乙は題名に引かれて読んだのですが、実際の内容は副題のほうがよく示しています。特に第1章から第5章まではまさに「国際金融市場とソブリンリスク」と関連する視点から日本の財政を論述しているといえます。
もしかすると、本書の題名は編集者がつけたものかもしれません。
乙は、日本の財政破綻が心配なわけですが、それに関する話は、最後の3章に出てきます。
第6章「誰が国債を保有しているのか」では、日本の銀行や保険会社、年金、日本銀行が大量に国債を保有していることを述べています。これは、銀行や保険会社の判断でそうなったわけではなく、国際的な規制や日本でいうと金融庁などの規制のためでもあるとのことです。金融機関は、ある一定程度の割合でリスクなし資産を保有していなければならず、そのためにはリスクフリーとみなされる国債が一番都合がいいということです。
第7章「政府債務残高はなぜ増加したか」も重要な話です。日本の基礎的財政収支の悪化がひどいわけですが、そうなった理由の一つはバブル崩壊後の裁量的な減税政策にあるとのことです。また、社会保障費が増え続けていることも大きな影響を与えています。乙は減税が大きく響いているという意識はなかったので、おもしろく思いました。
終章「外国投資家に財政赤字の穴埋めを頼るとき、財政破綻が訪れる」では、どのように財政破綻が起こるかを略述しています。政府債務残高が民間の金融資産残高を上回るタイミングは 2025 年ありはそれよりも早い時期だという話で、残された時間は余りありません。
今の政治家たちの主張を聞いていると、一方では増税をせずに、他方では金を多方面にあれこればらまいているようです。これでは、政府の債務残高が減少するはずがありません。こういう事態に対して、個人ができることはあまりにも少ないように思います。
乙としては、淡々と投資を続けるだけですが、一方では、不測の事態にも対処できるよう、注意しておきたいと思います。
本書を通読してみると、なんだか、何となくどこかで読んで知っているようなことが多いような印象を受けました。乙がさまざま読んできた投資関連本のどこにそういうことが書いてあったかを思い出すことは不可能です。しかし、本書を読みながらどうも既読感がぬぐえませんでした。
本書は国債に関連する基礎的な知識を解説してると位置づければいいのでしょう。
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