2007年02月23日

投資先の分散と通貨の分散

 乙がずっと誤解していたことを書いておきましょう。
 自分の資産は、いろいろなところのいろいろなものに分散して投資するべきだと思います。分散投資の考え方ですね。
 それとともに、通貨も分散するべきです。円だけで資産を持っていると、今後極端な円安が起こったりしたときに大打撃があるからです。世界の通貨事情を考えると、主要通貨といえば米ドルとユーロということになるでしょう。ですから、米ドル投資、ユーロ投資も考えるべきだということになります。
 乙の誤解というのは、上の二つをそのまま受け止めており、投資先も分散させるべき(世界中のあれこれに投資するべき)だし、通貨も分散させるべき(円だけでなく米ドルやユーロでも投資するべき)だと考えていたことです。しかし、これは少し違うと思います。
 仮に、フランスの株を考えましょう。当然ユーロで取引されています。日本円をユーロに替え、ユーロでフランス株を買うというのが(日本に住む日本人にとっての)通貨の分散です。同時に投資先も分散することになります。
 さて、フランス株に投資するファンドを日本の証券会社で円建てで買ったとします。このファンドは円建てですから(日本人の目で見ると)通貨は分散していないことになります。しかし、事実上ユーロ建ての資産を持っていることと同じことです。この場合、ユーロ高、円安が起こったら、このファンドの基準価額はどうなるでしょうか。当然、大きく上昇するはずです。つまり、通貨を分散させなくとも、投資先を分散させるだけで通貨を分散させたことと同じ効果があったことになります。
 こう考えると、資産を運用する通貨として、円の他に米ドルやユーロもそれぞれある程度の割合で保有するべきだという話は不必要になります。外貨が円に両替できなくなるような非常事態が起これば別ですが、まずそんなことにはならないでしょう。それは日本の輸出入が止まることと同じことですから、そうなれば日本は死にます。
 資産の全部を日本円のままにしておいても、海外への分散投資で間接的に通貨の分散も行っていることになります。
 一方、債券の場合は、事情がちょっと違います。フランスが円建ての国債を発行したとしましょうか。(そんなことは不必要だし、フランスがするわけはないと思いますが。)すると、その金利は、フランス国内の(ユーロの)金利ではなく、日本の(円の)金利になります。円建て債券ならば円の金利になるのです。いわゆるサムライ債ということです。このことから、債券の場合は、何に投資するかということ以上にどの通貨で投資するかということが重要になってきます。債券は一種の借金証書ですから、どの通貨で借金したか(利息はどの通貨で支払うか)ということが大事なわけです。
 前述のように、株式や不動産など、現物に対応した資産価値のあるものは、どの通貨で購入するかはあまり関係なく、「そのもの」があればそれで十分です。株式も、現存する企業の一部のことだと考えられますし、REIT も、不動産の一部だと言えます。
 以上のことから、次のような考え方になります。
(1)株式や不動産など、それ自体が価値を持つ場合は、投資するときどの通貨にするかはほとんど関係ない。
(2)債券に投資する場合は、どの通貨で投資するかが重要である。
 乙の誤解というのは、この2点を明確に区別していなかったことにあります。
 株式や不動産で投資する場合は、あまり通貨にこだわる必要はありません。通貨は何でもいいのです。どの国の何に投資するかが大事です。しかし、債券投資のときは通貨が大事であり、どの通貨で投資するかを考え、通貨の分散を考えるべきです。
 このことから、たとえば、ヨーロッパ株に投資する場合、アメリカでドル建てで投資できれば(実際できますが)それで十分であって、わざわざヨーロッパの証券会社に口座を開設してユーロ建てで投資する必要はありません。(やってもいいですが。)
 しかし、債券は別で、ユーロ建ての債券を購入する意味があります。また、ユーロで投資することが重要だというのは、債券の場合だということがいえるように思います。ユーロ建ての債券を日本で購入するものとしては、ユーロ MMF やユーロ BST を買うことなどがあります。
http://otsu.seesaa.net/article/31935728.html
 投資信託を通じて債券に投資することも、もちろん選択肢の一つです(手数料がかかりますが)。これだと、ユーロ建てかどうかなどと気にする必要がありません。
 いうまでもなく、日本での投資と海外での投資という違いは、投資先の分散や通貨の分散とはまた別ですし、日本人の投資と外国人の投資も別の話です。これらと上の話をごっちゃにしてはいけません。日本人にとっては、日本の証券会社でヨーロッパの株を買うことと、アメリカの証券会社でヨーロッパの株を買うことは別のことです。
 海外投資といった場合、(日本人が行うのですが)海外「で」投資する場合と、海外「に」投資する場合の両方の意味が混在しているように感じます。両者はきちんと区別して考える必要があります。
posted by 乙 at 05:23| Comment(3) | TrackBack(1) | 投資方針 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
乙様

別のコメントでも書きました通り、私は今通過をJPY,USD,EUR,GBPに分散しております。これは、ある投資顧問会社にオフショアファンドのポートフォリオの相談に行った時に、「為替リスクをヘッジするために通貨は分散すべき」と言われたからです。その時は迫力に押されて何も言えなかったのですが、後からよくよく考えてみると通貨はなんでもいいんじゃないか?USDで投資しようがEURで投資しようが、インドのインデックスETFの価値は同じではないか?と思うようになりました。

そのため、私は日本に多少の円を残して後は全部IBに預けて投資をするつもりです。必然的に通貨はUSDがメインになりますが、上記の通り、キャッシュポジション以外は為替のリスクはないと考えるからです。

米国が破綻したら終わりですが、そこはしばらくは目を瞑ろうかな?と、もう少し資産が増えたら、もっと安全な国に資産を分散させるつもりですが ^^;

ちなみに以下は国家リスクの分散の差異を指しているのですよね?

> 日本の証券会社でヨーロッパの株を買うこと> と、アメリカの証券会社でヨーロッパの
> 株を?買うことは別のことです
Posted by mizu at 2007年09月27日 02:07
mizu様
 
>ちなみに以下は国家リスクの分散の差異を指しているのですよね?

>> 日本の証券会社でヨーロッパの株を買うこと
>> と、アメリカの証券会社でヨーロッパの
>> 株を買うことは別のことです

 はい、国家リスクの違いも差異の一つです。しかし、それだけではありません。税金の違いもあります。証券会社とのトラブルが起こったときの解決法も違います。取引に使う言語の違いも大きいです。他にもあるだろうと思います。
Posted by at 2007年09月27日 05:44
乙様

トラックバックしていただきありがとうございます。「がんばらないで年20%増やす資産運用」ブログ管理人のsitaraです。

一年以上海外分散投資を続けていますが、投資先の分散と通貨の分散の問題に最近気付きました。

建てた通貨としては最適なバランスでも、結果として投資先が最適なバランスになっていないと意味ありませんね。

また立ち寄らせていただきます。
Posted by sitara at 2007年10月03日 01:51
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Excerpt: 以前のエントリーで野村證券での取り扱いが始まったと投稿したSP GSCI(TM)
Weblog: がんばらないで年20%増やす資産運用
Tracked: 2007-10-03 01:38