一読して、残念ながらほとんど何も得るべきものがないような読後感を持ちました。
220 の鉄則が書いてあるというわけですが、(そして実際番号が付いていて 220 個の「鉄則」が書いてありますが)大部分は精神論のようなことで、わかったようなわからないようなことばかりです。そもそも 220 個も「鉄則」があったら、覚えるだけで一苦労ですし、ましてやそれを適用しながら株の売買をするとなると、ほぼ不可能です。
そのような、著者の考え方を典型的に表すのは、p.75 のことばです。「カンでいくしかない」というのです。これでは、本書を読んでも突き放されたような気分にしかなりません。
著者は長期投資でなく、短期投資をすすめます。p.72 では、2ヶ月程度で売ることをすすめます。そして少しずつ利食いしながら継続的に利益を出すことを念頭に置いているようです。しかし、こういうやり方だと、どうしても売買手数料が高くなるので、それを継続的に上回ることができるかどうかが一番の問題です。
「鉄則」に具体的な数値で示される部分がほとんどないこととあわせて考えれば、この本にしたがって株の売買をやっても、うまく行くとは限りません。
p.126 からの第4章で、「現物つなぎ売り」という考え方が示されます。若井氏はこれを「革命的」と呼びますが、そんなこともないでしょう。この手法は、株価が下がってしまった株を持っているときには、ちょっと株価が上がったタイミングで売ってしまい、その後、大きく下がったところで同じ銘柄を買い戻すというものです。まあ、売るときに高く、買うときに安くですから、合理的な話です。問題は、そういう株でも、売った後に下がっていくとは限らないということです。売った後上がるか下がるかはわからないと考えるべきです。下がっていくことがわかるならば、誰でも儲けられます。実際はそうでないから、なかなかうまく行かないわけです。
乙は、こういう本は読むだけ時間のムダであるように思いました(失礼!)。こういう本を買ってしまったことが悔やまれます。
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