2006年08月28日

北村慶(2006.8)『投資ファンドとは何か──知っておきたい仕組みと手法』(PHPビジネス新書)PHP研究所

 乙が読んだ本です。
 第1章は「不動産投資ファンド」、第2章は「ヘッジファンド」、第3章は「企業投資ファンド」を解説したものです。第4章で「投資ファンドの未来」、つまり今後の展望を述べます。
 乙は、不動産投資ファンドも購入していますが、ごくわずかな額ですから、どうということはありません。また J-REIT はしばらく投資する予定もありません。pp.51-55 では、J-REIT の破綻の可能性について議論しており、興味深く読みました。
 p.62 では、世界の大手年金基金のアセット・アロケーションを示し、日本では、債券と株式を中心に運用しているのに対し、欧米では、それ以外の不動産・REIT、ヘッジファンド、プライベート・エクイティなどの「オルタナティブ投資」にも資金を投じていることがわかります。
 第2章のヘッジファンドに関する解説は乙が一番関心を持って読んだところです。
 p.84 には、クレディ・スイス証券の資料からの引用ですが、ヘッジファンドのパフォーマンスが、従来の伝統的な「株式」や「債券」よりもローリスク・ハイリターンになっていることが示されます。
 p.111 では、ヘッジファンドの投資戦略別のパフォーマンスが示されます。10種類の戦略では、ショート・セリング戦略だけが悪いのですが、他は1994年以降の年平均で 6-13% のパフォーマンスを示しており、大いに期待されます。
 p.121 では、1998年にヘッジファンドの上位25%の成績を収めたマネージャー201人が、その後どうなったかを追跡調査しています。2001 年まで連続4年上位25%に入った人はたった2人しかいません。浮き沈みが激しいものだということがよくわかります。
 pp.126-127 では、マン・グループが二つのタイプのヘッジファンドを提供するということを述べています。一つは透明性が高い(何をやっているかを投資家にきちんと説明する)がリターンが低いもの、もう一つは透明性が低い(何をやっているか説明しない)がリターンが高いものということです。マンの AHL が後者だということです。パフォーマンスだけを見ても、長年の実績があれば、それはそれでいいようにも思えます。多額の資金を運用する機関投資家ではこういう判断はできないでしょうが、少額資金を運用する個人投資家ならば可能でしょう。
 pp.127-128 では、ヘッジファンドに向かう巨額の投資資金と、ヘッジファンドは運用資金が少額のほうが成績がいいという矛盾点を解決する一つの方策がファンド・オブ・ヘッジファンズだと説明されます。異なる特徴のヘッジファンド複数に分散投資するという考え方は、それはそれで有効かもしれません。個人投資家の出る幕ではありませんが、……。
 p.200 には、個人投資家からみた「投資ファンド」について北村氏の見解が述べられています。一般の個人投資家は、国内外の「株式」と「債券」をポートフォリオの基本に据え、「投資ファンド」への投資は行わない、あるいは、行うとしても限定的な資産配分割合とすべきであるということです。確かに、ファンドマネージャーについてもわからないことが多いし、どのファンドを選ぶべきかに関する情報はきわめて得にくいので、デュー・ディリジェンスなどは個人投資家にはできません。その意味で、慎重に行うべきだとの北村氏の意見はもっともです。しかし、驚異的なパフォーマンスを見せつけられて「あなたもいかがですか」と誘われると、つい投資したくなってしまうのもまた事実です。このあたりのスタンスをどうするべきか、乙には確たる判断が付きません。
 本書は、全体として、おもしろく読みました。なお、本書の記述内容が北村氏の前著
http://otsu.seesaa.net/article/22245739.html
と一部重なるのはしかたがないでしょう。


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posted by 乙 at 06:44| Comment(4) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最近、乙さんの日記に出会って楽しく又興味深く読ませていただいています。
マン社のAHL運用のファンドに大変興味を持っているのですが、実際のところ乙さんはいかがお考えですか?

44歳、サラリーマン、運用額は投資信託1500万円(10本)、FXで約100万円、預貯金500万円といったところですが年に200〜250万円の貯金が精一杯で、やはり15年後の59歳ぐらいで金融資産を15000万円ぐらいにしたいと考えていますが欲張りすぎかも。投資暦は1年半です。
Posted by 藤原 at 2007年01月27日 19:59
藤原様
 コメント欄で実質質問が書いてありました。次のような条件だと、15年後に1億5千万円をためることが可能です。
運用利率=9% 毎年の増加分= 250万円 初期資産=2100万円
1年目 2539.000
2年目 3017.510
3年目 3539.086
4年目 4107.604
5年目 4727.288
6年目 5402.744
7年目 6138.991
8年目 6941.500
9年目 7816.235
10年目 8769.696
11年目 9808.969
12年目10941.776
13年目12176.536
14年目13522.424
15年目14989.442

 毎年250万円ためるのは、まあ可能でしょうが、9% をコンスタントに出し続けるのはかなり厳しいと思います。
 マン社の AHL は優秀ですが、それだけに集中投資するのは危険ですし、いろいろ分散投資した上で(手持ちの現金も含めて)9%の利回りは普通はむずかしいのではないでしょうか。
Posted by at 2007年01月27日 23:53
乙さんご返事ありがとうございます。
マン社のAHLに投資をしたいのですが、海外送金するしか方法が無いようで二の足を踏んでいます。三菱UFJ証券でマン社のファンドが買えるようですが、募集期間限定型のものは優秀に思えるのですが、どう思われますか?
Posted by 藤原 at 2007年01月28日 20:36
藤原様
 海外送金は、さほど恐いものではありません。為替リスクはありますが、まあ、そんなものでしょう。乙は、ドルベースで資産が増えてくれれば、それでいいと思いますが、……。
 国内で(AHLに限らず)マン社のファンドに投資する手もありますが、それがいいかどうかですね。このあたりになると、個人の好みの問題になるかと思います。
 「好み」ですので、これ以上何ともいえません。
Posted by at 2007年01月28日 21:55
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