2006年06月16日

橘玲(2006.4)『臆病者のための株入門』(文春新書)文藝春秋

 乙が読んだ本です。
 今まで乙が読んだ投資関連本の中で一番お薦めできる本です。750円の新書でここまで書いてあるとは、恐れ入ります。特に株関連の話題が多く、普段から疑問に思っていることが明快に論じられています。とても読み応えがありました。
 乙がいろいろ金融商品を買う前にこういう本にめぐりあっていたら、相当に違った行動をしていたことでしょう。いや、やはり、自分で迷い、間違わなければ、橘氏の書いていることはなかなか信じられなかったかもしれません。
 第1章は「株で100万円が100億円になるのはなぜか?」を説明した章です。p.18 では20代無職の男性が「金融のプロ」を天文学的なレベルで上回る成績を上げたということは、株が(スポーツや将棋の)プロの競技でなく、ギャンブル(つまり偶然のゲーム)であることを証明していると述べています。株の本質がこれでわかります。すごい説明です。そして、pp.24-30 では、実際に複利とレバレッジを効かせればお金を1万倍に増やすことは現実的に可能だということを示しています。この説明にも乙は納得しました。p.36 では、ジェイコム株で20億円を儲けた男が27歳無職であったことは当然だと述べています。失うものがないからこそ、大きなリスクがとれるというわけです。金融のプロではできないことだし、自分の仕事を持っている一般の投資家にもできないことだと言われ、「う〜ん、確かに」と納得してしまいました。
 第2章は「ホリエモンに学ぶ株式投資」で、ホリエモン事件を詳しくかつわかりやすく述べています。乙は、ホリエモンのやったことをここまで簡単に説明してしまった橘氏の力量に感服します。
 第3章は「デイトレードはライフスタイル」という章です。p.74 では、なぜデイトレードが儲かるように見えるか、それはテレビや雑誌やネットには「成功したトレーダー」しか登場しないからで、その裏には損をして退場していった多数の人々がいるということを述べています。橘氏は、まさに、見えないところを見ていますね。p.77 では、なぜ株価のチャートの読み方を知ると儲かるような気がしてくるかを説明しています。「講師は都合のいいチャートを探してきて、それにもっともらしい説明を加えているだけだ」ということです。これにも乙は納得します。今までにも、乙自身がそういう本を何冊か読みましたから、理解できます。p.85 では、なぜニートの若者や退職したサラリーマンがデイトレードにはまるのかを説明しています。普通に働けないからだというわけです。1000万円を運用して、毎年2割の利益を上げても、たった200万円にしかならないということで、この説明にも納得します。
 第4章は「株式投資はどういうゲームか」という章で、p.96 には「株式市場とは、損を広く分散させるためのシステムだ」ということが述べられています。これまたすごい卓見です。この一言で株の本質を表してしまいます。
 第5章は「株で富を創造する方法」です。pp.114-127 の前半では、バフェット流のファンダメンタル分析に基づく長期投資がいかに有利かを述べています。pp.128-139 の後半では、株式評論家が薦める株がなぜあたらないか、そうでありながら、なぜそういう人がいるのか(実は投資家に安心を売るためだ)を説明しています。乙は、今までこんなに明快に株式評論家を位置づけた論説を読んだことがありません。
 p.138 では、「日本が××年に破綻する」などの予言をする人について、なぜそういう言説が広まるかを説明しています。予言が当たればそれでよかったということになるし、あたらなければ悪いことが起こらなかったのだから問題になることはないということです。乙は、こういうことがないようにしたいと思います。たとえば、株式評論家の言ったことを1〜数年後に検証するなどということは、誰かがやらなければならないことです。一部、乙もやりましたし、これからも愚直にやりたいと思っていますが、橘氏に「そんなことはやってもムダだよ」と先回りして言われてしまったような気がしています。
 第6章は「経済学的にもっとも正しい投資法」です。投資家は一番最初に読むべきところでしょう。結論は「インデックスファンドを買え」なのですが、橘氏はなぜそれが一番いい選択なのかをきちんと述べています。ここまできちんと説明されては、もうこの主張に従わざるを得ないという気分になります。
 第7章は、「金融リテラシーが不自由なひとたち」です。pp.170-171 では、平成電電への投資がなぜダメなのかを見事に説明しています。この説明は納得できます。ということは、今の日本で数%以上の確定利回りをうたう投資話はほぼ全部ダメになってしまいそうです。それはそれで一理あります。乙も資金の一部をそういうところで運用していますが、心配になってきました。
 pp.182-185 では、ヘッジファンドがなぜ危ないかを説明しています。乙は、ヘッジファンドが危ない理由を初めて知りました。なるほど「池の中のクジラ」だったんですね。ま、自己資金の全額をヘッジファンドに預けているわけでもないので、乙としては、もう少しようすを見ようと思いますが。
 第8章は「ど素人のための投資法」で、ここも投資家必読の箇所です。p.196 には「最大の資産は自分自身である」ということで、給料をもらっていることを○○円の資産があるものとみなして生活全般を見直そうとしています。pp.200-206 は、国際分散投資の話ですが、ここでも結論は簡単です。MSCIインデックスに投資すればいいということです。pp.201-202 では、中国やインドに投資するのではよくないという理由を述べています。新興諸国に資金が集中すると、すぐに多く集まりすぎる事態になり、バブルがはじけるような状態になるというわけです。これはこれで納得できます。乙は、BRICs 諸国への投資もしていますが、適当な時期に逃げ出すことを考慮しなければなりません。これが難問です。今は、どうしたらいいか、回答が見つからない感じです。
 pp.208-210 では、金融資産の85%を外貨で運用するのがもっとも正しい態度だという話が出て来ます。この論理には納得します。特に今は日本が破綻しそうだとか考えるまでもなく、もともと外貨での投資を考えておかなければならなかったんですね。こういう視点は乙にはありませんでしたし、円と外貨の妥当な投資比率を考えたこともありませんでした。こういう話は目からウロコでした。
 pp.211-214 では「トーシロ投資」と称して、トレーディング(デイトレードを含む)、個別株長期投資(バフェット流)、インデックス投資の3種を取り上げて、それぞれの長所・短所を述べています。乙のようなサラリーマンは、インデックス投資がベストな選択であるように思えます。
 pp.217-218 には小さなミスがあります。1802年からの2世紀を「2世代」と呼んでいます。1世代は、普通30年と考えるべきところでしょう。
 pp.218-220 では、プライベートバンクよりも、インデックス投資のほうが優れていることを示しています。こうなると、プライベートバンクの存在意義が問われることになります。
 ともあれ、乙が読んだ投資関連の本の中で、この本が一番の良書であることは間違いありません。出版社の在庫が一時的になくなったりするほどの売れ行きのようですが、それはわかります。みんながこういう知識を持っていれば、お互い、もう少し幸せになれるように思います。
 すべての投資家が一読するべきだと思います。


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posted by 乙 at 05:14| Comment(0) | TrackBack(1) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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