2007.4.12 http://otsu.seesaa.net/article/38495244.html
も書きましたが、ロングオンリー(株をじっと持って値上がりをねらう戦略)のアクティブ・ファンドの例として取り上げてもいいでしょう。乙は、澤上篤人氏の考え方に共鳴します。しかし、さわかみファンドは、インデックスを上回る成績を上げることが少ないという現実があります。これについて考えてみましょう。
株式市場では、1年に数回、優良株がぐっと値を下げることがありますが、さわかみファンドはそのときに以前から目を付けていた優良株を購入するという考え方をします。これ自体は、納得できる考え方です。
では、なぜ、このような戦略をとっても結果としていい成績を上げることができないのでしょうか。
ちょっと架空の例でシミュレーションしてみましょう。以下では、手数料抜きで考えてみます。
あるとき、株価(指数)が 100 だったとします。この段階で、資金の全額をインデックス・ファンドに投資したとしましょう。その後、株価が 130 まで上がり、90 まで下げ、また 130 まで上がったとします。このファンドは、最終的に純資産が 130 になっており、資産が 30 増えたはずです。
一方、さわかみファンドのような考え方をするファンドを考えてみましょう。株価が下がったときに買いを入れるわけですから、資金の全額を株式に投入することはありません。仮に、最初の段階で 80% を投入したとしましょう。そして、株価が(130 を経て)90 に下がったとき、タイミングよく手持ちの現金の半分を投入するとしましょう。(株価がここからさらに下がる可能性があり、そのときに積極的に買いを入れるためには、資金の半分を投入するのがせいぜいです。)最終的には、資金の 90% をこの株に投入したことになります。
すると、このアクティブ・ファンドの最終的な純資産は、次のように計算されます。
80% については、最終的に 130/100 倍になりますから、80×(130/100)=104 です。
10% については、最終的に 130/90 倍になりますから、10×(130/90)=14.4 です。
10% については、現金のままですから、10 で変わりません。
以上の合計は 128.4 です。資産は 28.4 増えたに過ぎません。
計算の結果、インデックス・ファンドのほうがいい成績になりました。
乙は、意外に思いました。投資のタイミングが合えば、アクティブ・ファンドのほうが運用成績がいいはずだと思っていたからです。
一般に、株価は長期的に見て上昇を続けるものと想定されます。したがって、上のシミュレーションは、かなり現実的なものだと思います。しかし、結果は、アクティブ・ファンドの成績はインデックス・ファンドを下回りました。
アクティブ・ファンドでは、安値を拾おうとして現金を一部保有しています。結果的には、これがファンドの運用成績を引き下げているといえると思います。
実際には、これに加えて、手数料の差(インデックス・ファンドのほうがアクティブ・ファンドよりも安い)が加わるのですから、ますますアクティブ・ファンドは不利だということになります。
乙なりの結論では、株式ファンドは、手持ちの資金全額をリスクにさらすことによって、高いリターンが得られる可能性があるということになります。買いのチャンスをねらって現金で保有していると、せっかくの株価上昇のチャンスを逃してしまうことになるというわけです。
今回の簡単なシミュレーションをしてみて、アクティブ・ファンドがインデックス・ファンドをなかなか上回れないということが自分なりに納得できました。
2007.9.1 追記
アクティブ・ファンドとインデックス・ファンドについては、
http://otsu.seesaa.net/article/53483889.html
で述べました。
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うまく説明できないのですが・・・
株価90のところで購入した10%分は
1/0.9≒1.11 倍 つまり 11.1%分の
価値(ウェイト)があるのではないでしょうか?
一番最初の現金を持っているところを基準に考えます。
株価 90 のところで購入した分は、最初に購入したときと比べると株数で 1.11 倍が買えることになります。しかし、投資した金額としては当初資金の 10% ということになります。
しかし、最終的に株価 130 のところで騰落率を判定することを考えると、90 で購入した分が 130 で売れたということになりますから 130/90 という計算でいいことになります。
わかりにくければ、総額 100 万円を投資すると考え、当初株価 100 円で 8000 株買ったと考えるといいでしょう。株価が 90 円になったときは、10 万円分を投資しますから、1111.111…株を購入することになります。端数は理論的なものですから実際には買えませんが。
これで、最終的には、128.4 万円になるはずです。
理解できました。
ただ 100→90→130 なのか
100→80→120 なのか
100→70→110 なのか
また 手持ち現金の割合をいくらにしておいたのか
はたまた 下がった時に 手持ち現金のうち
どの程度を投入するのか によっては
アクティブが上回ることもあるということですかね?
おっしゃるとおりです。
乙の試算は、あくまで典型的な一例にすぎません。条件を変えれば、アクティブファンドが有利になることもあると思います。
乙の試算は、一見アクティブファンドが有利であると見られる場合でも、計算してみるとそうとばかりはいえないということがわかり、意外な結果だったというわけです。