p.65 トラックレコード(過去の運用成績)は偽造が可能で、その具体的手順が書いてあります。なるほど。こんなことをされたら、投資家などでは絶対に見抜けないですね。もっとも、多くのファンドは、正直に会計処理をしているだろうと(根拠はありませんが)思います。
p.131 には「ヘッジファンドのトラックレコードがよいときというのは、実は投資収益機会が減少しつつある過程で、逆にそれが悪いときは、投資収益機会が増大しつつある過程であることが多い。」とあります。乙は、短期で参加・離脱するよりも、長期的に投資することでそういうタイミングのパラドックスを避けるべきだということだと解釈しました。
p.68- で物まね猫(コピーキャット)の話が出て来ます。ヘッジファンドの運用を真似て行動するファンド類です。それが非常に大きくなりつつあり、ヘッジファンドの成績を左右してしまうほどだと説明されます。情報開示をすればするほどコピーキャットが増えるという問題があり、解決は困難です。
しかし、p.194 の記述によれば、過去の変動が正規分布曲線で近似されるものとやや違っているので、そういうケースを含めてモデル化して扱おうという話が出て来ます。これは、ある意味でコピーキャットのようなものまで含めたモデルだと考えてもいいと思います。こんなことまで考えられているんですね。
乙がよくわからなかったところは、pp.85-103 のあたりです。
第3章(pp.139-184)は、邦銀が金融市場でヘッジファンドに狙われ、巨額の損失を出してきた経緯を明らかにしています。欧米と会計基準が違ったり、最新の金融テクノロジーを駆使されたりすれば、ほぼ必然的に「負け」になることもあるんですね。恐い話でした。金融がグローバル化するということは、そういう知識をみんなが知らなければならないということです。いやはや、大変な時代になったものです。
余談ですが、本書の図はかなり見にくいと思いました。まるで、カラー印刷した図をモノクロで印刷したかのようです。灰色の線と黒い線のような区別はよく見えないことがあります。
もう一つの余談です。帯には、マイロン・ショールズ博士の推薦文が付いていました。「この本は【中略】について詳細に述べている」と書いてありますが、ショールズ博士は日本語が読めるのでしょうか。乙は彼を知りませんので憶測でものをいってはいけませんが、たぶん読めないのではないでしょうか。本の現物が読めない人に推薦文を書いてもらうというのは、乙は引っかかります。ショールズ博士が日本語が堪能だった場合は、この部分は乙の言い過ぎということになります。
【関連する記事】
- 香川健介(2017.3)『10万円からできる! お金の守り方教えます』二見書房
- 大江英樹、井戸美枝(2017.2)『定年男子 定年女子』日経BP社
- 天達泰章(2013.6)『日本財政が破綻するとき』日本経済新聞出版社
- 安間伸(2015.11)『ホントは教えたくない資産運用のカラクリ 投資と税金編 ..
- 橘玲(2014.9)『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 2015』幻冬舎
- 橘玲(2014.5)『臆病者のための億万長者入門』(文春新書)文藝春秋
- ピーター・D・シフ、アンドリュー・J・シフ(2011.6)『なぜ政府は信頼できな..
- 小幡績(2013.5)『ハイブリッド・バブル』ダイヤモンド社
- 吉本佳生(2013.4)『日本の景気は賃金が決める』(講談社現代新書)講談社
- 川島博之(2012.11)『データで読み解く中国経済』東洋経済新報社
- 吉本佳生(2011.10)『日本経済の奇妙な常識』(講談社現代新書)講談社
- 野口悠紀雄(2013.1)『金融緩和で日本は破綻する』ダイヤモンド社
- 吉田繁治(2012.10)『マネーの正体』ビジネス社
- 午堂登紀雄(2012.4)『日本脱出』あさ出版
- ウォルター・ブロック(2011.2)『不道徳な経済学』講談社+α文庫
- 内藤忍(2011.4)『こんな時代を生き抜くためのウラ「お金学」講義』大和書房
- 瀬川正仁(2008.8)『老いて男はアジアをめざす』バジリコ
- 増田悦佐(2012.1)『日本と世界を直撃するマネー大動乱』マガジンハウス
- 藤沢数希(2011.10)『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門..
- きたみりゅうじ(2005.10)『フリーランスを代表して申告と節税について教わっ..