本書は、投資の本ではなく、シニア層(団塊の世代や戦中派あたり)にどのようにマーケティングをするか(つまりものを売り込むか)を論じた本です。
本書を一読して大変おもしろく思ったのは、ここに描かれたシニア層の考え方は、乙が普段考えていることにかなり近いということです。乙もシニア層に近づきつつあることがよくわかりました。
なぜ、こういう結果になったかといえば、この本がシニア層多数に対する各種調査の結果に基づいて書かれているからです。
p.17 10歳ごとの貯金・負債現在高が載っています。20代は経済規模が小さいですが、30代は負債が 700 万円程度にふくらみます。40代も同様ですが、一方では 260 万円ほどの貯蓄もあります。50代になると、負債 500 万よりも貯蓄 1000 万円がはるかに大きくなります。60代以上は負債が 200 万円以下になり、貯蓄が 2000 万円を越えます。実際、今までの乙の経験でもこんなものでした。20代は金がなくて貧乏でした。30代から40代は、子供が生まれたり、マンションを買ったりして、どうしても赤字傾向が続き、生活が大変です。しかし、50代になると、子供が巣立ったりして、生活がぐっと楽になります。まともに投資を考え、実行するのはやはり50代以上ということになるでしょう。ホントは20代から投資を考えるべきなのですが、周りを見てもなかなかそういう人はいなかったし(単に周りの人には語らないということだけかもしれません)、給料が低く、生活が苦しいという状態では、「投資なんて……」ということになりがちです。そこで、ある程度の歳になって後から人生を振り返って、「若いときに○○をしておけば良かったのに……」となるわけです。投資はその典型でしょう。投資はこつこつ数十年も継続すれば、それはそれは大きなものになるわけですから。
p.60 でシニアがよく見るテレビ番組が挙がっています。ニュース・ドキュメンタリーで、「ためしてガッテン」や「プロジェクトX」など(今は見なくなりましたが)乙がよく見ていたものが書いてあります。
p.62 では、外食でよく食べる好みのジャンルが書いてあります。1位が鮨なのは当然(!)として、2位は中華料理です。乙もけっこう好みです。
p.118 夫婦別トイレが普通で、自宅にトイレが2個あるというのです。乙もまさにそうです。我が家では夫婦で厳密に区分しているわけではありませんが、何となく居場所に近いところに入るので、乙が1階、妻が2階のトイレに入ります。(それぞれのトイレにそれぞれの読みかけの本がおいてあります。)
pp.128-129 では、子供が購入する際に全額お金を出してあげてもいいもの、孫のためにお金を出してあげたいものが整理されて並んでいます。なるほど、乙がもう少し年を取れば、こういうことを意識しなければならないんですね。
p.131 では、家計は夫婦のどちらが管理するかが書いてあります。シニア層は妻が管理しているのですね。乙は、自分で管理しています。(投資するためには、そのほうがはるかにベターです。)
p.136 では、将来のための資金の運用の分担が書いてあります。一応、夫側のほうが多い結果になっていますが、妻側という回答もかなりあり、家庭ごとに大きく異なっている(家庭ごとにばらばらだ)ということがわかります。
本書を読むときは、いちいち納得・共感しながら読んでいました。まるで自分のことが書いてあるみたいです。
特に、p.147 以降で、多くの夫婦が写真付きで登場しているところが具体的でおもしろかったです。自宅の中の写真が多数載っており、それぞれの夫婦の生活のしかたが手に取るようにわかります。まさに「目は口ほどにものをいい」ですね。
本書で読みにくい点を一つあげれば、グラフの凡例がしばしば非常に小さな活字で表されていることです。たとえば、p.142 など、3行分の凡例が普通に読めるものでしょうか。若い人ならば大丈夫なんですかね。せめてポイントを2倍程度にしてもらえたら、シニア層が読むのも楽だったろうにと思いました。あ、この本は若い人が読んでシニア層に営業をかけるためのものだから、こういう小さな活字でもいいんですかね。
本書は、山崎伸治(2007.4)『「団塊の世代」は月14万円使える!?』(青春新書)青春出版社
2007.7.1 http://otsu.seesaa.net/article/46332712.html
よりも前に刊行されたものでした。
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