目次が
http://www.gihyo.co.jp/books/syoseki-contents.php/4-7741-2614-4
にあります。
2ページで1項目について書くというスタイルで、各項目ごとに必ず一つの数字をあげて説明しています。その意味でタイトルに偽りはありません。しかし、ところどころ無理に数字として表現しているところもあります。たとえば、p.128「目論見書は何部で構成されている?」に対して「2部」と書いてあります。確かに、第1部の証券情報と第2部のファンド情報で、あわせれば2部であり、間違いではありませんが、「数字で表す」ということは、大小関係などがはっきり分かるからそうするのであって、その意味では、ここでいう二つというのは2種類ということであり、それぞれを説明すれば終わってしまいます。つまり、もともと「数字」には関係ないところなのです。こういった記述があちこちにあるので、乙は、ちょっとどうかと思いました。
ただし、本書は、投資信託の概説書と考えれば、よくできていると思います。
乙が読んでいくつか面白かったところを書き抜いておきます。
p.10 日本の投資信託は約 2610 本だそうです。大した数ではないのですね。1995 年ころは 6300 本を越えていたのに、どんどん減少してしまいました。投資環境がそれだけ悪化しているということでしょうか。
p.16 日本では1年間に約 170 本のファンドが新規設定されるとのことです。次々設定され、次々償還され、多産多死型だとのことです。これでは、長期運用は望めないですね。
p.23 投資信託の独立系の運用会社は、たった3社だけなんですね。こんなに少ないとは思いませんでした。さわかみファンド
http://otsu.seesaa.net/article/14016027.html
ありがとう投信
http://otsu.seesaa.net/article/14110930.html
それに、スパークス・アセット・マネジメント投信
http://www.sparx.co.jp/publicfund/
だそうです。乙としては、ここが数十社くらいはほしいところです。日本では投信が日陰者扱いされているし、よい意味での競争が起こらないことがわかります。
p.34 アメリカの投資信託の規模が721兆円で、日本の18倍だそうです。実に大きいものです。このくらいないと、正常な投信の発達は望めないでしょう。
p.49 さわかみファンドは約 300 銘柄の株を組み入れていますが、これは多いほうなんですね。インデックス・ファンドの保有銘柄が多いのは当然ですが、アクティブ・ファンドの場合は、ずっと少なくなります。だいたい100から300くらいだとのことです。バイ・アンド・ホールド戦略を採用する場合、そんなにたくさんの企業を調査するわけにはいかないでしょうから、まあ妥当な銘柄数というのがあるのだろうと思います。逆にいうと、さわかみファンドは、銘柄選択の目があまりないのかもしれません。
p.55 ライフサイクル型ファンドというのがあるんですね。2010年までとか、2030年までとか、時期を事前に決めておいて、株や債券の比率を次第に変えていくというファンドです。個人投資家の場合、年を取ればリスクが取れなくなるということを組み込んだファンドというわけです。乙は、自分で買うつもりはありませんが、面白い考え方だと思いました。
全体として、投資信託の入門書としてよく書けていると思います。金融機関から説明を聞くよりははるかに有意義です。
【関連する記事】
- 香川健介(2017.3)『10万円からできる! お金の守り方教えます』二見書房
- 大江英樹、井戸美枝(2017.2)『定年男子 定年女子』日経BP社
- 天達泰章(2013.6)『日本財政が破綻するとき』日本経済新聞出版社
- 安間伸(2015.11)『ホントは教えたくない資産運用のカラクリ 投資と税金編 ..
- 橘玲(2014.9)『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 2015』幻冬舎
- 橘玲(2014.5)『臆病者のための億万長者入門』(文春新書)文藝春秋
- ピーター・D・シフ、アンドリュー・J・シフ(2011.6)『なぜ政府は信頼できな..
- 小幡績(2013.5)『ハイブリッド・バブル』ダイヤモンド社
- 吉本佳生(2013.4)『日本の景気は賃金が決める』(講談社現代新書)講談社
- 川島博之(2012.11)『データで読み解く中国経済』東洋経済新報社
- 吉本佳生(2011.10)『日本経済の奇妙な常識』(講談社現代新書)講談社
- 野口悠紀雄(2013.1)『金融緩和で日本は破綻する』ダイヤモンド社
- 吉田繁治(2012.10)『マネーの正体』ビジネス社
- 午堂登紀雄(2012.4)『日本脱出』あさ出版
- ウォルター・ブロック(2011.2)『不道徳な経済学』講談社+α文庫
- 内藤忍(2011.4)『こんな時代を生き抜くためのウラ「お金学」講義』大和書房
- 瀬川正仁(2008.8)『老いて男はアジアをめざす』バジリコ
- 増田悦佐(2012.1)『日本と世界を直撃するマネー大動乱』マガジンハウス
- 藤沢数希(2011.10)『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門..
- きたみりゅうじ(2005.10)『フリーランスを代表して申告と節税について教わっ..