橘氏は以前『マネーロンダリング』というフィクションを書いていますが、
http://otsu.seesaa.net/article/24967688.html
それとはまったく関係ありません。
本書はノンフィクションで、現実にあった話を取材しており、その意味で迫力があります。
直接投資に関係するわけではありませんが、個人としてもマネーロンダリングと無関係なままに生活することはできないということがわかります。
全体として、非常に示唆的であり、有意義な1冊だと思います。
p.54- プライベートバンクとはどういうものかが記述されています。乙には関係ないところですが、富裕層はいるところにはいるものだということですね。
p.61-80 合法的にマネーロンダリングする方法が書いてあります。届けないで海外送金する方法があるんですね。
p.99 プライベートバンクは、ことばとしてはすばらしい響きを持つけれども、その実態は幻想にすぎないと述べています。まあそうでしょう。
p.117 コルレス口座は治外法権だと書いてあります。国家間の国境と、世界的な金融ネットワークの間で、こんな不思議なことが起こっていたんですね。乙は知りませんでした。
p.118 アメリカがドルを支配しており、国際送金がドルで行われてるので、アメリカが北朝鮮を経済的に封鎖することができるという話です。それはそうなのですが、だったら北朝鮮もドルで送金するのでなく、別の通貨で送金すればいいのにと思いました。人民元は開放されていないので、使えないですが、ユーロくらいならまず大丈夫そうに思いますが、どうなんでしょうか。
p.184-193 ハンドキャリー(現金を直接海外に運ぶこと)と地下銀行について書いてあります。ハンドキャリーの一部は乙も自分の目で見ましたが、けっこうすごいものがあります。地下銀行の仕組みについてもわかりやすく説明してありました。こういう便利さがあったら、地下銀行がなくなることはなさそうです。
p.197 日本の株式市場で大きな力を持っている「外国人」は、実は日本人だという話です。日本人がオフショアに会社を作って、そこから、たとえば香港の銀行に指示を出して日本株に投資すると、日本人が投資しているとは絶対にわからないわけで、なるほどと思いました。
p.209 相続税を合法的にゼロにする方法が書いてあります。乙は、そういうことが必要になるほど相続税を心配しているわけではありませんが、それにしても、数十億円もの資産を持っている人なら、こういうことを考えなければなりませんね。
p.216 日本に税金を払わない究極の方法として、他国の国籍を取得する方法が述べられます。こんな「税金亡命」が考えられているなんて、すごい話です。
というわけで、全体に橘氏の豊富な知識が活かされており、読んでいてとてもおもしろいと思いました。こういう知識があるのとないのとでは、人生の送り方に差が出てくるように思いますし、世界的に起こっている各種の動きを理解するためには、こういう知識も必須のものだと思います。
乙としては、お薦めの本の1冊です。
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