副島隆彦(2003.9)『預金封鎖---「統制経済」へ向かう日本』祥伝社
http://otsu.seesaa.net/article/13255799.html
副島隆彦(2003.12)『預金封鎖 実線対策編---資産を守り抜く技術』祥伝社
http://otsu.seesaa.net/article/13302983.html
に続く副島氏の著書です。
内容は、題名の通りです。題名のように1行でまとめてしまえば、内容は読む必要なしという見方もできますが、国がどのように税金を課そうとしているかを具体的に知るには、やはり一読する必要があります。
p.42 では、1988年の消費税導入は「日本国民に対する税金教育のための新税だった」という見方が出てきます。なるほどと思わせる視点です。こうして、新しい税金に慣れさせ、これからの大増税を抵抗感なく実施しようという壮大な計画だったというわけです。まあ、当時、政府が本当にそう思っていたかどうかは疑問ですが、結果的に、そのような効果があったということはいえるでしょう。
p.110 では、副島氏のお得意の「預金封鎖」の話が出てきますが、その時期は、「2〜3年先」となっています。刊行の時期からすると、2006-2007年というわけです。今が 2006 年ですから、さあ、もうすぐ預金封鎖ですよ。(ホントにそうなるのでしょうか。乙はそうならないと思います。)
p.197 からの第5章では、「2005年春、世界経済の変動が始まる」と題して、大胆な予測が出てきます。日米の国債の暴落とドルの大暴落を予測し、p.234 では、1ドル40円という超々円高が 2007-2008 年に現れるかもしれないと述べています。しかし、この根拠は、1990年4月の160円35銭と1995年4月の79円75銭の値幅である80円60銭分だけ円高方向に進むと考えて、2003年9月17日の117円20銭から引き算して36円60銭ということです。乙は、為替レートについて(特に、大幅な変動を論じるときに)加減算をすることは間違いだと思います。乗除算をするべきです。ここは、レートが半分になることがあるから、117.2/2=58.6円になるだろうと書かなければなりません。その根拠は以前
http://otsu.seesaa.net/article/19489254.html
に書きました。
p.254 では、本吉正雄『元日銀マンが教える預金封鎖』
http://otsu.seesaa.net/article/16392565.html
や藤井厳喜『新円切替』
http://otsu.seesaa.net/article/14475013.html
が自分の書いた本の真似本だと断定して、「もう二度とこういうことをするな」と断じています。
これらは、真似本といえば真似本かもしれませんが、しかし、似たような主張をしても、そのこと自体は問題ではありません。そんなのは世の中にごまんとあります。
しかも、副島氏以前にも預金封鎖に関する本はたくさん書かれています。国会図書館で「預金封鎖」を指定して図書を検索した結果から、2003年3月(副島氏が『預金封鎖』を執筆した時期)以前に刊行されたものをあげれば、以下の通りです。
預金封鎖 / 太田晴雄. -- オーエス出版, 1998.1
あなたの預金が消えていく! / 宮尾攻. -- 小学館, 2001.12. -- (小学館文庫)
「銀行預金」封鎖 / 太田晴雄. -- オーエス出版, 2002.2
預金封鎖であなたの資産が消滅する / 堀篤. -- ガイア出版, 2002.4
預金封鎖 / 荒和雄. -- 講談社, 2003.3
乙は、これらを読んで中身を確認したわけではありませんが、たぶん、副島氏と似た話を書いていると思います。
これらの本が先にあったという事実から、副島氏が真似本を書いていると批判される可能性もあるのではないでしょうか。(乙はそう主張するつもりはありませんが。)乙の考えでは、副島氏の主張は強すぎると思います。まさに「天に唾する」ようなものです。
この本全体として、日本がアメリカの属国になっていることを述べ、そういう体制のもとで、政治家たちのありさまや考え方を中心に税金問題をとらえるという観点で書かれています。ちょっと偏った見方でもありますが、これで一貫した説明をされると、そういうものかなとも思えてきます。
なお、乙は、この本の対象読者をどういうものとして想定しているかが気になりました。どうも、単なる老人ではなく、金融資産が数億円以上あるお金持ちで、特に企業の経営者を念頭において書かれているようです。pp.134-138 あたりの記述でそう思いました。
2006.7.4 追記
http://otsu.seesaa.net/article/20241104.html に続きを書きました。
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