければなりません。世の中の秩序をひっくり返してしまいます。
 結果的に、サラ金業界が取りつぶしになり、借金したい人が正規に借りることができなくなりつつあります。これは良い悪いの問題ではなく、ルールが変わればそれに応じてみんなの判断基準・行動基準が変わるということです。
 こんなあたりからも、日本の閉塞感がいよいよ大きくなっていきそうです。
posted by 乙 at 05:00| Comment(7) | TrackBack(0) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
契約が守られないとか、あとから取り消されるということは、昔からよくあることで、グレーゾーン金利の判決後も、「世の中がひっくり返る」ほどの混乱は起きていません。

その程度のことは、「想定の範囲内」として経済活動をする覚悟が欲しいところです。
Posted by 札幌の不動産屋日記 at 2011年03月10日 08:04
札幌の不動産屋日記様
 今回の混乱をどう見るかですが、乙は、かなり大きな混乱だと見ています。
 見方の違いですね。
 「世の中がひっくり返る」は強すぎる言い方だったかもしれませんが。
Posted by at 2011年03月10日 11:28
私も大きな混乱を招いたと思います。
圧倒的に消費者側(借り手側)に問題があると感じています。
Posted by いつもの愛読者 at 2011年03月10日 19:28
武富士という企業のお金と個人のお金を混同するような議論は大問題ですね。株式会社の株主や労働者の有限責任という現代の資本主義の根幹を脅かす重大な話です。

倒産企業の株主になっていたら、いつの間にか債務者への債務支払いのために株主として個人資産を出せとか言われたらたまったものではありません。
Posted by 吊られた男 at 2011年03月11日 00:27
吊られた男様
 「有限責任」というひとことで、私のいいたいことをズバリ表現していただきました。
 はい、まさにそういうことです。
Posted by at 2011年03月11日 06:45
まず還付の問題については,脱税目的の脱法的な行為であり,公序良俗に反するとの判断もありえると思います。その場合には租税法律主義との兼ね合いもありますが,課税の公正・公平さが保たれており,日本の将来を暗くするものではないと思います(拝金主義をのぞき)。
また,2000億円の還付があるから請求すると言うのは,訴訟だって費用がかかりますし,取れない相手に請求するのは無駄ですし,お金のありかがわかってから訴訟にいたると言うのはよくあることです。しかも武富士が破綻し,請求先を定めるにあたって,今回の訴訟の結果は無関係ではありません。
グレーゾーン金利について,「契約」と書いてありますが,契約でも「法律」に違反すれば当然無効で,法律に違反した契約を押し通すほうが秩序がひっくり返ります。なぜ無効となったのか,よく判例を勉強して下さい。
なお,高金利で借りても結局は破綻するので,このことが日本の閉塞間とはつながらないと思います。
Posted by 羊 at 2011年03月16日 15:09
羊様
 還付の問題については、租税法律主義こそが重要であって、法律に書いてないことで恣意的に税金を取られるというあり方は非常に大きな問題であると思います。
 2000 億円があるから請求するという考え方は、乙はどうにも納得できません。まあ、それ以前に会社と個人の混同のほうが大きい問題なのですが。
 グレーゾーン金利の場合、「契約」時に「法律」に違反しているとはいえないように思います。2種類の金利があったときに、それをどう考えるべきかということになりますが、当然、その時点で官庁なり何なりにお伺いを立てていたと思います。もちろん、裁判所の判断が最終的なものですが、結果的に、後になってから前の契約を「法律違反だった」としていることになります。その理屈がわからないわけではありませんが、裁判所の判断一つでビジネスが大きく変わってしまうわけです。せっかく花開こうとした一つのビジネスが消えてしまう(しまった)ことは明らかです。一つの例ですべてを判断してはいけませんが、こういう例の積み重ねで「閉塞感」が醸成されると思います。借り手が破綻するのは一つの具体例ですが、どちらかというと借り手の判断力のなさが原因のように思われます。それに対して、この裁判所の判決の話は、日本社会のしくみを変えてしまったようなものです。
Posted by at 2011年03月16日 18:24
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