http://www.panrolling.com/books/alt/kaigaifund.html
に詳しい説明があります。
本書の中心は pp.160-243 のファンド一覧でしょう。本書は全体で約300ページありますから、その約3割がファンド一覧にあてられていることになります。しかし、ここは、実際のところ、すっかり古くなってしまったと思います。ファンドの成績はどんどん変わるし、新しいファンドができる場合もあれば、償還されて消えるファンドもあります。ということで、ここでは、このような実用的な記事ではなく、本書中に流れる思想のようなものについて述べたいと思います。
まず、考え方としては、今でもけっして古くなっていないということをいっておきましょう。乙がとりわけおもしろく読んだのは、PART 1「ファンドの仕組みを1時間で理解する」です。ファンドについて、実にいろいろなことを教えてくれます。貴重な情報源です。
p.31 ファンドは30億円以上の資産のあるものから選ぶようにというアドバイスがあります。ファンド運用会社の運用報酬は 0.4% くらいだそうですから、これでやっと利益が 1200 万円となり、何とか運用していけるというわけです。
p.32 一方、日本の大半のファンドは資産が30億円もないから、赤字だということになります。
p.43 スポット型投信(いつでも自由に売り買いができるわけではないユニット型のファンド)の成績が振るわないのは、固定手数料制のため、モチベーションが生まれないからと説明します。納得できる話です。
p.43 証券会社のゴミ箱として使われているファンドがあるとのことです。これがどういうものかを説明すると長くなるので、本書をお読みください。乙は驚きました。日本の投信の成績がよくないことの理由の一つがこれだったんですか。
p.47 おかしくなってしまったファンドを安楽死させるやり方が述べられます。なるほど、こういうことだったんですか。さらには回転売買も(会社側にとって)好都合ということになります。昔はこんなこともあったんですね。まさか、今はもうなくなったと思いますが、……。
p.63 野村證券のボンド・セレクト・トラスト(BST)が有利な商品として紹介されています。
乙は、本書を過去に一読していたのですが、このことはまったく覚えていませんでした。
http://otsu.seesaa.net/article/24380821.html
で述べたように、別のブログで BST について書いてあることを知って、「あ、そうか」と思ったのでした。自分が興味がないと、本で読んでも頭に入らないことを痛感します。
p.78 「一国の金融機関の優劣は、その国の投資家の質によって決まります。」とあります。なるほど、そうですよね。ということは、やはり優れた投資家が多い海外で資産運用をしたほうがいい結果になるといわれているようなものです。海外投資の意味の一つはここにあるというわけですね。
p.103 日本企業の PBR の数値は信用できないとのことです。時価会計でないということが、企業の資産価値を不透明にし、つまりは PBR にも影響を与えていたんですね。今は時価会計が導入されているので(どの範囲まで導入されているのか、乙は知りませんが)、さすがに違っているのでしょうね。
p.104 バリュー効果はアメリカ株だけに見られるという話です。しかし、この話は角山氏の本
http://otsu.seesaa.net/article/21894584.html
とは矛盾する記述です。角山氏は日本株でもこの現象が見られたとしています。
p.106 なぜ各種大手金融機関が LTCM の破綻に際して LTCM を助けるようなことをしたのか。それは、自らが LTCM に巨額融資をしていたり、LTCMのマネをして資金を運用していたからだと説明します。大手は、ここまで運用能力をなくしていたのかと、信じられない気分になります。
p.142 オフショア・ファンドの販売手数料が高い(約5%)のは、これが実はアドバイザーへのコミッションになるからだと説明されます。なるほど、そうなんですか。だとすると、ネットの発達により、販売手数料が下がることがあるでしょう。(乙が経験した「販売手数料の割引」もこういうことだったのかもしれません。)
p.280 『ゴミ投資家のための税金天国入門』
http://otsu.seesaa.net/article/25298702.html
で述べていた「ケイター・アレン銀行では両替手数料が無料」というのは間違いだったと書いてあります。それはそうでしょう。それが当たり前です。
とにかく読んで楽しい本です。オフショア・ファンドの購入を試行錯誤しながら行っていくわけですが、その過程が克明に書かれている点に感心します。こういうのを知ると、自分でもできそうな感じになります。
しかし、本書を今読むべきかどうかは人によって意見が分かれるところでしょう。
【関連する記事】
- 香川健介(2017.3)『10万円からできる! お金の守り方教えます』二見書房
- 大江英樹、井戸美枝(2017.2)『定年男子 定年女子』日経BP社
- 天達泰章(2013.6)『日本財政が破綻するとき』日本経済新聞出版社
- 安間伸(2015.11)『ホントは教えたくない資産運用のカラクリ 投資と税金編 ..
- 橘玲(2014.9)『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 2015』幻冬舎
- 橘玲(2014.5)『臆病者のための億万長者入門』(文春新書)文藝春秋
- ピーター・D・シフ、アンドリュー・J・シフ(2011.6)『なぜ政府は信頼できな..
- 小幡績(2013.5)『ハイブリッド・バブル』ダイヤモンド社
- 吉本佳生(2013.4)『日本の景気は賃金が決める』(講談社現代新書)講談社
- 川島博之(2012.11)『データで読み解く中国経済』東洋経済新報社
- 吉本佳生(2011.10)『日本経済の奇妙な常識』(講談社現代新書)講談社
- 野口悠紀雄(2013.1)『金融緩和で日本は破綻する』ダイヤモンド社
- 吉田繁治(2012.10)『マネーの正体』ビジネス社
- 午堂登紀雄(2012.4)『日本脱出』あさ出版
- ウォルター・ブロック(2011.2)『不道徳な経済学』講談社+α文庫
- 内藤忍(2011.4)『こんな時代を生き抜くためのウラ「お金学」講義』大和書房
- 瀬川正仁(2008.8)『老いて男はアジアをめざす』バジリコ
- 増田悦佐(2012.1)『日本と世界を直撃するマネー大動乱』マガジンハウス
- 藤沢数希(2011.10)『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門..
- きたみりゅうじ(2005.10)『フリーランスを代表して申告と節税について教わっ..