2007年02月05日

小幡績(2006.6)『ネット株の心理学』(MYCOM新書)毎日コミュニケーションズ

 乙が読んだ本です。
 この本は、独自の株式観を展開しています。その意味ではおもしろい読み物といえましょう。ただし、小幡氏がそう主張しているということであって、その裏付けとなるものは一切示されません。乙は、この本に書いてあることをそのまま信じる気持ちにはなれませんでした。
 第1章(pp.19-52)は「株式投資の常識のうそ」ということで、今まで常識とされてきたものが実は違うと述べています。おもしろい見方ですが、あくまで一個人の見方だということであり、それ以上のものではありません。
 たとえば、p.43 では、チャートにも意味があるという主張が述べられています。乙はこういう言説は信じません。
 第2章(pp.53-93)は「投資家心理で解き明かすネット株取引のなぞ」という章です。p.71 から p.84 までライブドアショックがどんなものだったかを、その中にいる個人投資家の心理に沿って描いています。おもしろい見方であり、読み物です。しかし、小幡氏がこのように述べていても、それは、その流れの中で個人投資家が本当にそう考えていたということではありません。本書執筆時には、事後的にライブドアの株価がどうなったかが完全にわかっています。であれば、その情報を生かしてさまざまな「ドラマ」を作ることができるでしょう。でも、それはその流れのまっただ中にいた人々の心理とは別物です。
 p.88 では、バブルに突っ込むのは投資の王道だということで、バブルは歓迎するべきものととらえています。これまたおもしろい見方です。しかし、一番の問題はバブルがいつ崩壊するかわからないことです。売り時(逃げ時)の判断がきわめて難しいと思います。その意味では、大変危険でもあります。
 第3章(pp.95-132)は「ネット株取引の醍醐味」ということでバリュークリックジャパンの株式100分割でみんなが大儲けした話が描かれます。それはそうかもしれませんが、株価が激しく上下するときは、儲ける人がいる一方で損をする人もいるわけで、こういう状況の中では、乙は自分が儲ける側になれる自信がありません。乙は「触らぬ神にたたりなし」と考えます。
 第4章(pp.133-148)は「デイトレはなぜ儲かるか?」ということを述べています。確かに、デイトレにはそれなりのメリットがあると思います。しかし、株式市場に集まっている無数のデイトレーダーの全体をみれば、プラスの人もいる一方でマイナスの人もいるはずで、その平均は東証株価指数(の変化の方向)のようになるのではないでしょうか。平均値に動きがなければ、デイトレの場合でも半数が儲けているものの半数は損失を出しているものと推定されます。この章では、デイトレのプラス面だけを描いており、マイナス面を全く見ていない点が気になります。
 第5章(pp.149-166)は「ネット株取引は、なぜ大流行したのか?」という章で、手数料が安いこと、個人投資家に情報武装させたこと、注文が簡単にできることなどをあげています。この章は乙も賛成するところです。
 第6章(pp.167-184)は「株はなぜ上がるのか?」です。買う人がたくさんいるからだという説明です。まあ、これも一面の真理です。p.174 で企業の業績がいいからといって株価が上がるわけではないという話などは興味深く読みました。
 第8章(pp.211-245)では、株はゼロサムゲームだということが出てきます。だから、売る相手のことを考えよとのことです。そういう面もありますが、そもそも株は本当にゼロサムゲームでしょうか。乙は違うと思います。さまざまな市場参加者の全体を合計すると、若干プラスになるようにできているのではありませんか。
 最後まで読んで、ストンと終わってしまうことに驚きました。参考文献が一つも書いてありません。全部が著者のオリジナルなものだから書かなかったのでしょうか。しかし、それでは読者にあまりに不親切です。Ph.D を持っていて、本職は慶応大学の助教授とのことですから、参考文献の重要性はよくご存じのはずです。新書であっても、一切参考文献を書かないというのはあまりに極端なように思います。

 小幡氏のサイトがあります。興味のある方はどうぞ。
http://www.sekiobata.com/


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posted by 乙 at 01:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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