現代のマネーを六つの視点からとらえてみようという趣旨です。その六つとは、目次がそのまま内容を表します。
第1章 投資時代への期待と幻想―資産運用の環境変化
第2章 ポスト不良債権時代―銀行主導時代の終焉
第3章 経済社会を動かすファンド―「ファンド主義」は定着するか
第4章 米国型金融システムの揺らぎ―強さと脆弱さの危うい均衡
第5章 多極化へ動き出すマネー社会―多様化する国際経済
第6章 金融と社会との対話―金融は役立っているか
第1章が一番投資と関連すると思います。投資信託や分散投資、高金利通貨などを扱っています。ただし、新書ということもあって、記述の分量が多くないので、全体に中途半端な記述であるように思いました。
第2章は金融行政や金融システムをめぐる話題で、時代が変わったことを実感させる内容です。
第3章はヘッジファンドなどを扱っており、この章も投資と直接関連するといえます。ただし、ここでも踏み込み不足を感じます。
第4章は米国の金融システムについて述べており、アメリカに投資することを考える上では、是非知っておく必要があるでしょう。p.160 で、米国投資家の資金が、アメリカ市場を嫌って、BRICs などの新興国に向かっていることを述べています。最近は、従来のアメリカの投資家と違った側面が現れてきているというべきでしょう。
第5章では、新興国やオイルダラー、イスラム金融などが語られます。乙は、p.185 で述べているオイルダラーの行方が BRICs やヘッジファンドだということが興味深かったです。
第6章では、これからの日本は投資立国も視野に入れるべきだというようなことで、大きな目でものを見ようとしています。
全体として、おもしろい話題が扱われているのですが、全体にどうも中途半端な感じがしました。話題が分散している感じを受けます。各章を1冊分にするくらいでもいいのではないでしょうか。それなら、著者としても十分書き込むことができ、(読む方は大変かもしれませんが)充実した本になったことでしょう。(新書にいろいろ期待してもいけませんが。)
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