2006年11月06日

渡辺賢一(2005.9)『大事なお金は香港で活かせ(改訂版)』同友館

 乙が読んだ本です。2002年に出た本の改訂版です。
 タイトル通りの本です。まあ入門書といったところでしょうか。
 p.12 読み始めてすぐに、邦銀のサービスの悪さが5点指摘されます。
@営業時間が短い
A土曜日は休業
BATMは午後6時以降に利用すると余分な手数料がかかる
C外貨両替の手数料が高い
D英語がまったく通じない
 これら5点は香港では全然問題になりません。乙も、邦銀と HSBC 香港を利用していますので、うなずけるところが多かったです。日本の銀行の「遅れ」はどうしようもありません。一番いいのは「使わない」ことだと思います。(日本で生活する以上、給与振り込みや公共料金の引き落としで使わないわけにはいきませんが。)
 pp.59-62 香港には悪徳業者もいるという話です。それはそうでしょう。世界中に変なヤツはいます。問題はそれに引っかかるかどうかということです。個人が銀行口座を開設する程度なら、悪徳業者に引っかかることはほとんどないと思いますが、こういう事例は参考になります。
 p.77 香港では HSBC が一番だということです。著者がいろいろ経験した上での判断ですので、うなずけると思います。
 p.158 香港ドルの口座から日本でお金を引き出すときは、ATM が一番いいという話が出てきます。乙は、それは違うだろと思いました。ATM では、1回25香港ドルの手数料がかかります。そして p.103 にあるように1日では2万香港ドルまでしか引き出せません。約30万円です。だいたい、けっこうなコストをかけて海外に持ち出した自分の金を引き出すのですから、30万円くらいで済むわけがありません。30万円の金が必要なときは日本の銀行を使うべきです。どうせなら100万円ないしそれ以上を引き出すことになるでしょう。とすると、1日30万円という制限はかなりきついことになります。120万円(1万米ドル)だと4日かけて毎日ATMに出かけなければなりません。手数料は合計で100香港ドルかかります。だったら、そのコストで、HSBC から日本の銀行の自分の口座に送金したほうがいいのではないでしょうか。海外送金手数料は100香港ドルです。そもそも、この話は、香港ドルをメインにして投資している人の場合に当てはまる話で、乙のように米ドルやユーロで投資している人間には当てはまりません。米ドルやユーロから香港ドルに両替して(この段階で為替手数料がかかります)それを円で引き出す(この段階でもう一度為替手数料がかかります)というのは不利な話です。乙は、(1万米ドルないし1万ユーロ単位になりますが)FXを利用して日本円に戻すことを考えています。
http://otsu.seesaa.net/article/19378324.html
 p.195 HSBC でファンドを買うときの手数料ですが、5.25% かかります。それを「1000米ドルの投資なら、52米ドル50セントになります。」と書いていますが、それは違います。1000米ドルでファンドを購入すると、49米ドル88セントの手数料が引かれて、950ドル12セントがファンド購入に充てられるのです。49.88/950.12=0.0525 です。ここは著者の計算違いです。この計算法は、HSBC に限らず、どこでも同様に計算されます。(ごく一部に、1052ドル50セントを支払う場合があります。)もしかすると、著者はファンドを購入したことがないのかなどと疑ってします。(乙の疑いすぎでしょうが。)
 p.197 HSBC では、オフショアファンドが銀行窓口でしか買えないという話です。これは、この本の最大の間違いです。乙は、HSBC のネットバンキングでオフショアファンドをいろいろ買っています。乙の HSBC の口座開設は2005年6月でしたが、最初からネットバンキングで買えました。この本は2005年9月刊行ですが、とんでもない間違いを書いています。これを読んで HSBC での口座開設をあきらめる人がいるとしたら、大問題ですし、HSBC 関係者が日本語を読めたら(日本に支店があるのだから日本人が雇用されているでしょう)抗議が来るレベルの問題です。この本は、絶版にし、この部分を書き直して次の改訂版にするべきです。
 というわけで、ここまで読んで乙はびっくりしました。この本は読むべきではありません。


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posted by 乙 at 04:42| Comment(2) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ATMの話ですが、本音としては、ATMで引き出すと送金記録が残らないということでしょうね。実際には、日本の銀行にも手数料を支払わなければならず、これが非常に高い(3,000円−5,000円)ため、低額の送金ですと、日本の銀行に送金するというのもコスト的には割りに合わないものがあります。


ファンド手数料の計算ですが、1,000米ドル分のファンドを購入すると考えれば、誤りとまではいえないのではないでしょうか?

HSBCもオンラインでファンドを購入できなかったことがあったらしいので、昔のままの記載で出版してしまったものと思われます。新版になっているのであれば、改定すべきですね。
Posted by PALCOM at 2006年11月14日 21:27
PALCOM様、コメントありがとうございます。
 ATM の「ホンネ」を教えていただき、ありがとうございました。なるほど、隠れた(大っぴらには言えない)メリットがあるのですね。ATM の引き出し限度額が今の2倍くらいあれば、かなり実用的になるのに、残念です。
 日本への送金もよく考えて行わないと、手数料がかなりかかってしまいますから要注意ですね。乙の e-kawase 利用策は、会社に尋ねてこの方法でできることは確認してあるのですが、まだ一度も実際に行っていないので、詳細はわかりません。
 ファンドの手数料については、やはり、実際の申し込み方を基準にするべきで、WWW 上の操作にしても、1000米ドル分の購入のときは、普通は「1000ドル」と入力するのですから、渡辺氏の計算法は間違い(少なくとも不適当)と言えると思います。
 HSBC でオンラインでファンドが買えなかったというのは知っていますが、相当に古い話ですね。私としては、せっかく改訂版を出したのに、それが古い記述だったことに憤慨しているわけです。
Posted by at 2006年11月15日 01:01
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