海外を含む投資一般の話の後に、香港のブローカー(に勤務する日本人)から Friends Provident 社(以下、FP 社と略称)の紹介がありました。日本の会社は、こういう「営業」をしてはいけないとのことで、だから香港の会社の人が話すんですね。
今回紹介されたのは、毎月定額の積立タイプでした。決まった名前があるわけではないようで、「ファンド管理口座を利用した自己年金」と紹介されていました。満期は25年ないし75歳までということです。
一括払い方式
http://otsu.seesaa.net/article/22779114.html
と同じく、多数のファンドから自分で投資先を選ぶ形のファンド・オブ・ファンズです。
手数料は、(配布資料には「安価」と書いてありましたが)乙が見るところ、かなり高いです。毎月 US$250(約3万円)を積み立てた場合を見てみましょう。18ヶ月までの $4500 が初期口座に入ります。19ヶ月目以降の分は貯蓄口座に入ります。手数料は、初期口座から4半期ごとに 1.5% がかかりますから、年6%に相当します。これは、初期口座の分が運用益を得て大きくなってもその全体の 6% ということです。その他に口座管理料が毎月 $6 かかり、年間で $72 です。資産がまったく増えないとすれば、これは 72/4500=1.6% に相当します。貯蓄口座の分には手数料がかからないということは、このファンドは、長期に継続積立することを前提にしています。積立を継続すれば、初期口座の分の資金は貯蓄口座に比べて相対的に小さくなり、手数料も安くなると考えられます。しかし、毎月積立方式だからこそ、手数料がどれくらい高いのか、投資家からは見えにくくなっていると思います。
貯蓄口座からは随時引き出しが可能だそうですが、事務手数料として $100 かかります。毎月引き出すようにセットすれば、手数料は一度だけの支払いですから、大したことないという見方もできますが、それにしても $100 は相当に高いと思います。自分の金を自分の口座から引き出すのに1万2千円かかるわけですからね。
このように、まるで、手数料の固まりのようなファンドです。こんなにも高い手数料を払って、いったい、どれくらいのリターンが望めるのでしょうか。
ブローカーの資料では、15年にわたって毎月6万円を積み立て、年利16%で運用できると、初期口座400万円、貯蓄口座4000万円になるので、この段階で積立をやめ、4000万円を6%で運用すれば毎年240万円の自己年金が実現できると説明されました。こんなにうまくいくなら、4000万円を6%で運用するより、16%で運用したほうがいいに決まっているのに、なぜそうしないのでしょうか。それはリスクがあるからです。逆にいうと、16% の運用を15年継続するのは困難だとブローカーも認めているのです。つまり、この自己年金は机上の計算にすぎません。(一応の目安として、利回り 6% が安定運用と見ているわけですから、FP 社のファンド・オブ・ファンズの利回りの期待値はそれ以上になるものと思われます。)
一緒にもらった FP 社の109種類の子ファンド一覧を見ると、それぞれの1年、3年、5年のパフォーマンスが数十%になっており、ブローカーのいうように、16% くらいのリターンは楽々達成できそうに思えます。FP 社はファンドの選択眼(数千種類のファンドから100種類くらいを選ぶ力)があるようです。
この資料は、以下のURLで、
http://www.fpinternational.com/fund_prices/ManPrices.htm
WWW でも見ることができます。
しかし、乙は、ここに若干の「ごまかし」があると思います。
ファンドの運用の良し悪しは、事前にはわからないといえます。もしも事前にあるファンドの利回りが高くなることがわかるならば、みんながそこに投資すればいいし、もしも悪くなるのがわかるならそれを解約すればいいというだけの話です。現実にそういうことは起こっていないので、ファンドの成績は事前に予測できないと考えるべきでしょう。
また、それまで成績の良かったファンドでも、次の年に突然成績が急降下することはよくあることです。各種統計を見ても、良好なパフォーマンスを長期的に継続しているファンドはほとんどありません。ですから、好成績の109種のリストを見て、自分がこれから購入する子ファンドもこうなると思ってはいけません。
FP 社のファンド選択眼が、仮にまったくないものとしましょう。それでも、各ファンドの過去のパフォーマンスはわかるので、過去のパフォーマンスが良かったものだけを子ファンドのリストに入れるようにします。また、過去の子ファンドのリストの中から、成績の悪かったものを落とすようにします。それだけで、リストには好成績のファンドがずらりと並び、あら不思議、FP 社はまるでファンドの選択眼があるように見えてしまいます。
FP 社のファンドの過去のパフォーマンスを実際に示すには、過去のある時点にリストに入れたファンド全体について、現在までのパフォーマンスを示さなければなりません。あるいは、個々の顧客ごとの過去のパフォーマンスを計算し、その平均を示すのでもいいでしょう。それが FP 社の選択眼の反映です。そのパフォーマンスが 16% もあるでしょうか。乙はないと思います。しかし、そういう数字はまったく示されませんでした。「各投資家ごとにまったくちがったファンドを選択するから、過去の成績を示すことができない」と FP 社が主張するなら、それは言い訳に過ぎないということになります。全投資家の平均値を示せば充分なんですから。
現在の子ファンド一覧の資料自体は、ウソや間違いを含んでいるわけではありません。今、現にそれらのファンドを選ぶことができるのですから、正しい資料です。こう考えてみると、FP 社は実に宣伝上手だということになります。
FP 社のファンドに申し込む人は、16% の利回りを期待してはいけません。もっとずっと低いのが当たり前なのです。では、一体、期待利回りは何%なのでしょうか。これについては、できれば明日書きます。
なお、一応、この金融商品をファンドということで見てきましたが、実際は、生命保険の形をとります。契約者が死ぬとその段階の資産額の 101% が支払われるとのことです。生命保険という形を取ることで、マン島の契約者保護制度が利用できて、ファンド会社(FP 社)がつぶれても、資金の 90% までは保証されるとのことです。このあたりの設計も巧みですね。
乙は、毎月積立はしない主義
http://otsu.seesaa.net/article/22320551.html
ですから、この「ファンド管理口座を利用した自己年金」も申し込むことはありません。
2006.8.27 以下のところに続きます。
http://otsu.seesaa.net/article/22867433.html
【関連する記事】
- 海外ファンドには投資するべきでない(7)
- 海外ファンドには投資するべきでない(6)
- 海外ファンドには投資するべきでない(5)
- 海外ファンドには投資するべきでない(4)
- 海外ファンドには投資するべきでない(3)
- 海外ファンドには投資するべきでない(2)
- 海外ファンドには投資するべきでない(1)
- パスポートの認証
- メイヤー社について(4)
- メイヤー社について(3)
- インパクトゴールドファンドの運用停止
- Nevsky Global Emerging Markets Fund
- Thames River High Income Fund
- HSBC 香港で米ドル建てでファンドを選ぼうとすると(2)
- HSBC 香港で米ドル建てでファンドを選ぼうとすると(1)
- Ashmore の自分の資金総額が食い違う?
- メイヤー社について(2)
- メイヤー社について
- Nevsky Global Emerging Markets Fund
- スーパーファンドを見直してみると
実は私もFP社の積立をやっています。
ブロ−カ−の当初の話では毎月500US$25年積立て1億とか大きなことを言っていましたが私は当初からそんないい話は信じていませんでした。
また、日本国内に持ち込む際の課税についてもどこにも書いてありません。
乙川様の7.5パ-セント程度で15年やってせいぜい倍になれば良いとでも思ってやってます。
それ以上にHSBC香港に口座を持てたことのほうが重要だと思います。
HSBC香港の投資信託について色々教えてください。
わざと酷いファンドにでも投資しない限り
年率+15%は下らないでしょう。
でも、「手数料の必要な」ファンドのスイッチは必要ですよ。
「リスク」、「手数料」など、ネガな要素ばかり気にされる方は、おやめになった方がいいと思いますが。
突然の出費に現金が必要で
解約しようとしたところ、
違約金が70%?
なんと!!
うーん、これはきついです。
何とすごい違約金でしょう。
これは本当ですか。
違約金というよりも、中途解約手数料と言うべきでしょうが、普通は、高くても 10% くらいではないかと思うんですがね。
どういう計算をしているのでしょうね。
当初の説明資料に書いてあったとすれば、それを了承して投資を決断した側の責任ということになります。
そして始めようとしたらいったいだれと話せばいいのでしょうか?
まったく投資のビギナーです。
この投資は、海外にある業者が扱っているもので、国内の金融商品とは大きく違います。
ビギナーは接触しないほうがいいと思います。
誰に話すかですが、ネットで検索すればわかります。
おすすめするものではありませんが。
参考になるところも沢山あり、大変興味深く読ませていただきました。。ありがとうございました。
実は、昨日、このfriends Provident International Limitedでの積立投資を斡旋する○○倶楽部という会社が主催するセミナーに参加してきました。年利16パーセントの複利運用で毎月600ドルの積み立てで1億という話でした。こんなにうまい話があるのか?と信憑性が問われる感じでした。非常に曖昧な税金の説明をされました。香港のHSBCの口座を作れば世界中、日本でも手数料150円で引き出せると言っていましたが・・・税金のことは曖昧で、素人の私は手を出さない方がよいのかなと思いましたが、明後日、この斡旋業者の方と会って来ます。ちなみに口座開設41000円らしいです。
初期積立に対して期間に応じてボーナスがつくので、最初はプラス圏で推移しますが、初期積立が終わる頃にはマイナスに転落するようです。
軽くぐぐっただけでも、これだけの人がボーナスがついているにもかかわらず、マイナス転落 or 転落直前の縁にいます。
http://to4life.com/?cat=15
http://see-max.com/?p=3370
http://www.carefree-life.com/offshore/report/2012-report.html
http://megadez66.blog3.fc2blog.net/blog-category-13.html
初期積立に対するコスト以外にもIFAへのコスト、ファンド自体のコスト(信託報酬他)がありますので、まあ
成績がボロボロで当然だよなあという感想です。
長期で積み立てればまだ、コストを逓減できるのですが(それでも相当無駄なコストを払うことになりますが)、それでも相当な高コストで、日本人が敢えて投資するメリットはないでしょう。
成績のいいファンドの運用成績を見せて営業しているようですが、当然のことながら過去の成績を将来の成績を保証しませんし、成績のいいファンドを事前に選ぶ方法も存在しません。
平均すればインデックス並でコスト分だけ負けるという当然の結果ですね。
見てると国内で営業してまわっている業者は121fundやスポーツアービトラージといった詐欺案件に関わっている業者が多いので、注意した方がいいと思います。
業者によってはハンザードやスタンダードライフの商品を薦めているところがありますが、中身はほぼ一緒です。