日経新聞の日曜日の「マネー入門面」の連載に手を加えてまとめなおしたものだそうです。ということは、乙は新聞掲載時に一通り読んでいるはずですが、そういうことはほとんど思い当たりませんでした。
かろうじて、本書中のところどころに現れるイラストやツッコミの表現でそれがわかる程度です。忘れることって多いんですね。
全体は@〜Hに分かれていて、それぞれ別のテーマについて解説されています。
@ 概説編といった内容です。
p.24 これまでは貯蓄は40代からでいいとされてきましたが、最近は「30代からこつこつ」が基本だそうです。しかし、乙のように、気が付けば30代ははるかに過ぎ去っていたという場合はどうしたらいいのでしょう。いろいろな年齢の人がいるわけですから、それぞれの場合に応じた書き方がされているとよかったと思います。
A 株式編です。
インデックス投資の話はなく、いきなり個別株の話になります。こういうマネー塾レベルの入門本を読む人には、最初に個別株投資をすすめるのはよくないと思います。そういう全体のバランスのようなものを考えると、本書の記述態度には疑問を感じます。
B 投資信託編です。
もっともなことが多いです。しかし、一方では、当たり前すぎて、読んでいてもおもしろくありません。
C 外貨投資編です。
為替の基本から始まって、外貨預金、MMF、外為証拠金取引などが説明されます。この章も当たり前の記述が多い気がします。
p.104 には、外債のコストが片道1%だという話が出てきます。
以前の乙のブログで書いたことですが、
2007.7.14 http://otsu.seesaa.net/article/47766706.html
乙はしんのすけさんの記事を読んで手数料が1%以上ということを知りましたが、ほぼ似たような話です。
D 企業業績の読み方です。まあ株式編の継続といったところでしょう。Aに連続して配置したほうがよかったのではないでしょうか。
E 金(gold)投資編です。
乙は金には興味がないのですが、一応の金投資の解説にはなっていると思います。(一読すると、ますます金投資は魅力的でないように見えます。)
F 保険編です。
p.166 保険の手数料が高いという話が出てきます。保険料総額の 62% にも及ぶという計算が示されます。
ちょっともどりますが、p.42 にも、生命保険は保険会社の手数料が高いという話が出てきます。合わせて参考にするといいでしょう。
こういう話を聞くと、生命保険はなるべく入らないほうがいいという考え方に共鳴します。
G ペイオフ編とH 税金編は、常識的な内容です。
全体を一読して、投資に対する心構えや全体的な方針の話が抜けているという印象を持ちました。乙としては@をもっと充実させていいのではないかと思いました。裏返していうと、個々の金融商品に関する知識はよく書けていると思います。しかし、そのようなバラバラの知識だけでは「お金の鉄則」は学べません。洋食、中華から和食まで一通り見せられ「どれを食べてもいいですよ」といわれた気分です。回鍋肉を食べながら日本酒を飲みつつフレンチレストランの品定めをしているといったらいいのでしょうか。
本書は「易しい入門書」といった位置づけです。当然のことが書いてあります。あまり読む価値はないと思いますが、初心者にはおすすめできるかもしれません。
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