「身近な疑問からはじめる会計学」という副題が付いています。
どんな疑問か、取り出してみましょう。
1 さおだけ屋はほとんど売れなさそうなのに、次々と回ってくる。なぜ潰れないのか。
2 ベッドタウンに高級フランス料理の店がある。いつみても客がほとんどいないのに、なぜ潰れないのか。
3 在庫だらけの自然食品店がある。なぜ潰れないのか。
4 仕入れた商品を完売したのに怒られた。なぜか。
5 雀荘の店員と麻雀をやったら、その人がトップ賞をねらわずにゲームを止めてしまった。なぜか。
6 ある人がいつもワリカンの支払い役を買って出るが、それはなぜか。
というわけで、なかなか疑問としてはおもしろいと思います。まあ、本の題名にもなっている「さおだけ屋……」が一番インパクトがあるように思いますが。
それぞれの説明は簡単なものなのですが、それを書いてしまうと、ネタバラシになってしまいそうなので、止めておきます。
5は、腑に落ちない点がありました。雀荘は、客の回転率を高めるためにさっさと勝負を終えさせて次のゲームに誘導しているのだというのが山田氏の解釈ですが、これはホントでしょうか。雀荘が店員の負け分を出してくれるならば、この解釈で何ら問題はないのですが、p.133 にあるように、雀荘の店員が負けた場合、個人的に負け分を支払うという仕組みならば、雀荘の店員はマイナスで終わることを避けるようにすると思います。店員にしてみれば、回転率を高めて店を儲けさせようとしても、負け分を個人的に払うのでは自分としてマイナスになってしまいます。レートにもよりますが、店員がそんなことをするでしょうか。
6についても、乙は山田氏の解釈に従えませんでした。クレジットカードのポイント制度が影響しているでしょう。山田氏のこの議論は変です。
1〜4についても、ホントかなあと思える面があります。まあ、山田氏の考え方・解釈もありうるというように考えておけばいいでしょう。
全体として、身の回りのふとした疑問からお金の考え方を説明するという書き方はおもしろいと思いますが、結局、わかりきったことをやさしく解説しているだけのように感じられます。これが会計学の入門になるとはとても思えません。
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