この本では(これ以降もそうですが)「ゴミ投資家」が「小富豪」に昇格しています。きっと、資産運用がうまくいって、資産が増加したのでしょうね。まずは、著者の方々に「おめでとう」と申し上げます。
本書は、ページ数からいうと、オフショアバンク一つの紹介とオフショア・ファンドの検索サイト三つ(それに一つのオフショアファンド会社)の使い方がメインです。
詳しい目次は
http://www.panrolling.com/books/alt/taxhaven.html
にあります。
例によって、記述は大変詳しく、本書を読むだけで、オフショアバンクの口座開設とオフショア・ファンドの購入ができそうに思います。
しかし、乙は、ここまで詳しく書く必要があるのだろうかという疑問を感じました。本書の紹介部分に書いてある内容は、WWW にアクセスすれば(そして英語が読めれば)すぐわかりそうなことばかりです。残念ながら、本書は外形的な厚さはあるものの、内容的には比較的薄いといわざるを得ませんでした。
ただし、詳しく書いてあるだけに、本書によって、オフショアバンクやオフショアファンドが自分にとって必要なものか否かを判断するには充分です。乙の場合、アビーナショナル・オフショアに口座開設する必要性はほとんどないということがわかりました。それ以上に、HSBC 香港がかなり使いやすい銀行であることが再認識されました。
Part 1(オフショアバンク編)でいうと、
pp.49-116 口座概要・開設編 アビーナショナル・オフショア
pp.117-161 口座活用編 アビーナショナル・オフショア
の2箇所は、オフショアバンクの紹介です。さっと斜め読みしてもいいところだと思います。
Part 2(オフショアファンド編)でいうと、
pp.233-264 スタンダード&プアーズ・ファンドサービス
pp.265-296 フィナンシャルタイムズ・コム
pp.297-330 モーニングスター(イギリス版)
pp.331-352 インベステック・アセット・マネジメント
の4箇所は、オフショアファンドの検索サイトおよびファンド会社の紹介です。ここもさっと斜め読みしてもいいところだと思います。
そうすると、本書で残るところ(読むべきところ)はかなり少なくなります。
pp.16-39 海外投資の基礎知識
pp.41-45 オフショアバンクの選び方
pp.162-202 日本からの海外送金、個人小切手、海外投資の税金FAQ
pp.204-232 オフショア資産運用FAQ
あちこちにあるコラム(目次で調べられます)
だけを読んでもいいのではないでしょうか。これらの箇所は読む価値があると思います。
以下、乙がおもしろく思ったところを3ヶ所ほどピックアップしておきます。
p.36 オフショアの銀行はシンプルで、普通預金と定期預金だけがあり、インターネット取引に適しているとのことです。オフショア銀行がインターネット専業バンクに似ているという指摘はおもしろいと思いました。
p.63 コラムですが、「単独名義の口座で本人が死亡したら」があります。これは大変重要な問題です。これに関しては、インターネットの普及で、この問題がかなり改善されたとのことです。ログインIDとパスワードを相続人に渡せばいいということで、乙もこれを意識しています。
p.202 「将来、日本国内で使う予定の資金は海外に出さず、国内で運用したほうが合理的です。」とあります。海外投資の解説書にこういう文言が出てくるとは思いませんでした。この点に関しては、乙は若干違った意見を持っています。15年ほど海外で運用した後、国内に一部戻すつもりですが、かなりの部分は戻さずに、子どもに譲ることを考えています。子どもも国内に戻すことなく海外での運用を続けるでしょう。それでいいと思います。本当に必要になったときに一部を国内に戻す程度でよくて、大部分は海外に置いたままにしようと考えています。まあ、これは「日本国内で使う予定の資金」ではないといえますかね。
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