2007年02月19日

木村剛(2005.12)『最新版 投資戦略の発想法』アスコム

 乙が読んだ本です。
 全体は 439ページ+付録16ページで、比較的長いです。次のように区分されています。
 オープニング pp.14-55
 第1部 これができなければ投資家失格―準備編 pp.57-173
 第2部 財産形成のために知っておきたい投資理論―理論編 pp.175-271
 第3部 絶対に負けない投資戦略―戦略編 pp.273-373
 第4部 最小限の手間でできる財産防衛術―戦術編 pp.375-432
 クロージング pp.433-439
 オープニングでは、p.33 で「将来の危機管理が大事だ」という意見がおもしろかったです。これから何があるかわからないということですね。そのようなときにどう対処するかということです。少なくとも、そういう意識を持っていることが重要でしょう。
 第1部では、家計のバランスシートを作ろう、財産形成のベースを作ろう(2年分の生活防衛資金=現金を作ろう)、資産運用は副業だからメインの仕事をがんばろう、マイホームは買わず、住宅ローンは借りないようにしようといった話が続きます。乙にはかなり意外でした。投資の本だと思ったら、人生の心がけを述べるような内容だったからです。これが「準備」なんですね。
 p.87 では、節約は確実な運用手法だと説かれます。確かに、節約できないようでは投資がうまく行くはずがありません。p.116 仕事が一番大事だというのもその通りです。しかし、このあたりは、こんなにページ数を使って説くべきところでしょうか。著者の価値観の表れですが、このあたりの記述をもう少し短くしてもよかったのではないかと思います。p.131 では、株式投資本やマネー雑誌を時間のムダだと切り捨てています。それはそうかもしれませんが、そのような域に達するまでは、誰でもそういうものを読んで試行錯誤するのではないでしょうか。みんながこの本を最初に読むとは限りません。いろいろな情報があふれる中から、自分のやり方を見つけるしかないと思います。
 第2部では、経済学や投資理論、行動心理学などを説きます。乙としては、p.260 あたりのさまざまな行動心理学の研究結果が示されているところがおもしろかったと思います。
 第3部では、いよいよ著者の投資戦略が開陳されます。著者の書き方に反しますが、この部だけを読んでもいいかもしれません。乙もこの部を一番おもしろく読みました。
 p.276 三分割ポートフォリオが説明されます。国内株式、国債、外貨預金(もしくは外貨 MMF)です。従来のさまざまな分割法を知った上でこの三分割ポートフォリオを提案しているわけです。ただし、乙は、今の低金利では国債の魅力はほとんどないと思っていますので、著者の木村氏に全面的に賛成しているわけではありません。
 pp.284-301 では、株式の投資信託を否定しています。投信の手数料をかけてプロのファンド・マネージャーを雇うよりは、20銘柄程度の個別株を買うことを勧めるという立場です。これはこれで一つの立場ですが、20銘柄をうまく選ぶことができるでしょうか。乙は自信がありません。それよりはインデックス・ファンドや ETF のほうがいいように思います。
 p.318 個人が機関投資家よりも優れている点として、長期的志向が保てる点をあげ、たとえ株で大損していても、喜んで塩漬けにしておけばいいといいます。一生持ち続けるのが大事だというわけです。そして、太字で「つねに長期のスタンスで投資し、マーケットが最悪のときにもできる限り最大限投資する」という姿勢を述べています。20銘柄をこうして運用するんですね。簡単なようでなかなかできないでしょう。悪いニュースが出て株価が下がり始めたら、あわてて売ってしまいたいのが投資家の心理というものです。もっと下がることが明らかなときに(ホントは明らかとはいえないので)、それをじっと保持せよというわけです。心理的に抵抗があります。一度売って、下がったところで買い戻せばいいのではないかと単純に思います。実際は、思ったほど下がらないこともあるし、底でその株が買えるほど市場は甘くはないわけですが。
 pp.321 からデイトレは手数料がかかる分必ず損をするから、デイトレをするなと断じています。乙はデイトレをしない主義なので、納得しながら読みました。
 p.323 では、マーケットのタイミングを計って投資することをばかげていると否定しています。
 p.330 株は結婚と同じで、買ったらずっと一生保持せよと説きます。例えがおもしろかったです。
 第4部は、うまい話に惑わされないようにということで、あまり大した内容ではありません。
 全体として、とても真面目で良心的な本です。タイトル通りの内容で、この本を読んでおいて損はないと思います。おすすめできます。
 この本1冊を読むと、投資とは何か、実感できると思います。また、雑誌や本で、読んでもしかたがないものとはどういうものか、納得できるでしょう。乙は、この本を読む前に「オール投資」などという雑誌を買っていましたが、その問題点なども具体的に指摘されています。
 ただ、ちょっと冗長に思える部分もあったので、できたら 300 ページくらいにしてくれるとよかったと思いました。


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posted by 乙 at 02:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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