今の日本の異常な超低金利を中心に、金利のさまざまな側面を描いています。日本国はすでに破産処理過程に突入したとしています。
ではなぜ 2011 年なのでしょうか。
森木氏は序章で以下の3点を挙げます。
(1) 現在、財務省が悲願としている「プライマリーバランス」の赤字解消がほぼ絶望的になること
(2) 自治体の破産が常態化し、貯蓄率がゼロになること
(3) 原油価格の高騰が続くこと
乙が見るところ、これらはいずれも 2011 年という年を区切って問題になるのでなく、これからだんだん深刻な問題になるといった性質を持っています。したがって、「2011 年」という年には何ら意味はないと思われます。
だいたい、こういう未来予測的な本は「数年後が危ない」と主張するものです。数十年後が危ないといっても、遠い未来のことのように思われ、誰も危機感を持たず、本が読まれない(売れない)だけですし、1年後が危ないといったら、本が売れている間にそのときがきてしまい、「ほ〜れ、見よ。だから著者のいっていることは正しかった(あるいは間違っていた)のだ」ということになってしまいます。これまた本が売れなくなります。だから数年先にしておいて、本がきちんと売れ、しかも、その時期になるころには買った人々はみんな本の内容を忘れるくらいの「適切な」時期を指定して危機をあおるというような書き方になるのです。
この本は、序章+全8章で構成されています。乙は一通り読みましたが、序章「2011年問題」と第1章「金利をめぐる攻防」の約50ページを読めば、森木氏のいいたいことの趣旨はくみとれると思います。それ以降がムダだとは思いません。金利をめぐるさまざまな問題点を述べていて、有益な部分がいろいろあります。しかし、それらは森木氏の本来の主張とは別の面がかなりあります。
第1章では、金利が 3.5% を越えると、国債の暴落が現実化し、国はデフォルトを宣言せざるをえなくなる可能性があると説きます。こうして、円安、株安、債券安になるというわけです。こうならないためには、国債を順次償却していく(つまりは借金を返す)ことが必要なわけですが、これに関して森木氏は官僚の今までの考え方を見てくれば、どうもそうはならずに、日本国が破産するしかないのではないかと見ています。
森木氏の主張をそのまま受け止めて、個人レベルで考えれば、日本で株や債券を買ったりしているのは狂気の沙汰であり、海外に資金を移し、外国に投資する必要があるということになります。このあたりは、乙にはわかりません。投資家としては、国が破綻しても、しなくても、大丈夫なように考えておくしかないのではないでしょうか。つまり、海外投資もするし、国内投資もするということです。
ちなみに、森木氏には、森木亮(2005.2)『2008年 IMF 占領』光文社
2006.4.16 http://otsu.seesaa.net/article/16624855.html
という著書がありますが、これについて、本書の中で(p.23)「幸い、私のこの警告は、危機感を募らせた財務官僚の延命策により外れる見込みであるが、事態はより深刻になったのではないか。」と書いています。はっきりいえば、2008年に IMF が日本を占領するという前著の主張(警告?)は間違いだったということです。森木氏は、たった3年後のことが見通せないということを明言しています。
乙は、数年後、森木氏が『2011年 金利敗戦』をどう評価するかが楽しみです。
また、森木亮(2007.2)『ある財政史家の告白「日本は破産する」』ビジネス社
2007.2.27 http://otsu.seesaa.net/article/34777467.html
という本もあります。森木氏の主張は一貫していますが、……。
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