http://otsu.seesaa.net/article/13948002.html
が、その時点では、十分書けなかったことがあります。
この本で木戸氏は推薦株6銘柄を挙げているのですが、それが実際どうなったかを検証するには、ブログに書いた時点では時間が短すぎたのです。現在は、この本の刊行後1年経ったので、その検証ができる状態になりました。
株式評論家を名乗る(本の表紙にそう書いてあります)木戸次郎氏の株価予測は、どれくらい信頼できるものでしょうか。
p.25 では、「私は、2005年、日経平均2万円ということにずっとこだわりを持ってきて唱えてきた」と書いてあります。以前から木戸氏はこう唱えていたのですね。結果は、2006年の今から見れば明らかです。木戸氏の予想は外れました。これについては、木戸氏は p.37 でお詫びしていますが、ここでも2006年には日経平均が2万円になるという予想を(改めて)しています。これについては、2006年末まで待ってみなければ何ともいえませんが、乙の予想では2万円にはならないでしょう。(実は、なってくれれば、ありがたいのですが。)
さて、この本の p.64 から推奨株が6銘柄出てきます。帯にも「倍増必至! 目から“ウロコ”の6銘柄」という宣伝文句がでかでかと書いてあります。これに引かれて本書を買った人もいたことでしょう。
本書執筆時の2005年5月(この時期については、p.73 に書かれています)を基準として、それぞれの銘柄の株価がどうなったかを検証してみましょう。(ネットで適当な株価のグラフを見ながら以下をお読みください。)
推薦株@ 9435 光通信
2005.5当時の株価=6,600 円
木戸氏の予想:「1年後には1万円を軽く超している」(p.68)
実際:2005.12.21 に最高値 11,900 円を付けるが、その後大幅に下落し、2006.7現在 約 6000 円。
推薦株A 6784 プラネックスコミュニケーションズ
2005.5当時の株価=16万円
木戸氏の予想:「私が絶対的な自信を持って注目している銘柄」(p.69)「2006年以降は新興市場の銘柄というのは間違いなく二極化が進み【中略】プラネックスコミュニケーションズこそ私の考える勝ち組候補株なのである。」(p.72)
実際:2005.7.23 に最高値 233,000 円、2005.11.25 に 232,000 円を付けるが、その後大幅に下落し、2006.6.2 に最安値 26,500 円を記録し、2006.7現在4万円程度。
推薦株B 4813 ACCESS
2005.5当時の株価=200万円(その後、2006年2月に 1→3 に株式分割)
木戸氏の予想:「株価目標は1年以内に300万円を超すと自信を持ってお伝えしておこう。」(p.76)
実際:2006.4.13 に最高値 118 万円を記録(株式分割後なので、以前の354万円に相当)、その後、下がり、2006.7現在は83万円前後。
推薦株C 8088 岩谷産業
2005.5当時の株価=290 円
木戸氏の予想:「1年後には500円を目指すこととなるであろう」(p.83)
実際:2006.1.11 に最高値 502 円を記録するが、その後下がり、2006.7現在は 380 円程度。
推薦株D 6466 トウアバルブグループ
2005.5当時の株価=(激しく上下していた時期だが)約30万円
木戸氏の予想:「目標はずばり60万円としておこう。」(p.85)
実際:2006.1.10 に最高値 35 万円を記録、その後下がり続け、2006.6.8 には185,000 まで下がる。その後上昇し、2006.7現在 25 万円。
推薦株E 1723 日本電技
2005.5当時の株価=720 円
木戸氏の予想:「今後の目標は1年間の長期投資でズバリ1500円を目指すと見ている。」(p.86)
実際:2005.10.24 に最高値 1155 円を記録、その後下がり続け、2006.7現在 830 円。
さて、どうでしょうか。木戸氏の予想がかろうじてあたったといえるのはBの ACCESS だけです。
@の光通信とCの岩谷産業は、最高値を見ればあたっているように見えますが、実際上、株を最高値で売り抜けるのは至難の業ですし、木戸氏が「1年後には〜」といっている以上、最高値を記録した時点で売るよりは、さらに上昇すると予想して保有し続けるのが普通だろうと思います。結果的に株価の下落に見舞われたはずです。仮に「最高値から1割下がったところで売る」というような戦略を採用していれば、何とか成績を残すことができたかもしれません。
ところで、2005年5月を基準に考えると、その後、(結果論ではありますが)年末にかけて日本の株価は全体的に上昇しました。そのことを考慮すると、木戸氏の予想は(出版後1年程度で上がる株を予想しているわけですが)あたって当たり前ではないでしょうか。こんなにもはずしてしまったにも関わらず、株式評論家を名乗っていていいのでしょうか。乙だったら、恥ずかしくて、世間に顔向けできず、とうてい「株式評論家」とは名乗れない気分です。
上に記したように、各銘柄が最高値を記録した時期は、だいたい平均株価が急上昇した時期です。つまり木戸氏の予想が、一見あたっているように見えるところでも、単に連れ高しているだけと見ることができます。本書では、この6銘柄がなぜ推薦できるのか、延々と理由を述べていますが、結果的にそれらの記述はほとんど無関係だったと言えます。
すでに、橘玲氏が喝破したように
http://otsu.seesaa.net/article/19337369.html
株式評論家のいうことはまったくあてにできないということですが、乙が検証してみても、それを裏付ける結果になりました。
木戸氏は、本書の p.25 で「もし、あなたが本書に巡りあうのが1年遅かったら必ず後悔するということを断言しておきたい。」と述べています。乙は、出版後約1年たってから再度読み返しましたが、後悔どころか、1年遅くてたいへんすばらしい経験をしたといえるでしょう。木戸氏の言説の信頼性が低いことがとてもよくわかったからです。
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