『ゴミ投資家のためのビッグバン入門』
http://otsu.seesaa.net/article/25174202.html
に書いてあったことで、銀行とコンビニを比べる話があり、本書を思い出しました。乙は、刊行直後に本書を一読していました。
ショッキングなタイトルです。pp.10-11 では、「いま、日本の銀行は、不良債権を抱え、貸し渋りを続け、預金者のお金を国債買いに回しているだけで、ほぼ何もしていないに等しい」といっています。つまり、銀行はコンビニ以下だということです。
pp.20-22 で、銀行がコンビニ化し(コンビニの接客術などを学び)、一方でコンビニが銀行化している(ATM を置き、振込や各種税金の納付ができ、銀行の諸手続きも(銀行に取り次ぐ形で)できるようになりつつある)ことが指摘されます。銀行の将来像は、本当にコンビニなのでしょうか。そうかもしれません。しかし、銀行員がコンビニの店員に(低給料に耐えて)なれるでしょうか。なれないとしたら、銀行はどうなるのでしょうか。つぶれるしかないのでしょうか。
p.26 役所の業務もコンビニが窓口になってきています。しかし、p.28 でいうように「本来なら、役所が24時間オープンするのが筋である。」が正しい考え方です。
p.29 郵便局までコンビニ化を目指しています。今は24時間営業の郵便局がだいぶ増えてきました。そういえば、乙は、先日ドイツで見かけた Deutsche Post を思い出します。ドイツの「郵便局」ですが、民営化したため、本当にコンビニ化していて、文房具や雑貨などを店内で販売しており(というか、それがメインで)、一番奥のレジのところでおまけ程度に切手の販売や郵便の受付を行っているのでした。おもてに掲げられた黄色い看板がなければ、コンビニと何ら変わりません。日本の郵便局も、間もなくそうなるのでしょうか。
p.36 日本の銀行には、給料は高いが能力は低く横並びの銀行員がたくさんいるとのことです。これからは彼らはコンビニの店員のように扱われるだろうとのことです。つまり低賃金で働くということですね。銀行員も受難の時代になったというべきでしょう。
p.40 銀行以上に信用金庫が危ないという話です。それはそうでしょう。地域密着型とはいえ、銀行とコンビニに挟まれているわけですから、将来は大変です。
p.104 ここでも銀行員がコンビニ店員になれるのか、意識の問題だとしています。今の銀行員にはできないでしょうね。つまり、銀行がコンビニに負けて没落するというわけです。
pp.132-134 銀行の合併には意味がないことが説かれます。でも、さらに銀行の合併は続くんですね。関係者は、ものがわからないのか、わかっていてあえてやっているのか、どちらなんでしょう。
p.159- Chapter 6 は「金融社会主義の罠」という題で、今の日本はまるで社会主義国のようだといいます。公的資金を注入するというのは、国が銀行を国有化するようなものですから、まあ、金融社会主義というのも当然でしょう。こうして、銀行問題は、実は、日本社会が抱えている問題そのものだという見解が述べられます。この章はおもしろかったです。でも、読んでいると、日本に明るい未来はないように思えてきて、残念です。
p.171 では、日本では間接金融(銀行を経由して預金者のお金が企業に流れること)が直接金融(企業が社債や株式を発行して資金を得ること)にシフトしてしまったことを指摘しています。こういう中では、間接金融の担い手である銀行がうまく機能しないのは当然であると思えます。
本書を読むと、大手銀行(とくにりそな銀行)が腐っていることがよくわかります。不良債権問題も、銀行が悪いというよりも、お役所がそういう事態に至らしめた面が強いように思えてきます。その意味では、日本の暗い未来を象徴する本だといえるでしょう。
p.201 Chapter 6 の最後は、こう終わります。「あなたは、それでもメガバンクにお金を預け続けますか?」乙の答えは決まっています。「いいえ」です。自分の資産は自分で運用していきます。メガバンクにお世話になる部分は、ゼロではないにせよ、ほぼゼロみたいなものです。
乙は、提供されるサービスを考えて、自分のメインバンクを変更しました
http://otsu.seesaa.net/article/14604306.html
が、メガバンクの問題点は、もっと深いところに巣くっているようです。
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ヤフーでブログをはじめました。
よろしくお願いします。
http://blogs.yahoo.co.jp/tachikimakoto/MYBLOG/yblog.html
立木信
何と、乙が読んだ本の著者ご本人からコメントがありました。
驚きました。
こういうことがあると、身が引き締まります。
ブログではウソや誇張は書かないつもりですが、やはり著者が読んでいるとすると、批判を書く方もそれなりの覚悟(いざとなれば著者と徹底議論する覚悟)で書かなければなりませんね。
まあ、そういうのが楽しみであえて辛口に書くこともあるのですけれど、……。これはウソや誇張ではないですよね。