乙は、たまたま Amazon で見かけて、タイトルだけ見て注文してしまったのですが、買って失敗でした。
第1に、マンガ(イラスト)が付いていて、それだけ内容が「薄い」のです。
いかにも初心者向きに見せようということでこの本をこんな体裁にしたのでしょうが、それはヘッジファンドに本当に投資しようという人には無意味なことだし、こういう入門書を読むような人はヘッジファンドに投資すること自体が間違っているように思います。
第2に、ヘッジファンド以外の記述部分が長すぎることです。
PROLOGUE「貯めてるだけで大丈夫!?」とPART1「お金を増やすためのベーシック知識」はヘッジファンドの話ではありません。いわば投資入門です。ここまでで 58 ページかけています。PART2 からがヘッジファンドの話ですが、巻末の用語集をのぞいて、全115ページの本なのですから、はじめの半分は不要と言っていいものです。
ちなみに、前半部分の記述内容は、乙がすでに知っていることばかりで、ほとんど何も新鮮味を覚えませんでした。
第3に、ヘッジファンドの実例が1例しか出てきません。
この本全体を通じて、掲載されているヘッジファンドはスーパーファンドだけ、販売会社はキャピタル・パートナーズ証券だけなのです。目論見書の読み方なども、スーパーファンドの例を挙げるだけです。つまり、この本は、スーパーファンドに投資させようという宣伝本に過ぎないのです。
第4に、著者がはっきりしないことです。
「ファンド研究会」は、表紙に名前があるものの、奥付には「企画編集」として登場します。実体はほとんどないものではないかと想像します。イラストや取材・執筆協力のところに個人名が挙がっているところを見ると、むしろそちらが実際の書き手ではないかと思われます。
検索エンジンで「ファンド研究会」を検索しても、本書の編者として名前が出てくるだけで、それ以外は見つかりません。
乙は、架空の団体をでっち上げることをすべて否定するものではありませんが、(いろいろな事情でそうせざるを得ないこともあるでしょう)著者は印税収入を得るとともに、内容に責任を持つわけであって、その著者がはっきりしないということは、内容に責任を持つ人がいないということにつながるように思いました。
第5に、参考文献がわずかしか挙げられていないことです。
奥付のページの右下に、小さな文字で、5点が書いてあります。木村剛「投資戦略の発想法」、藤沢久美「投資信託情報の選び方・使い方」、内藤忍「内藤忍の資産設計塾」、山崎元「お金をふやす本当の常識」、竹川美奈子「投資信託にだまされるな」です。こういうのを挙げることで、著者たちはヘッジファンドに関してほとんど何も勉強していないことがわかります。これらはヘッジファンドに関する本ではありません。ヘッジファンドに関する本はいろいろ出ているのですから、少しはそういうのを読むべきです。さらには、実際のヘッジファンドに自分の資金を投資してみるべきでしょう。その上で書くようでなければ、真実の姿は見えてきません。この本は、宣伝パンフレット並みのレベルの本でしかないというのは、こういうところに現れます。
全体として、本書は安易な投資本というべきでしょう。1575 円の価値はないと思います。
こういう本を出版するダイヤモンド社は、あまりにも見識がなさ過ぎます。
【関連する記事】
- 香川健介(2017.3)『10万円からできる! お金の守り方教えます』二見書房
- 大江英樹、井戸美枝(2017.2)『定年男子 定年女子』日経BP社
- 天達泰章(2013.6)『日本財政が破綻するとき』日本経済新聞出版社
- 安間伸(2015.11)『ホントは教えたくない資産運用のカラクリ 投資と税金編 ..
- 橘玲(2014.9)『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 2015』幻冬舎
- 橘玲(2014.5)『臆病者のための億万長者入門』(文春新書)文藝春秋
- ピーター・D・シフ、アンドリュー・J・シフ(2011.6)『なぜ政府は信頼できな..
- 小幡績(2013.5)『ハイブリッド・バブル』ダイヤモンド社
- 吉本佳生(2013.4)『日本の景気は賃金が決める』(講談社現代新書)講談社
- 川島博之(2012.11)『データで読み解く中国経済』東洋経済新報社
- 吉本佳生(2011.10)『日本経済の奇妙な常識』(講談社現代新書)講談社
- 野口悠紀雄(2013.1)『金融緩和で日本は破綻する』ダイヤモンド社
- 吉田繁治(2012.10)『マネーの正体』ビジネス社
- 午堂登紀雄(2012.4)『日本脱出』あさ出版
- ウォルター・ブロック(2011.2)『不道徳な経済学』講談社+α文庫
- 内藤忍(2011.4)『こんな時代を生き抜くためのウラ「お金学」講義』大和書房
- 瀬川正仁(2008.8)『老いて男はアジアをめざす』バジリコ
- 増田悦佐(2012.1)『日本と世界を直撃するマネー大動乱』マガジンハウス
- 藤沢数希(2011.10)『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門..
- きたみりゅうじ(2005.10)『フリーランスを代表して申告と節税について教わっ..
著者がはっきりしないというのはまあ出版界では
ありがちなことで、名前にバリューがない場合の
一つの方法ですよね。私もその端くれにいるもの
ですが、ずぶの素人ながら家購入マニュアル本を
作ったことがあります……
個人的にはダイヤモンド社が出した本というところに
びっくりしていますが、まあお金が出たんでしょうね。
キャピタルパートナーズ証券お得意のセミナーで
配るための本という気がいたします。