ヘッジファンドについて、非常に詳しく書いてあります。
本書の中心は第U部です。第4章「債券アービトラージ」、第5章「株式市場ニュートラル」、第6章「転換社債アービトラージ」、第7章「買収合併(リスク)アービトラージ」、第8章「破産証券投資」、第9章「イベント主導戦略」、第10章「マクロ投資」、第11章「セクター・ファンド」、第12章「株式ヘッジ」、第13章「エマージング市場」、第14章「ショート・セリング」の全11章でそれぞれの手法について詳しく解説します。書き方が各章とも共通していて、丁寧であるとともにわかりやすくなっています。この点は、いかにもアメリカ風の書き方です。また、これらの具体的な記述の前に第3章で各章の概観を載せているあたりもアメリカ風だと思いました。
先頭に日本語版への序文が17ページも付いています。ここがかなりおもしろかったです。
p.iv では、ヘッジファンドの急成長ぶりが描かれます。p.v では、アメリカ国内の投資家のヘッジファンドへの投資内訳を示した図があります。今や、個人が4割を占めているんですね。アメリカでは富裕層が多いのでしょう。
p.vi では、ファンド・オブ・ファンズを通してヘッジファンドに投資するケースがかなり多いことがわかります。これも興味深いことでした。
p.xiv では、ヘッジファンドのリスクとリターンについて示していますが、ショート・セリング以外はいい結果になっています。ヘッジファンドの各戦略は、財務省証券と S&P 500 を結んだ線よりも上に位置しています。こうして、いいパフォーマンスであることが明示されます。
第V部では、ヘッジファンドに投資する際の注意点を述べています。p.269 では、ヘッジファンド投資はベンチャー・ビジネスへの投資だと書いてあり、ヘッジファンドの本質をズバリ一言であらわした名言だと思いました。
p.323 の監訳者のあとがきにもあるように、本書は機関投資家の運用担当者向けに書かれたもので、個人投資家は、読んでも「ああこういうものか」で終わってしまいそうです。
この本が1冊あれば、ヘッジファンドに関しては、たいていのことが理解できるのではないでしょうか。「ヘッジファンドのすべて」というタイトルにウソはないと思います。
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