第1章は「「投資」とは何か」です。こういうところから説きはじめるのですから、単なる投資本とは一線を画すものといえます。
pp.18-22 では、投資とは「確実な今」と「不確実な未来」を交換することだと説きます。すばらしい説明で、投資の本質をひとことで説明してしまいました。p.30 には、投資と消費がどう違うかといったことも説明されており、大変わかりやすいと思いました。
第2章「「価値」とは何か」と第3章「株式投資は人への投資」もおもしろかったです。投資の本質を手短に説明するものとして有意義です。
p.68 では、企業価値などをしっかり学んでから株式投資をするべきだと説きます。長期バリュー投資をねらう以上、こういう主張は当然でしょう。しかし、乙は、しっかり学ぶ時間もないし、インデックス投資を基本に考えたいので、あまり勉強しないで株式投資をしようなどと考えています。こういう態度では、著者からは怒られそうですが。
第4章「「デイトレード」のなにが問題なのか」では、デイトレードの問題点をきちんと指摘しています。乙は、自分ではデイトレードをしませんが、著者がいうほどにはデイトレードを否定的には見ていません。そういうやり方をする人がいても不思議ではありません。デイトレードで金儲けをすれば、儲けた金を何かに使うことで、結果的に社会に貢献する面もあるでしょう。デイトレードが大きな損失になってしまえば、それは証券会社や他の投資家に儲けさせたわけですから、それも社会貢献の一種でしょう。デイトレードは、するもしないも、個人の判断です。
あと、おもしろかったのは第7章「分散投資について」です。p.160 で、分散投資してもいいが、しなくてもいいと述べています。投資対象をよく知れば、分散じゃなく集中できるということです。乙は、そういうレベルで投資対象をよく知っているなどということはありませんから、分散投資を基本に考えていますが、一方では、(人によりますが)集中投資がいいということもあるように思います。
この本は、全体として、投資にすぐに役立つようなことはないと思います。しかし、こういう考え方を知ることは意味があります。インデックス投資を心がけている人は、こういう本をどう読むべきか、考える必要がありそうです。
なお、本書では、ところどころ、Q&A方式の記述が出てきます。この部分については、乙は不満が残りました。しばしば本文に書いてあることの繰り返しになっている例があるように感じたからです。
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