海外移住に関する総合的入門書といえるでしょう。海外移住といっても、さまざまなタイプがあるわけで、特に、若い人で海外で働くことを念頭においている場合と、年配でリタイアしてから海外で暮らそうとしている場合では、相当に違ったものになります。
本書は、そのようなさまざまな目的に使えるように、網羅的な記述をしています。この記述ができたというだけでも、著者の博識(あるいは情報収集能力)はすごいものだと思います。
乙の場合は、第5章「リタイアメント」が一番おもしろかったのですが、いろいろな国にリタイアメント制度があり、年金がもらえれば、それぞれの国で十分暮らしていけそうです。海外旅行の延長上に、こんな暮らしもおもしろいと思いました。どこかの国に決めたら、そこの言葉を覚えるようにするといいと思います。1年や2年はあっという間に経ってしまいますし、それでも言葉を覚えるという意味ではまだ初心者でしょう。やることがあるというのは何よりもうれしい話です。
もしかすると、乙の場合は、投資永住権を取得する手(第4章)もあるかもしれません。しかし、今の仕事で定年を迎えるまでは、ずっとこのまま継続したいと考えていますし、その後も、投資はするとしても、ある1ヵ国(の会社や不動産)に集中投資するのは危険なように思います。ということは、投資永住権とは無縁なものになるというわけです。
この本でいろいろな国を比較してみると、やっぱりアジアが親近感が持てそうな気がします。
もしも、さらに具体的に知りたいということになれば、関連の本を読んだり、ウェブで調べたりできるわけです。まずは、何か最初の1冊となれば、本書は大変有意義でしょう。とりあえず必要なことが何でも書いてあるというスタイルです。
定年を迎えるころになって、海外移住を具体的に考えるようになったら、また本書を紐解きたいものです。
とはいえ、そのころにはさらにいい本が刊行されている可能性が高いと思いますが。
著者の安田氏は「海外移住情報」
http://www.interq.or.jp/tokyo/ystation
というサイトも運営しています。こちらは、本書よりもさらに詳しくて、しかも無料で読めます。
【関連する記事】
- 香川健介(2017.3)『10万円からできる! お金の守り方教えます』二見書房
- 大江英樹、井戸美枝(2017.2)『定年男子 定年女子』日経BP社
- 天達泰章(2013.6)『日本財政が破綻するとき』日本経済新聞出版社
- 安間伸(2015.11)『ホントは教えたくない資産運用のカラクリ 投資と税金編 ..
- 橘玲(2014.9)『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 2015』幻冬舎
- 橘玲(2014.5)『臆病者のための億万長者入門』(文春新書)文藝春秋
- ピーター・D・シフ、アンドリュー・J・シフ(2011.6)『なぜ政府は信頼できな..
- 小幡績(2013.5)『ハイブリッド・バブル』ダイヤモンド社
- 吉本佳生(2013.4)『日本の景気は賃金が決める』(講談社現代新書)講談社
- 川島博之(2012.11)『データで読み解く中国経済』東洋経済新報社
- 吉本佳生(2011.10)『日本経済の奇妙な常識』(講談社現代新書)講談社
- 野口悠紀雄(2013.1)『金融緩和で日本は破綻する』ダイヤモンド社
- 吉田繁治(2012.10)『マネーの正体』ビジネス社
- 午堂登紀雄(2012.4)『日本脱出』あさ出版
- ウォルター・ブロック(2011.2)『不道徳な経済学』講談社+α文庫
- 内藤忍(2011.4)『こんな時代を生き抜くためのウラ「お金学」講義』大和書房
- 瀬川正仁(2008.8)『老いて男はアジアをめざす』バジリコ
- 増田悦佐(2012.1)『日本と世界を直撃するマネー大動乱』マガジンハウス
- 藤沢数希(2011.10)『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門..
- きたみりゅうじ(2005.10)『フリーランスを代表して申告と節税について教わっ..