2006年06月08日

長尾数馬(2005.2)『あなたの資産 ここを変えればもっとふやせる!』実業之日本社

 乙が読んだ本です。タイトルに引かれて買ってしまいました。
 プロローグでは、これからの日本経済に対して悲観的に考えるか、楽観的に考えるか、両者の中間で現実的に考えるかで資産運用がこのように変わるという話が出てきます。もちろん、長尾氏が一番有力と考えるのは「現実的」シナリオですが、その場合、モデルポートフォリオは以下の通りです(p.29):預貯金 5%、MMF/MRF 10%、公社債 20%、株式投資信託 10%、個別株式 20%、外貨MMF/外貨預金/外国国債 35%。
 う〜ん、他の本で推奨しているポートフォリオとはずいぶん違います。
 株式投資信託は、さらに細分されて、TOPIX連動日本株70、MSCI連動外国株20、リート10になります。
 外貨MMF/外貨預金/外国国債 は、通貨別に細分されて、ユーロ30、米ドル35、豪ドル15、カナダ10、英ポンド5、中国元<香港ドル>5 になります。
 ここまで細分できるということは、全体の金額がかなり大きいことを想定しているようです。単純に考えて、長尾氏の推奨ポートフォリオによれば、リートはポートフォリオ全体の1%ということになりますが、リートは最低投資金額が50万円くらいですから、全体の資産が5000万円くらいの人を念頭においていることになります。これなら、外貨MMF/外貨預金/外国国債の英ポンドや中国元<香港ドル>が 87.5 万円相当ということで、納得できます。
 第1章は、「日本と世界の経済・金融事情」ということで、日本の現状を正確に把握することが第一歩だとして、少子化現象とともに、日本の株、日本の債券、外国為替などの現状を述べ、ユーロがこれからの世界の基軸通貨になるかもしれないと述べています。また、投資する国の将来性は資源・食糧自給率でわかるとしています。ここは、乙は、ちょっと違うのではないかと思いました。安心度を測るにはこういう指標でいいでしょうが、経済はそれだけではないと思います。日本の食糧自給率が低いのはその通りですが、「日本には食料が回ってこなくなる」(p.48)はホントでしょうか。今だって、日本は世界中から金の力で食料を買いあさって輸入しているわけで、むしろ食料輸出国が飢餓に苦しむようなことすら起こっています。ということは、これからも同じで、経済が発展していれば、(倫理上の問題は残るにしても)世界中から食料の輸入ができるのではないでしょうか。
 pp.51-52 では、個人投資家が中国へ直接投資するのはリスクが高すぎると述べられています。それよりは「中国ビジネスにうまく参入している日本、欧米の多国籍企業へ間接的に投資をすればよい」というわけです。乙は、こう思いません。中国投資がずっと大丈夫だとはいいませんが、今までの流れを見ていると、(あと数年は)状況が大きく変わることは少なく、個人投資家が中国に投資してもいいと思います。
 第2章は、「資産運用の今までの常識はここが間違い」と題して、12個のポイントが示されます。乙から見ると、ここで述べられている「今までの常識」は、あまり常識でもなさそうに思えます。
 ポイントの一つですが、p.72 では「長期分散投資でなぜ損をするのか」と題して、過去15年の日本株の動きを基に、平均株価に分散投資する投資信託の考え方を否定しています。しかし、ここは長尾氏が誤解しています。日本株だけに集中していては「分散投資」になりません。日本株だけでなく外国株も見るべきです。債券や不動産も考慮するべきです。分散投資はそういうものでなければなりません。また、過去の特定の期間を取り上げて、「ほうら見よ。だからうまくいかないのだ」と後からいうことは誰でもできます。我々は、今後どうなるかわからない「現在」に生きているのですから、そういう中で最適な判断をしなければなりません。それを考慮したら、長尾氏の論は成り立たないと思います。
 第4章では、「人気の金融商品を徹底分析する」と題して、個別の商品に対する考え方を述べています。長尾氏は p.98「長期投資は単独株式投資が基本」と考えており、国際優良銘柄の株を長期保有することを主眼に置いていて、投資信託を否定しています。p.124 で述べるように投資信託の手数料が高すぎるからということです。ここも乙と考え方が違うところで、乙は両者ともそれぞれ長所・短所があると思っています。乙は、そのあたりを具体的に見極めたいと考えて、とりあえずは、現物株も投資信託も購入してみました。実地に考え、実行し、反省することで、もっと学ぶことができます。乙には、最終的にどういう態度が望ましいかはまだわかりませんが、長尾氏の考え方は、やや単純すぎるように思います。
 p.114 では、個人変動国債を勧めています。しかし、乙はまったく購入していません。それは、長尾氏がいうように「日本が破綻するから国債を買うべきではない」という理由ではなく、単に、国債の利回りが低すぎるからです。長尾氏の議論は、だいぶずれているように思います。
 この本の内容は、一人の金融コンサルタントの意見として読めば、おもしろい本だと思いますが、乙は内容を全面的に信じる気にはなれません。
 あ、乙はこの本を古本屋で半額で買いました。


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posted by 乙 at 05:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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