本書の内容をひとことで言えば「インデックス・ファンドはこんなにもすばらしいので、これに投資しましょう」ということです。本書は475ページもあって、しかも図表が豊富で、読むのにかなり時間がかかりました。
著者のボーグル氏は、バンガード社の創設者であり、自らインデックス・ファンドを作って運用してきた人です。
本書にはいろいろとおもしろいことが書いてあり、投資を考える上で大いに参考になります。
p.19 マーケット・タイミング戦略(相場の動きを予想して、株や債券・キャッシュの比率をダイナミックに変えるやり方)は多くの投資家にとって逆効果だと述べています。乙のちょっとした経験でも、確かに、タイミングを見計らうのはむずかしいと思います。相場は音もなく変わっていくのです。
p.70 「低コストはリターンを増幅する」ということです。それが予想外に大きな影響を持つということをデータを示しながら詳述します。そして、p.78 まで、コストが大事だということを強調します。
pp.142-143 「三目並べ」が出てきて、ゲームの話が展開されますが、乙には、これが何を意味しているのか、さっぱりわかりませんでした。
p.180 「時間とともにコストはリターンを損なう」ということです。長期投資すれば、形成される資産価値にはコストがきわめて大きな影響を持っていることが示されます。
p.183 グローバル投資を否定しています。著者はアメリカ人ですから、アメリカ国内の投資だけで充分だとしています。でも、この話を日本人から考えると大変おもしろいです。日本国内の投資だけに限定していいでしょうか。それともアメリカへの投資を積極的に考えるべきでしょうか。なかなか難しい問題です。
p.216 ファンド・オブ・ファンズはいかにダメかが述べられます。余計なコストがかかるのでダメだという簡単な話です。
p.287 アクティブ・ファンドの高い回転率は、積極運用の象徴のようなものですが、それが税金面でも不利になることを説いています。
p.373 ファンドの取締役の報酬が高いという話です。あまり大した仕事もしていないのにとのことです。そうかもしれません。
p.375 各種ファンドの手数料が現在に至るまで次第に高くなってきたことを述べます。実にけしからん話です。
p.395 ミューチャル・ファンドが運用する側にとっていかに儲かるかを述べています。しかし、ファンドが儲かるということは、投資家は損をしている可能性が高いのです。要注意です。
p.471 監訳者の井手正介氏の「あとがき」ですが、アメリカのファンド業界、年金制度などの簡略な解説になっており、著者が当然としていることを、いわば日本の読者向けに補って書いていてくれるので、これも、本書を理解する上で大いに参考になります。せっかくなら、こういうのを最初に持ってきても良かったかもしれません。(出しゃばりすぎだといわれかねないですが。)
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