著者はユナイテッドワールド証券の会長で、自分の歩んできた道と重ねながら、自分が会った香港の大富豪たちの投資のしかたを書いています。
7つの鉄則は、おもしろい見方だと思いました。
その5番目に「一極集中投資こそ王道」というのがあります。分散投資ではダメで、一極集中投資がいいという話です。これは、マックス・ギュンター(2005.12)『マネーの公理──スイスの銀行家に学ぶ儲けのルール』日経BP社
http://otsu.seesaa.net/article/23230330.html
に書いてあったことと同じです。
実際、著者が会った大富豪は一極集中投資をしたのでしょう。彼らはそれで成功したわけです。では、みんながそういう方法を採用していいのでしょうか。乙の場合、どうするべきでしょうか。考えてみると、乙はまったく自信がありません。一極集中投資は、ここに賭けていいと判断した場合に行うのだそうですが、その判断がきわめてむずかしいと思います。投資の勉強をいくらしても、なかなか決心は付かないものでしょう。多くの個人投資家も同様でしょう。世界中の情報を分析し、ここに投資するべきだと自分で決断できるような投資家がいるのでしょうか。たぶん、そうではないと思います。
賭けて勝った人は現にいますし、林氏はそういう人に会ったのでしょう。しかし、賭けて負けた人もいたはずです。そういう人は舞台から消えるだけですから、会おうと思っても会うことはできません。一握りの大富豪の陰で、大富豪を夢見て失敗してしまった人はどれくらいいるのでしょうか。もしかしてかなりの数がいるのではないでしょうか。それが問題です。我々は「失敗する側」になることは許されません。そう考えると、やはり、一極集中投資は、多くの人にとって採用するべき戦略ではなさそうに思います。
なお、本文中に出てくる話を読んでいると、香港の大富豪たちがホントに一極集中投資をしているのかどうか、疑問に思います。あるときあるところにポンと大金を出して大きく儲けているのは事実でしょうが、それでも、その投資金額は全資産のごく一部のように思えてなりません。
p.83 「日本人だから日本株」というのは違うといいます。確かにそうで、p.153 以降で説かれるように、国境を越えて投資するのは当然です。乙は、日本株を若干持っていますが、今は成績も振るわず、今後の見通しも明るくないため、若干縮小しようかなどと考えています。
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