http://otsu.seesaa.net/article/12540315.html
しかし、山崎元(2006.4)『「投資バカ」につける薬』講談社
http://otsu.seesaa.net/article/22402936.html
を読むと、p.162 からこのファンドが批判されています。本当は損だというわけです。
山崎氏の挙げる「損」の理由は、次の3点です。
1. 毎月分配型は毎月課税されるから損である。
2. 手数料、特に継続的にかかる信託報酬が高い。
3. 為替リスクや金利と債券価格について顧客が理解していないが、それらを考えるとハイリスクだ。
1. については、乙も頭では理解していましたが、それがどれくらいの影響なのか、今ひとつ実感がありませんでした。
グロソブの運用会社の国際投信投資顧問のホームページから、グロソブの毎月決算型・3ヶ月決算型・1年決算型の基準価額のグラフを見ることができます。
http://www.kokusai-am.co.jp/cgi/cgi-bin/fl_frame.cgi
比べてみると、毎月決算型・3ヶ月決算型の基準価額はこの3年あまりほとんど変化していませんが、1年決算型は、大幅な上昇を見せています。なるほど、こんなにも違ってくるんですね。実感しました。
2. についても乙は理解していました。いろいろな投資信託を調べて比較検討してみた後では、債券で 1.3125% というのは高いと思います。しかし、類似の商品を調べると、みんな手数料が高いんです。お互いを比べ合って「高値安定」なんですかね。本来、先進各国の債券の利回りは3〜5%くらいだろうと思います。それで運用しながら 1.3125% を手数料として取るということは、投資家から見れば、得られた利益の3割から4割くらいファンドに持って行かれるということです。高いです。
3. は、若干の説明が必要です。山崎氏によれば、グローバルな為替・金利市場では、外国の債券で運用しても、円での債券運用と期待リターンはそう変わらないはずだということです。(金利が低いから)低いリターンなのに、それに比べると手数料が相対的に高いということになります。
さて、グロソブに対するこれらの批判は、乙が購入を決めた2004年10月にも聞こえていました。しかし、実際に買って経験してみなければ、金融商品を理解することはできないという面もあるように思って、乙は買ってみました。
乙が前回ブログで書いた2006年1月末段階
http://otsu.seesaa.net/article/12540315.html
では、(2004年10月の購入時と比べて)1.077 倍の上昇率でしたが、7月末段階では 1.085 倍になっています。最近半年はあまり成績が良くなく、1%程度しか上がっていません。なぜでしょうか。
グロソブの運用報告書を見ると、運用のようすがわかります。
http://www.kokusai-am.co.jp/fund/pdf/unyou/148013.pdf
これは、第96期(2005.12.19決算)から第101期(2006.5.17決算)までの分です。この半年で基準価額は253円下がっているのですが、その要因は、債券要因が55円、為替要因が149円、信託報酬52円です。(解約要因は3円のプラスです。これは、信託財産留保額、つまり解約時に払う手数料のことですから必ずプラスになります。)
債券要因は、世界の金利がやや上昇して、債券価格が下落したということですし、為替要因は、円高になって円での評価額が下がったということです。まさに、山崎氏が述べている 3. の要因が効いていることになります。
特に大きいのは、アメリカの為替要因(194円のマイナス)ですから、ドルに対する円高が効いていることになります。
今から思えば、乙が2004年10月に購入してから「グローバル・ソブリン・オープンはおトクです」と述べた時期(2006年1月)までは、基本的に円安傾向にあったので、円表示の海外債券ファンドとしては成績がいいように見えただけだったということになりましょうか。
実のところ、年4%くらいの利回りでは、乙は満足できないのです。目標は年7%です。新生銀行で同時期に購入したファンド類を並べてみると、グロソブの成績は他のファンドよりも相当に低いのです。
乙がグロソブを買った新生銀行では、申込手数料 1.575%、信託財産留保額 0.5% ですから、合わせると約2%となりますので、乙の基準(申込手数料1%あたり1年以上継続することとする)では2年以上の運用期間になります。2004年10月から2年というと、2006年10月ですから、その点からもそろそろ解約を考えてもいいでしょう。
今後のグロソブの見通しは、よくわかりませんが、経済のシロートである乙の勝手な予測では、欧米においてやや金利が上昇し、債券価格が下落するのではないか、また、欧米と日本の金利差があるので、為替はやや円高になっていくのではないかと思います。両方ともグロソブのパフォーマンスにはマイナスの影響を及ぼします。
これらのことを考えて、乙は(ちょっと早いのですが)先日、グロソブを解約しました。
精算金額を投資金額と比べると、1.0828 倍になっていました。すべての手数料と税金を引かれたあとの正味(乙の銀行口座に戻された金額)でも、2年間で 8%(年平均で 4%)の利回りがあったということで、乙としては、やや不満ながらもこんなものかと思っています。
グロソブのウィークリーレポートを見ると、
http://www.kokusai-am.co.jp/fund/pdf/weekly/148013.pdf
2006年8月10日現在のファンドの騰落率(課税前分配金を再投資した場合)は、6ヶ月で 0.5%、1年で 5.6%、3年で 13.5% となっていますから、乙の2年間の経験(税引き後8%)はこんなものでしょう。
グロソブの評価は、いいという人と悪いという人で二分されると思います。
一つは、結果的に、預貯金の利率を大きく上回る運用結果だったのだから、グロソブはおトクだったという見方です。ウィークリーレポートその他で分配金込みの基準価額の推移を見ると、2000年くらいからずっと安定的に上昇しています。債券で運用するのですから、為替変動がない限り、安定的な運用ができて当たり前ですが、それにしても、4%-5% の利回りというのは預貯金と比べれば圧倒的に有利な利回りだということができます。以前は(1月段階では)乙は単純にそう思っていました。グロソブが5兆円を超える超大型ファンドになっているのは、たぶん、こう考える人が多いからでしょう。
もう一つは、グロソブの持ついくつかの特徴を考慮すると、金融商品としてはあまり魅力的なものではないという意見です。今の乙はどちらかというと、こちらの意見です。
ちなみに、日経新聞8月15日朝刊の記事で、「マネー商品のなぞ」欄(金融欄)に「グロソブの信託報酬の一部が販売した金融機関に流れるが、販売残高が多くなるとその金融機関への配分率が上がる」という記事が出ていました。グロソブのこういう仕組みは気が付きませんでしたが、こうして、金融機関への手数料を増やして販売を奨励する方針を見ると、国際投信投資顧問の目が顧客に向いておらず、販売する金融機関に向いていることがわかります。
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乙の(現在の)感覚では、おすすめできる投資信託はないように思います。
近日中に書きますが、今は各種投資信託を次々解約しつつあります。それはそれなりの理由があってのことです。
そうですか投資信託自体に何か思われるところがあるようですね。最近結構ファンドを解約されているのでどうされたのかな?と思っていました。年7%の運用・・・解約されてその後どうされるのか又ブログで拝見させていただきたいと思います。
それではお体ご自愛くださいませ。