エビデンス(証拠)に基づいた機械的な銘柄選択(Evidence-Based Investment)を説く本です。科学的に株を扱うとこうなるという見本のようなものでしょう。
全体として、よく書けています。では、ここに書いてあるやり方で投資できるか。著者はできるといいます。実際にやっています。しかし、著者以外の人が行うとなると、なかなか大変なように思います。いろいろなファクターを総合して考えなければなりませんから、かなり手間がかかる方法です。まあ、こういう努力をしないと株では勝てないということなんでしょう。乙は、こういうやりかたはできないから、やっぱり安易な方法=パッシブ運用でいいのではないかと考えます。
本書で特におもしろいと思ったところを書き抜いておきます。
p.33 カリスマ投資家(バフェットやリンチなど)の技は他人には再現できない「アート」だといいます。たしかに、他人がマネするのは難しそうです。では EBI は? 乙は、これまたアートではないかと感じました。
p.54 投資信託のパフォーマンスが悪い理由が述べられています。投資信託が実は短期投資であること、ファンドマネージャーに横並び意識があること、コストが高いこと、投資信託ならではの制約があることなど、「ふ〜ん」と感心してしまいました。
pp.76-77 低PERの株を買う場合の期間ですが、9年も保有したままでいいというのは驚きでした。乙は、低PER効果はもっと短いものだと思いこんでいました。
pp.152-155 アナリストのレーティングはあてにならないという話です。データがきちんと示しています。アナリストのすすめるものを売り、低くレーティングするものを買ったほうが成績がいいということです。いやはや、そういうものなんですねえ。
株式投資をする人は、ぜひ読んでおくといいでしょう。でも、ホントのところは、株の初心者ではなくて、ある程度株式投資を経験した人が読むとずっとおもしろいと思います。
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