赤裸々な中国の姿が率直に描かれます。ここまで書いてしまっていいのかと思われるくらいです。
p.53 中国の年金問題にふれています。たった1ページの記述ですが、この問題の深刻さがわかります。
第9章(pp.177-198)では、「深刻な水不足問題」について書いています。これまた重大問題です。
第10章(pp.199-221)では、「搾取される農民」です。あからさまな農民差別が描かれます。p.221 には毛沢東が農民に対して愚民政策をとったことまで明記しています。
第11章(pp.222-240)は、「反日運動の背景」ということで、中国内部の事情から反日運動を説明しています。p.226 では、社会各層の負け組が不満を募らせていることを述べています。こういう不満が外国企業に向けられる可能性があるというわけです。これもチャイナリスクの一つでしょう。
第13章(pp.259-281)では、「中国経済の構造上の問題」です。p.269 に第三次産業の未発達が指摘されています。また、p.276 では、中国の不動産投資がバブルであることを具体的に記述しています。p.277 では、人民元を大幅に切り上げられない理由が書いてあります。人民元切り上げは中国の景気を冷え込ませ、不動産の狼狽売りが出て、不動産が暴落し、中国だけでなくアメリカの景気を冷え込ませてしまうとのことです。不動産問題も深刻な話です。さらに、p.278 以降では、不良債権問題について書かれています。これまた大きな闇です。
p.317 では、腐敗・汚職の蔓延について書いています。どこにでもあるような話ですが、中国の場合は、非常に深刻な状態だと思わせます。
全体を一読して、中国が抱えるさまざまな問題が、途方もなく大きくなっていることがわかります。
投資家としては、このような問題を抱える中国に長期的に投資していていいのかどうかという問題を感じます。
ある意味では、遅れている(問題がある)国だからこそ、将来の改善が期待でき、つまり発展の余地が大きいという肯定的なとらえ方も可能でしょう。しかし、この闇は相当に大きく、明るい未来は期待しにくいということもあります。乙の個人的な感想では、(この本を読んだ後では)後者のほうが強いように思います。
当面の北京オリンピックや上海万博などをうまく乗り切るために、ここ数年は経済的にも好調だろう(政府が強制的にそのようにし向けるだろう)と思いますが、その先はどうなるのでしょう。はなはだ不透明といわざるを得ません。その点で、乙は、中国投資については、数年で見切りをつけようかと思っています。
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