350ページもあって、情報量が多く、とてもおもしろいです。
ヘッジファンドは保守的なファンドだと説きます。これだけでも「へ〜」という感じです。
pp.14-15 多くの伝統的な資産運用が通用するのは計画対象期間が無限の大手機関投資家であるといいます。なるほど。個人は寿命がありますからね。乙も、たった15年しかないので、その中でどうやったら最適な行動が取れるかを模索しているわけです。機関投資家は、視点が違いますね。
p.56 最近は代替投資を小分けにして販売しているということですが、それでも25万ドル以上なのだそうです。いやはや、ちょっと手が出ませんねえ。
p.59 機関投資家(企業年金など)が投資できるのは数千億ドルの規模なので、ヘッジファンドではすべてを吸収することはできないそうです。5億ドルまでの小規模な(!)ヘッジファンドが成果を上げられるのだそうです。
p.77 ヘッジファンドは1990年代に急激に成長したことが図で示されます。ということは、それ以前は(あったはずですが)大したものではなかったのでしょうね。
pp.80-81 ヘッジファンドの投資金額は50万〜100万ドルが一般的だとのことで、1000ドルから受け入れるミューチュアルファンドとは大違いです。しかし、ファンド・オブ・ファンズの仕組みを使えば、少額の投資家もヘッジファンドへの投資が可能になります。ファンド・オブ・ファンズの意味はまさにここにあります。
p.91 ヘッジファンドの統計はないといいます。それぞれのファンドが勝手なことをするわけですし、それぞれが個性的ですから、「統計」には馴染まないのでしょう。
p.111 ヘッジファンドの破綻はそんなに多くないとしています。しかし、年間7%とか、1990年代を通じて(つまり10年間に)10% とか聞くと、乙はけっこうな比率だと思いました。
p.124 ヘッジファンドは市場平均以上の成績を上げますから、個人富裕層に向いているとのことです。
p.156 で、オーウェン氏は年平均 15%で、マイナスになる年がないようなヘッジファンドを選んでいます。すると、p.160 のようにロング/ショート=ジョーンズ・モデルが一番良い成績だったとのことです。
pp.198-199 で、個人投資家と機関投資家の違いを述べています。機関投資家は、25年以上の期間で投資を見るけれども、個人投資家はそうでなく、長年の低迷期を根気よく耐えられる個人投資家は少ないといいます。若い投資家は忍耐がないし、高齢の投資家には時間がありません。期間投資家はアセットアロケーションを遵守することが大事ですが、個人投資家は、そういう配慮がいらないというわけです。
p.205 ヘッジファンドはポートフォリオの 25% くらいを占めるのが良かろうとのことです。具体的なアドバイスです。
pp.209-238 会費が数千ドルの投資クラブがいろいろあるようです。富裕層はそういうのを利用するというわけで、乙は「ずいぶんリッチだな」と思いました。ゴミ投資家とは関係ない世界が広がっているんですね。
p.227 ヘッジファンドのコンサルタントの手数料は、投資金額の0.1%から1%で、最低投資金額は10万ドルとのことです。なかなかハードルが高いですね。
p.229 ファンド・オブ・ファンズは、投資金額は比較的少額で済むといっても、その最低が25万ドルなのだそうです。pp.80-81 を読んだときには期待してしまいましたが、これはちょっと手が出せません。
p.232 ファンド・オブ・ファンズなら、ロー・リスク、ハイ・リターンが可能だと説きます。それはそうでしょう。
p.244 ヘッジファンドとオフショアファンドは別であると書いてあります。米国籍の投資家はオフショアファンドへの投資ができないので、ヘッジファンドの場合もその半分は投資できないのだそうです。だからこそ、アメリカではヘッジファンド投資が盛んなんですね。乙はようやく秘密の一端がわかりました。
p.261 オーウェン・レシオという独自の数値が出てきます。年率換算収益率と最悪月収益率の比率が4対1以上でないヘッジファンドには投資しないということです。たとえば、ファンドの最悪月収益率が-15%である場合には、年率換算収益率が(手数料などを差し引いた後のネットで)60%以上ないと投資対象にならないというのです。なかなかおもしろいアイディアだと思いました。ハイリスクな投資のときの一つの考え方を教えてもらいました。
pp.297-317 では、「投資を継続してフォローする」ということで、投資後のフォローを述べています。ここに書かれている方法を読むと、ずいぶん手間がかかるやり方だと思います。ま、多額の資金を投資する場合はこういうことも必要なんでしょうが。
本書は、実際のヘッジファンド投資に即して具体的に書いてある本であり、その意味でおもしろい本です。ヘッジファンドについて書かれた本の中では、オススメできる本でしょう。乙は、本書でいわれているようなヘッジファンドに投資するほどの資金がありませんので、絵に描いた餅なのですが。
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