http://www.panrolling.com/books/gr/kaigai.html
に概要と目次があります。本文の一部が読めます。
ちなみに、このページには「2005年9月21日発売」とありますが、本の奥付には、「2005年10月3日 第1刷発行」とあります。きっと、発行する前に発売していたのでしょう(笑)。
本書は、香港上海銀行、スタンダードチャータード銀行、ハンテック証券での口座開設とその利用法を中心に書かれています。
本書の記述内容は、適度な詳しさであり、読みやすく、これから口座開設を行う人には適切な「マニュアル」となると思います。
乙が気が付いたことを中心に、いくつかコメントします。
p.42 (2) HSBCパワーバンテージの投資用口座の開設ですが、まず申込書の URL が違います。(きっと、本書の刊行後、変更されたのでしょう。)次が正しいものです。
http://www.banking.hsbc.com.hk/hk/personal/forms/pdf/personal/p008.pdf
ちなみに、この書類は、書類のダウンロードサイト「Download Forms and Documents」
http://www.hsbc.com.hk/1/2/hk/investments/download
の中の「Integrated Account - Investment Services Application Form」を指します。しかし、これは「Integrated Account」の話であり、本書のものとずれています。(ファイル名が一致しているので、乙はこれかなと思いました。)
書類のダウンロードサイトの中には次の3種類の書式があります。
Integrated Account - Investment Services Application Form
Integrated Account Opening Form - Investment Services
Personal Investment Account Opening Form
この中のどれを使えば口座開設ができるのか、乙にはよくわかりませんでした。乙が口座を開設したときの書類の控えもどこかにいってしまいましたし……。
このように、時期が変わると、銀行の書類の書式も、そのありかも、どんどん変わってしまうので、本書のような「マニュアル本」はすぐに古くなってしまう面があります。
さて、本書の p.43 では、HSBCパワーバンテージについて、要約するとこう書いてあります。「株や投信を買う場合、香港ドル普通預金か香港ドル当座預金でないと、買えない。外貨預金での決済はできない。」これは間違いです。現に、乙は、HSBC 香港で米ドルやユーロで投信を買っていますから。
これは、HSBC が用意した pdf ファイルの記載がまずいのであって、著者は、それを忠実に訳しただけだと思いますが、それにしても、誤解を招く表現だと思います。先の言い方でいえば、株は香港ドルでなければ買えませんから、この記述でいいのですが、投信はいろいろな通貨で購入できますから、「や投信」を削除しなければなりません。
p.86 スタンダードチャータード銀行では、エクセルバンキングとイージーバンキングというのがあるという話が出てきます。口座維持手数料が無料となる残高が両者で違うということはわかりましたが、肝心の二つのサービスの違いが何かについては、まったく書かれていません。ここはもう少し補ってもよかったのではないでしょうか。
p.93 「HSBC で株を買う必要はありません(香港の地場証券はほとんどが HSBC よりも手数料が安いのです)」とあり、香港で株を買う場合に地場証券を利用することを薦めています。では、実際はどうなのでしょうか。
HSBC では、株の売買を行うと 0.25% の手数料(最低 100 HKD=1500円)がかかり、その他に、口座管理料として、半年で 100 HKD=1500円がかかります。
http://www.hsbc.com.hk/hk/personal/invest/sec/local.htm
本書で紹介されるハンテック証券の手数料はというと、p.111 に書いてありますが、0.2〜0.5% とあります。取引高に応じて手数料が変わるようです。とすると、乙のように、小口分散投資で、かつバイ・アンド・ホールドで長期に保有しようとすると、あまり取引しないことになりますから、もしかして、最高額の 0.5% かかるのではないでしょうか。
この手数料については、ハンテック証券のホームページに記載があります。
http://www.hantec.com.hk/hantec/sec_en/sec.do?counter_sec='a'
Brokerage のところには「According to client's Brokerage Fee」とあり、手数料が明示されていません。
かろうじて「Min $80.00」とあるのは確認できましたが、一概に、ハンテック証券の手数料が HSBC よりも安いとはいえないように思います。(ただし、口座維持管理料がかからない点は、ハンテック証券のほうが安いと言えます。)
なお、ハンテック証券では、p.110 にあるように、オンライントレードは、できるけれどもコストが高いということで、オンラインの株売買は実用的ではありません。この先、これが無料でできるようになることを期待したいと思います。
p.117 日本の証券会社から香港の証券会社への株式の移管はできないと書いてあります。乙は知りませんでした。たぶん、そうだろうとは思いましたが。
p.128 □の中の 3 yr のところ、226万→326万のミスプリがあります。ま、文脈から単なる誤字であることが明らかですから、ほとんど問題はありません。
本書は、富裕層でなく、一般的なサラリーマンが海外投資をはじめる場合に有用なものだと思います。海外投資をはじめるなら、読んでおいて損はないでしょう。
本書もおもしろいですが、著者のホームページ(kz@銅鑼湾 というペンネームで書かれています)
http://kowloon.livedoor.biz/
を訪ねるのもいいと思います。
2007.1.13 追記
この話の続きを
http://otsu.seesaa.net/article/31320494.html
に書きました。
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