2007年07月24日

本山美彦(2006.3)『売られ続ける日本、買い漁るアメリカ』ビジネス社

 乙が読んだ本です。「米国の対日改造プログラムと消える未来」という副題が付いています。
 いろいろと衝撃的な話が書いてあります。
第1章 米国エスタブリッシュメントが進める日本改造
 アメリカが超党派で全力を挙げて日本をアメリカの思うとおりに改造しようとしていると主張しています。
第2章 「神々の争い」に敗れた日本
 欧米は、基本的にキリスト教が主流であり、その意味で価値観を共有し理解し合えるのですが、日本は宗教観が違うので、欧米からは理解できない国と映るというわけです。
第3章 日米投資イニシアティブの正体
 アメリカが日本を安値で買うためにどのような動きをしているかを述べています。
第4章 日本の「医療市場」が飲み込まれる
 乙は、この章が一番おもしろかったと思います。
 医療市場という具体例をあげ、日本がどのようにアメリカの言うことを受け入れてきたかを説明しています。
 p.96 では、「日本の大学は「米国の予備校化」する」と述べていますが、ここはちょっと言い過ぎではないでしょうか。弁護士資格や会計士資格を米国政府が米国大学の日本校卒業生に与えるようになれば、日本の大学は米国大学の大学院にどれだけ進学させたかで価値が判定され、確かにある意味での「予備校化」になりますが、日本の大学は弁護士や会計士を育成しているだけではありません。大学全体でなく、一部を取り上げて「予備校化」と言っても意味がないように思います。それを言い出したら中文学科は中国の大学(院)の予備校化を目指しているとか何とか言えそうに思います。
 pp.99-104 アメリカの医療事情について記述していますが、乙は初耳だったので驚きました。アメリカはまさに医療を金で買う仕組みが貫徹している国です。
 p.120 神戸空港の開設の意味として、東アジア有事の際、負傷兵が神戸空港に空輸され、空港周辺の再生医療機関で手術を受けるためだという「推測」を述べていますが、あまりにもうがった見方でしょう。こんなことのためにアメリカが日本に膨大な負担を押しつけるのでしょうか。同じ金を使うなら病院船を充実させるほうがはるかに効果的でしょう。
 pp.141 米国で営業していない日本の監査法人に対しても、アメリカの「公開企業会計監査委員会」(PCAOB)に登録させる、つまり日本の監査法人は日本の当局だけでなく米国からも管理されてしまうという話が書いてあります。こんなバカなことがあるのでしょうか。
http://www.kpmg.or.jp/resources/keywords/pcaob.html
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/kounin/siryou/20060623/03.pdf
などに PCAOB の説明がありますが、アメリカの上場会社を監査する監査事務所だけを登録しているようです。ここは本山氏の勘違いではないでしょうか。
 pp.142-144 米国政府が日本政府に外資導入を積極的に要請している分野で、米国は自国の安全保障のために国防に関連する9分野で外国からの直接投資を禁止することができるという話です。こんな不平等なことがあるのでしょうか。
 「エクソン・フロリオ条項」をネットで調べてみると、
http://www.jetro.go.jp/biz/world/n_america/us/invest_02/
確かにそのように読めます。
 これは意外な大問題のように思えます。
第5章 「五つのレポート」が与えるアンダー・プレッシャー
 日本政府は、米国の方針に対して、抗議のポーズを示すだけで、本格的に反論しようとしていないという問題点を挙げています。
 p.157 米国の USTR の報告書に次のようにあるという話です。「日本に参入するのは米国の保険会社の権利であり、第三分野を外資に提供し、日本の大手の参入を阻止するのが日本政府の任務であり、そうした流れを作った上で、新種の自動車保険などを米国の会社に提供するべきである。」
 こんな勝手なことがあっていいのでしょうか。
第6章 世界経済を恫喝する「USTR」
 この章は、全体としておもしろくありませんでした。各種人脈などを長々と述べていますが、乙はそういうのにあまり興味がないのです。
 ただし、pp.216-220 あたりはおもしろく読みました。ロビイストはしばしば寝返るというのです。米国の USTR の一員として外国と交渉してきた人が、その後、外国企業の代理人になり、高額の報酬を得ているというのです。すごい話です。

 全体として、日米関係の不平等の実態が赤裸々に書かれていると思いました。こういう本を読むと、日本政府はまるで米国の植民地のように振る舞っているように思えます。どうにも日本の未来が暗く見えます。
 この事態に個人投資家としてどう対処するか。結論は一つでしょう。日本株に投資せず、米国株に投資するということです。ただし、もちろん、本山氏の主張に賛同すればという条件のもとでです。
 本書のものの見方・考え方は、原田武夫(2005.12)『騙すアメリカ 騙される日本』(ちくま新書)筑摩書房
2006.5.4 http://otsu.seesaa.net/article/17363116.html
などとも共通します。


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posted by 乙 at 05:40| Comment(0) | TrackBack(1) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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