日本が膨大な国債を抱え、すでに破産過程に入っているという警告の書です。
そういう主張の本は、すでに何冊もあるので、主張自体が新しいとは言えません。しかし、そういう問題をどう位置づけるのか、解決策はあるのか、個人はどのような対策を考えればいいかといったことを考える上でヒントになればと思って買ってみました。
読了後、残念ながら乙の期待とはマッチしない本だということがわかりました。
第1章は「大蔵省から財務省へと続く「霞が関の官害」」ということで、官僚がいかにひどいことをやってきたかを述べています。p.16 では、告発の対象として3人の個人名を挙げ、現在の財政危機の「犯人」だと指摘しています。この章が一番迫力がある章だといえるでしょう。
第2章「歴史を遡ると見える「真実」」では、戦後のさまざまな流れを追い、なぜ日本が破産状態になったかを丹念に追いかけます。議論としては、わからなくもないですが、今の喫緊の問題を探るのに、こんなにさかのぼって考える必要があるでしょうか。
第3章は「激動の昭和初期に、何が起きたか?」と題し、さらに古い日本を見ていきます。そうして 120 年前から日本は構造を変えていないことを述べますが、そういわれても、現状の問題の解決に役立つとも思えません。
第4章「借金財政と40年論争」では、pp.95-118 にわたって、1988 年刊行の著書からの再録を入れています。昔から森木氏の主張が変わっていないことをいいたいのか、昔の意見が今でも通用することを示したいのか、乙にはわかりませんが、こういうのは不要ではないでしょうか。
第5章「消費税論争とバブルへの警告」でも、pp.127-155 に 1986-89 に書いた文章を再録しています。p.126 には、ご丁寧にも「昔の話だからと、読者諸氏は読み飛ばさないでほしい。」と書いていますが、乙は、残念ながら、読み飛ばしてしまいました。もちろん、一部は読みましたが、20年前の記述ですから、内容的に今の日本に当てはまる話ともいいにくく、読むのがつらいと感じたからです。読者は自分の時間を使って本を読むのですから、著者から何をいわれようと、自分のやり方で、自分のペースで本を読み進めることができます。
第6章「日本国「破産予測」の元祖として」は、さらにすっ飛んだ話が続きます。最終間氷期まで登場して、ずっとずっと長いサイクルを見るべきだと主張しているようですが、乙としては「話が違うだろ」と思わざるを得ませんでした。
第7章「日本再生への提言」は、話題がまた現代日本に返ってきます。いくつかの耳を傾けるべき提言を含みます。
最終ページの p.238 には、申し訳程度に参考文献が6点ほど挙げられています。刊行年が書かれていませんが、国会図書館で調べてみると、それぞれ、1981, 1984, 2006, 1969, 1974, 2006 です。う〜む。ビミョーです。
というわけで、第1章と第7章を読めば、この本を読んだことになりそうです。ならば、もっと圧縮してまとめることができるということになります。この本の値段は、定価 1500 円+税ですが、この価値はないと思いました。買って読んだ後では取り返せませんが。
乙としては、この本はおすすめではありません。
森木氏の著書としては、2005年2月刊行の『2008年 IMF 占領』を乙のブログ(2006.4.16)
http://otsu.seesaa.net/article/16624855.html
で取り上げたことがあります。そちらのほうがまだマシなように思いました。しかし、同書によれば、来年には、IMF が日本に乗り込んできて「占領」してしまうんですよね。1年先が楽しみです。
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