割安株を買って、じっと保持するというやり方を説きます。その際、非常に具体的に割安度を算出する方法を説明しています。pp.68-93 です。この本を読めば、だれでも同じ計算ができるでしょう。問題は、そのようにして割安株を買ったとして、本当に儲かるかどうかです。これについては、実際にやってみなければ何ともわかりません。
もしかすると(数年前の)古い資料に基づいて、割安度を計算して、その後の株価の変動と突き合わせてみればいいのかもしれません。本書に書いてあるように、インターネットで無料でデータを集めて計算するというのは、過去の資料を探すのが非常にむずかしいと思いますが、古い会社四季報から計算するなら、十分可能なように思います。そのうち時間があったら、やってみたいテーマです。
乙がよくわからなかったところは、pp.94-99 です。3700社のデータを見ていくことは実質的に不可能だからという理由で、(PER や PBR を使って)事前にスクリーニングをするように説いている点です。
山口氏のやり方が完璧ならば、やはり 3700 社分の計算をして、割安度を計算し、たとえば割安度の高いものから順に買っていくという方法をとるべきで、安易にスクリーニングに頼るのはよろしくないと思います。割安度の計算方法はそんなに手間がかかるのでしょうか。乙は、大したことなさそうに思いましたが。
仕事を持っていると、そんなことをしている時間がなくて大変だとしたら、退職後の楽しみにしてもいいと思います。
むしろ、ある時点で 3700 社分のデータを作成して、その後の株価の変動を記録し、データ全体として分析してみると、この方法の特徴がもっとよくわかるでしょう。株価上昇を的中させる確率とか、割安度とその後の株価の相関とか、さらには、売り時の判断(どれくらい割高になったら売るべきかなど)までデータで検証できるのではないでしょうか。
年1回くらい、こんな計算をして、手元に記録しておくことで、ますますデータの有用性が高まります。ぜひ、こんなことをしてもらいたいものだと思います。(時間があれば、乙がやるのですが。)
スクリーニングのしかたにしても、3700 社分のデータを入力しておけば、だいたいどんな方針でスクリーニングすればいいかがわかるものと思います。
もしかしたら、山口氏はそういうデータ分析を全部やった上で、本に書くときは、そういうのを全部示さずにポイントだけを解説したのでしょうか。乙は、どうもそこまでやっていないように読めました。
3700 社に関する計算が大変であれば、乙だったら、ランダムに100社程度抜き出して、本書の計算をして、半年〜1年経ってどうなったかを見ると思います。それだけでも貴重なデータになるでしょう。
p.141 では、バフェット流の投資の考え方と、一般の個人投資家の違いを見事に説明しています。バフェットの会社があまりに巨大なので、回転率が低くなります(次々株の売買をするのでなく、買ったものをじっと保持します)が、昔のバフェットは、資金が少なかったので回転率が高かったし、個人投資家も回転率は高くていいとのことです。おもしろい説明でした。
読み終わって、乙は、山口氏のやり方に沿って、3700 社の計算をしてもいいなと思いました。普段は、仕事を持っているのでできませんが、さて、正月休みにでもできるでしょうかね……?
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