角山氏の前著がおもしろかったので、期待して買ってみました。
本書の内容を一言でいうと、角山氏の10年の経験に基づき、割安成長株に投資するのがいいということです。
株価が何倍にもなる銘柄を事前に買えたら、それはすごい話です。角山氏はそれを実践してきています。まえがき(p.3)には、2003年から 46.8%、37.0%、45.2% のパフォーマンスだと書いてあります。ちょうど、日本の株価が上昇した時期になります(平均株価の上昇の影響が角山氏のパフォーマンスの半分を占めます)が、それにしても、なかなかの成績です。
ただし、気をつけなければならないのは、何倍にもなる銘柄を組み込んだとしても、1年間のトータルなパフォーマンスを見れば、この程度の成績にしかならないということです。経験者ならば、1年で何割もの成果を記録するのがいかにむずかしいかはおわかりでしょう。表紙の帯には、「勝率9割」とうたっています。株価が何倍にもなる銘柄を9割の確率で見つけたとして、年間パフォーマンスは5割に到らないというわけです。何か、マジックでも見ているように思えるかもしれませんが、そうではありません。株価が何倍にもなるには何年間もかかるから、計算すれば年間あたり上昇率は5割以下になるということです。
p.5 には、バリュー投資には2種類あって、それぞれ「資産バリュー株」投資と「割安成長株」投資と呼ぶことが書かれています。前者は、角山氏の前著
http://otsu.seesaa.net/article/21794517.html
に示されたやり方で、初心者向きだそうです。道理で乙にも理解できました。
p.24 からバリュー投資の説明が出てきます。一言でいえば、ベンジャミン・グレアムとウォーレン・バフェットが編み出した投資方法のことなんですね。いわば、角山氏は日本のバフェットを目指すというわけです。
p.33 には、資産バリュー株=低PBR株の投資結果が出て来ます。すばらしい結果です。乙はこういうのが好きです。p.34 にあるように、資産バリュー株に投資すれば、最大 50% 程度のリターンになるわけですから、これで充分です。
しかし、角山氏は、本流は割安成長株にあるとして、以下、本書の大部分を割いてその投資術を述べています。乙の感想として、「サラリーマンでもここまでできるんだ。すごいなあ」と思いました。徹底した企業分析です。ピーター・リンチのやり方
http://otsu.seesaa.net/article/21354780.html
に似ています。こういう努力には頭が下がります。
角山氏は、p.109 で、指標によるスクリーニングは使わないと述べています。そして、p.110 で定量分析の結果より、定性判断の結果を尊重するとしています。こういうやり方は、時間と手間がかかるやり方です。
乙も、将来的にこのようなやり方になるのでしょうか。たぶん、違うような気がしています。こんなにも手間をかけていられないというのが理由です。p.191 には、角山氏の資産残高が掲載されていますが、1993年の 600 万円が 2005 年には 5600 万円ほどになっています。この間、当初資金の 600 万円だけで 5600 万円まで増えたのか、途中で資金の追加があったのかはわかりませんが、このような金額を運用していたら、それなりの手間をかけてもいいのかもしれません。しかし、乙は、株式投資は恐いもの(ハイリスクなもの)と思っていますので、自分で個別銘柄を買うのはほんの少しだけに限定しています。角山氏とは、まさに桁違いです。ですから、乙の資産はあまり伸びていかないのですが、逆に、もしも大暴落があってもあきらめがつく程度です。こういうスタンスの人間には、角山氏のような徹底分析はとうていできないと思います。乙としては、当面は「安易な投資」を心がけたいと思います。
もっとも、この話は、今の乙の考え方であり、株取引を今後10年も経験すれば、考え方が変わっている可能性はあります。
本書によって、サラリーマン個人投資家による本格的な株式投資のあり方を学ぶことができました。
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