外貨による資産運用のことになると、為替リスクがよく問題になります。ここでは、それに対する乙の考え方を示します。
今、1ドル120円前後ですね。しかし、しばらくすると、円とドルの為替レートが動いてしまいます。今から15年後、為替レートはどれくらいになっているでしょうか。
1985年のプラザ合意のころ、1ドルは 235 円でした。それが1年後には1ドル 120 円くらいまで円高が進みました。では、15年後には、もっと大幅に動いてしまうのでしょうか。乙はそうでもないと思います。アメリカで生活してみると(あるいは旅行でもいいですが)、お店で買い物をしたりするときの生活実感(物価水準)として1ドル 100 円くらいではないでしょうか。プラザ合意後の円高は、本来あるべき水準になっただけのように思います。つまり、それ以前が円安にすぎたのです。ざっと考えて、為替レートは20年で2倍くらい動くものだということになります。
ところで、過去最高の円高は1995年4月19日につけた79円75銭です。そのあとの円安は1998年8月11日の147円64銭です。この両者は過去約10年間の高値と安値でもあり、高値と安値の間で2倍程度の変動はあり得るということです。
では、15年後の為替レートを具体的にどれくらいの幅で推定すればいいでしょうか。乙はざっと2倍だろうと予想します。円安に振れれば1ドル 240 円くらいだろうし、円高に振れれば1ドル 60 円くらいだろうと思います。3倍だと、それぞれ 360 円、40 円になりますが、日米での生活実感から考えて、これはかなり不合理なレートのように感じます。
ついでですが、為替レートには、マイナスの値ということはあり得ませんから、為替レートの変動は足し算・引き算(プラスマイナス60円など)で考えるべきではなく、かけ算(何倍とか、何分の一とか)で考えるべきです。特に大幅な変動を考える場合はかけ算にしないといけません。
さて、1万ドルを運用しようと思うと、まずは120万円を用意して、それをドルに両替します。その後、円安になって1ドル 240 円になると、1万ドルは 240 万円になりますから、日本で生活するものにとってはめでたしめでたしで、この点では特に問題にはなりません。円高になって1ドル 60 円になると、1万ドルは60万円にしかなりませんので、非常に大きな損失になると考えられます。
しかし、1万ドルがそのままであるわけではなく、それを運用しています。乙は、15年にわたって7%で運用することを目指しています。すると、単純計算によれば、元本は15年後に 1.07**15=2.76 倍になってしまうのです。1万ドルは 27,600 ドルになっています。ですから、円高でレートが1ドル 60 円になっているとしても、27,600×60=1,656,000 円に相当し、120万円の元本から考えれば38%増なんです。つまり、15年で2倍くらいの円高は、そんなに困るものではないということになります。
今後、円高になると、円で給料をもらっている人としては、もらう給料の価値が上がるわけで(世界中から安い値段で物資が買えますから)、ある意味で嬉しい話です。乙の場合でも、今、ドルで運用している金額よりも、これから(円で)もらう給料のほうがはるかに多いわけですから、その意味からも円高は悪いことではありません。
というわけで、外貨での運用は、(特に長期的視野から見れば)為替レートの上下を心配してもしかたがないように思います。つまり、外貨での運用は、為替レートの変動が大きいという意味では確かにハイリスクですが、15年後を見据えてみれば、そんなに大きな問題ではないということです。
もちろん、世界戦争とか、アメリカの財政破綻とか、関東大震災や原発の大事故とかの大きな事件があって、為替レートが通常と大きく異なるようなことになれば、ここでの話はあてはまりませんが、そんなことを考えてもしかたがないですからねえ。まあ今の世の中が15年後もそのまま続いていると考えておくのが常識的な見方でしょう。