2006年09月06日

三上芳宏・四塚利樹(2000.3)『ヘッジファンド・テクノロジー』東洋経済新報社

 乙が読んだ本ですが、結果的には読む意味はあまりなかったといったところです。なぜならば、p.4 にあるように「本書は、基本的にはデリバティブの知識を前提としてはいないが、金融・証券市場について日頃から強い関心を持っている人々を読者として想定している。【中略】とくに資産運用ビジネスの関係者、金融機関のディーラー、一般企業の財務担当者などには、おおいに興味を持って読んでいただけるものと考えている」とあるからです。つまり個人投資家ははじめから対象読者になっていないのです。実際、ややわかりにくいところもありました。
 p.65 トラックレコード(過去の運用成績)は偽造が可能で、その具体的手順が書いてあります。なるほど。こんなことをされたら、投資家などでは絶対に見抜けないですね。もっとも、多くのファンドは、正直に会計処理をしているだろうと(根拠はありませんが)思います。
 p.131 には「ヘッジファンドのトラックレコードがよいときというのは、実は投資収益機会が減少しつつある過程で、逆にそれが悪いときは、投資収益機会が増大しつつある過程であることが多い。」とあります。乙は、短期で参加・離脱するよりも、長期的に投資することでそういうタイミングのパラドックスを避けるべきだということだと解釈しました。
 p.68- で物まね猫(コピーキャット)の話が出て来ます。ヘッジファンドの運用を真似て行動するファンド類です。それが非常に大きくなりつつあり、ヘッジファンドの成績を左右してしまうほどだと説明されます。情報開示をすればするほどコピーキャットが増えるという問題があり、解決は困難です。
 しかし、p.194 の記述によれば、過去の変動が正規分布曲線で近似されるものとやや違っているので、そういうケースを含めてモデル化して扱おうという話が出て来ます。これは、ある意味でコピーキャットのようなものまで含めたモデルだと考えてもいいと思います。こんなことまで考えられているんですね。
 乙がよくわからなかったところは、pp.85-103 のあたりです。
 第3章(pp.139-184)は、邦銀が金融市場でヘッジファンドに狙われ、巨額の損失を出してきた経緯を明らかにしています。欧米と会計基準が違ったり、最新の金融テクノロジーを駆使されたりすれば、ほぼ必然的に「負け」になることもあるんですね。恐い話でした。金融がグローバル化するということは、そういう知識をみんなが知らなければならないということです。いやはや、大変な時代になったものです。
 余談ですが、本書の図はかなり見にくいと思いました。まるで、カラー印刷した図をモノクロで印刷したかのようです。灰色の線と黒い線のような区別はよく見えないことがあります。
 もう一つの余談です。帯には、マイロン・ショールズ博士の推薦文が付いていました。「この本は【中略】について詳細に述べている」と書いてありますが、ショールズ博士は日本語が読めるのでしょうか。乙は彼を知りませんので憶測でものをいってはいけませんが、たぶん読めないのではないでしょうか。本の現物が読めない人に推薦文を書いてもらうというのは、乙は引っかかります。ショールズ博士が日本語が堪能だった場合は、この部分は乙の言い過ぎということになります。

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posted by 乙 at 05:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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