タイトルに引かれて買ってしまいました。
本書全体を一読して、今の日本でいわれている数々の問題が全部つながっているような感覚になりました。城氏は、それらを関連付けて解きほぐしています。新卒者が会社に入ってたった3年で辞めることは、会社のあり方の問題だし、またそれは日本の社会のあり方の問題とつながっているということです。若者はどうにも未来の展望が持ちにくいようです。少子化はその一環だというわけです。ということは、少子化の解決はそう簡単ではありません。
一番の問題は、日本では若者が中高年層に押さえつけられているということです。そもそも若い人の数が少ないから選挙でも力にはなれないのですが、若い人が選挙にいかない(投票率が低い)こともそれに輪をかけています。そうやって、若い人が将来の展望が持ちにくい状態になっているのです。
各企業のリストラや採用方針の変更で新入社員が(正社員として)入って来なくなっていますが、その結果、派遣社員などの非正規雇用が増えています。労働組合も年功序列です。政治家だって、いわば老人代表で、社会の設計がうまくできません。そうして老人とともに日本は沈んでしまうというわけです。国債の発行残高の膨張も、結局は後の世代に任せようというだけの話ですから、そういう発想をする政治家も、それを何とも言わないマスコミも、みんなどうしようもありません。年金も同様の問題です。城氏は「年金も国債も火のついた爆弾を次世代にリレーしていくようなものだ」と書いています。
少子化はますます進んでいますから、近いうちに再度年金改革がいわれるでしょう。城氏は、年金に関して、すでに受給している人を含めて、支給額を即日大幅カットすることを提案しています。これが一番公平だというわけです。そうかもしれません。しかし、それをいうなら、さらに一歩進めて年金制度自体を廃止することが一番いいのかもしれません。(実際のところ、こんなことをすると、年金をたっぷりもらって、もう死んでしまった人たちが一番おいしいところを食べたことになりますが。)
投資家としては、年金などをあてにせず、資産の運用益(と取り崩し)だけで暮らしていくことができるようにする必要があります。乙は、15年後の退職を考えていますが、今の調子で資産運用を続けることができれば、そのころは年金なしでも暮らしていけそうに思います。
p.152 から、東大生の国家公務員離れが進んでいる話が出て来ます。なるほど。今や国家公務員は不人気産業なんですね。天下りがなくなれば、国家公務員はおいしい商売ではないし、それを見越した若い人は国家公務員を希望しなくなっているとのことです。ということは、逆に、本当の意味での天下り規制が(数年から10年くらいのうちに)行われるのかもしれません。新卒者の動きはそれを先読みしていると見られます。
この本は、若い人にこそ読んでもらいたいものです。そして、若い人が自分の将来を明るいものとしてとらえるようにならなければ、日本の再生はあり得ません。今は社会システムが変貌しつつある時代です。是非、若い人が、今までの考え方を捨てつつ、がんばってくれることを期待したいと思いました。
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