2006年11月02日

中村芳子・馬養雅子(2005.12)『投資信託 知って得する数字のカラクリ』技術評論社

 乙が読んだ本です。
 目次が
http://www.gihyo.co.jp/books/syoseki-contents.php/4-7741-2614-4
にあります。
 2ページで1項目について書くというスタイルで、各項目ごとに必ず一つの数字をあげて説明しています。その意味でタイトルに偽りはありません。しかし、ところどころ無理に数字として表現しているところもあります。たとえば、p.128「目論見書は何部で構成されている?」に対して「2部」と書いてあります。確かに、第1部の証券情報と第2部のファンド情報で、あわせれば2部であり、間違いではありませんが、「数字で表す」ということは、大小関係などがはっきり分かるからそうするのであって、その意味では、ここでいう二つというのは2種類ということであり、それぞれを説明すれば終わってしまいます。つまり、もともと「数字」には関係ないところなのです。こういった記述があちこちにあるので、乙は、ちょっとどうかと思いました。
 ただし、本書は、投資信託の概説書と考えれば、よくできていると思います。
 乙が読んでいくつか面白かったところを書き抜いておきます。
 p.10 日本の投資信託は約 2610 本だそうです。大した数ではないのですね。1995 年ころは 6300 本を越えていたのに、どんどん減少してしまいました。投資環境がそれだけ悪化しているということでしょうか。
 p.16 日本では1年間に約 170 本のファンドが新規設定されるとのことです。次々設定され、次々償還され、多産多死型だとのことです。これでは、長期運用は望めないですね。
 p.23 投資信託の独立系の運用会社は、たった3社だけなんですね。こんなに少ないとは思いませんでした。さわかみファンド
http://otsu.seesaa.net/article/14016027.html
ありがとう投信
http://otsu.seesaa.net/article/14110930.html
それに、スパークス・アセット・マネジメント投信
http://www.sparx.co.jp/publicfund/
だそうです。乙としては、ここが数十社くらいはほしいところです。日本では投信が日陰者扱いされているし、よい意味での競争が起こらないことがわかります。
 p.34 アメリカの投資信託の規模が721兆円で、日本の18倍だそうです。実に大きいものです。このくらいないと、正常な投信の発達は望めないでしょう。
 p.49 さわかみファンドは約 300 銘柄の株を組み入れていますが、これは多いほうなんですね。インデックス・ファンドの保有銘柄が多いのは当然ですが、アクティブ・ファンドの場合は、ずっと少なくなります。だいたい100から300くらいだとのことです。バイ・アンド・ホールド戦略を採用する場合、そんなにたくさんの企業を調査するわけにはいかないでしょうから、まあ妥当な銘柄数というのがあるのだろうと思います。逆にいうと、さわかみファンドは、銘柄選択の目があまりないのかもしれません。
 p.55 ライフサイクル型ファンドというのがあるんですね。2010年までとか、2030年までとか、時期を事前に決めておいて、株や債券の比率を次第に変えていくというファンドです。個人投資家の場合、年を取ればリスクが取れなくなるということを組み込んだファンドというわけです。乙は、自分で買うつもりはありませんが、面白い考え方だと思いました。
 全体として、投資信託の入門書としてよく書けていると思います。金融機関から説明を聞くよりははるかに有意義です。


【関連する記事】
posted by 乙 at 04:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック