とってもおもしろい本です。やや記述が古くなった面もありますが、基本的な考え方は今でも有効であり、今読んで損はないと思います。乙は、以前一読していて、もちろん、そのときもおもしろいと思いましたが、今読み直しても、やっぱりおもしろいと思いました。
pp.6-22 の Prologue を読むだけでも、著者たちの意気込みが伝わってきます。
pp.16-18 国際分散投資がなぜ必要かを明確に物語っています。これを読んでも海外投資をしたいと思わないひとはへそ曲がりなのではないでしょうか。
p.19 ケイター・アレン銀行では両替手数料が無料だそうです。驚きました。乙は世界中どこでも有料なのだと思っていました。(だって、銀行も儲けなければならないわけですから。)
PART 1 (pp.24-41)「税金天国の基礎知識」と PART 2 (pp.44-90)「タックスヘイブンに銀行口座をつくる」は、今の乙にとってはあまりおもしろく思いませんでした。しかし、これから海外投資をしようとする人には有用な知識だと思います。
p.78 で円を海外送金しようとして、めんどうであるとともにコストが高いことを述べています。それはそうでしょう。そうしなかったら、多くの日本人が海外口座で円を運用するでしょうからね。
PART 3 (pp.92-132)「海外投資と税金の基礎知識」あたりから本書の本領発揮です。類書にはあまり書かれていないことがいろいろ出てきます。
p.100 タックスヘイブンでは、ファンド(投資信託)に投資するべきで、株や債券には投資しないものだと説きます。税金の問題が一番大きいようです。
pp.113-120 ゴミ投資家は合法的に税金を払わないことが可能だと述べます。運用金額が大したことないから、収益が年間20万円以下になることが多く、したがって課税対象にならないというわけです。所得税を払うことになっても国内投資より有利だそうです。
pp.120-122 1億円の資産がたまったら、永遠の旅行者(Perpetual Traveler)になろうといいます。乙は、これは考えていません。
PART 4 (pp.134-208)「タックスヘイブンで利回り400%のファンドを購入する」は、ファンドの具体的な選び方と購入のしかたを書いたもので、アドバイスの具体性が光ります。乙には、この章が一番おもしろかったと思いました。
p.136 タックスヘイブン籍のファンドの有利さを述べ、「みんなが通信販売でオフショア・ファンドを購入するようになると国内の金融機関が儲からなくなるので、それはお金持ちだけの秘密にしているわけです。」と述べています。乙が、以前疑問に思っていたこと
http://otsu.seesaa.net/article/22528723.html
(「既に海外投資をしている富裕層と呼ばれる人たち」はオフショア投資がメジャーになっては困るといわれますが、それがなぜかわかりませんでした)は、ここに答えが書いてありました。もっとも、よく考えてみると、「国内の金融機関が儲からない」ことと「お金持ちだけの秘密」は論理的につながらないように思いますが。
p.147 日本でもオフショア生命保険の需要があり、すでに代理店があるということです。そういうのを利用する富裕層が多いことがわかります。
pp.164-170 オフショアファンドはハイリスクであることが示されます。3年で2倍になるようなファンドがいくつもある一方、オフショアファンドの4割は元本割れしているとのことです。
p.172 五つ星の記号でファンドの評価が行われますが、その計算法が書いてあります。乙は、その意味を初めて知りました。
pp.197-199 オフショア・ファンドの販売手数料は 5.9% ほどかかるという話です。まあそんなものでしょう。国内の投資信託よりも高いんですね。しかし、長期に保有すれば、大した問題ではないし、利回りが国内よりもいいことが多いので、このくらいは無視してもいいと思います。
本書では、オフショア・ファンドで利回り400%のものを購入することができたということですが、過去の成績のいいものを選べば、こういういい成績のものは必ず見つかるものです。問題は、このファンドが、これからもこういう成績をあげ続けるとはいえないことです。こればかりは誰にもわかりません。したがって、本書は著者たちがオフショア・ファンドで資産を何倍にもしたということではないことをきちんと理解しなければなりません。この点で、どうも誤読をする人がたくさんいそうな気がして恐いです。
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