第1章「為替とは何か?」は、為替の基本的な考え方の解説です。通り一遍的に感じました。
第2章「円高・円安とは何か?」も、まあまあ常識的な内容です。
第3章「「良い円高」論のウソ」は、円高なんていいことはないということで、このあたりからおもしろくなってきます。円安は輸出企業に有利で、円高は輸入企業に有利と考えたくなりますが、そう簡単な話ではなく、輸出企業と輸入企業を併せて日本全体として考えると、円高は良くないことになるという話です。50ページほどの章ですが、図表で具体的な数値を示しながらの記述ですので、説得力があります。
なお、p.94 から変動相場制の下では通貨の暴落が起こらないということを論じています。この議論もおもしろいものでした。ヘッジファンドが通貨アタックを開始した場合でも、円安になるだけで、景気が回復してしまうとのことです。したがって、日本への通貨アタックはないとしています。
平常時には、この議論が成り立つと思いますが、しかし、非常時にも同様なのか、乙は自信がありません。非常時というのは、財政破綻・日本国債暴落が起こった場合です。
第4章「為替レートはどのように動くのか?」もおもしろかったです。p.133 によれば、為替レートは2国における将来の物価についての予想の格差の変動によって動かされているとしています。データで示されているので、説得力があります。「修正ソロスチャート」というのは、初めて見ました。おもしろい話です。
第5章「為替レートは何が動かすのか?」は第4章の続きのような感じです。
第6章「円高の正体、そしてデフレの“真の”正体」は、今の日本ではマネタリーベースが不足だとして、日銀があと 28.8 兆円を追加すればいいとしています。こんな簡単な話なのか、こういう結論でいいのか、乙はよくわかりませんでした。納得しがたい面があるということです。こんな簡単な話なら、政府なり日銀なりがちょいと政策を変更すればできてしまう話です。そんな話なのでしょうか。円高にしても、デフレにしても、いろいろなことがからんでいて、簡単に割り切れるものではないように感じているのですが、どうなんでしょうか。
著者のようにすっきり考えられたらうれしいのですが、……。
いずれにせよ、円高問題に興味のある人は読んでも損はしないと思います。
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