本書全体を通して、インデックス投資などとは正反対の「オレ流」の考え方を述べています。乙は、これが正しい方法だとは思いませんが、しかし、こういう考え方に同調する気持ちもわかります。横田氏に言わせれば、(pp.191-196 にありますが)こんなあいまいな態度がよくないのであって、自分流のスタイルを確立し、それを継続しなければならないということです。
pp.8-9 では、「はじめに 今年はベンツ5台分の利益をあげるぞ!」ということで、今年の目標を書いています。ただし、こんなことを書くよりも、ひとこと、資産の総額を書いておいてほしかったです。そのほうが本書をよく理解できると思います。
第1章は「オレの戦績とポートフォリオ」です。
p.32 には、横田氏のバランスを欠いた(現在の)ポートフォリオが出てきます。日本株 42%、Jリート 27%、海外リート 9%、アメリカ株 7%、ヨーロッパ株 6%、海外債券 3%、アジア&新興国株 2%、その他 4% ということです。普通に考えれば、日本株とJリートが大きすぎるわけですが、横田氏は、わかっていてやっています。こういう考え方もあるのではないかと思います。
たとえば、p.33 には、日本の国債を買わないという主張が出てきます。長期金利が低すぎるからだという単純な理由です。乙も同じ考え方をしています。正統派インデックス投資の考え方からすれば、なにがしかの資金を日本国債にも向けるべきだということになりますし、そういう考え方を述べた本もあるわけですが、初めから微々たる金利しか付かないような運用をしてそれでいいという考え方には違和感があります。今後国債の金利が上がってきたら購入すればいいという話です。となると、自分で各種金融商品の値上がり・値下がりを予想して、ポートフォリオをダイナミックに変えていくという考え方も一理あるということになります。
第2章は「なぜ日本株に強気なのか?」です。日本株に集中投資する理由が書いてあります。
p.50 には、日本では株も不動産も値上がりしており、すでにインフレが始まっているという現状認識が書かれています。デフレから脱していないという(一般の?)見方を否定します。すると、金利が上がってきます。そこで、株と不動産に投資するべきだということになります。
p.66 あたりで、日本株を買う場合、インデックス・ファンドか ETF がよいということが書いてあります。
p.73 には、日本株の売り方(売るタイミング)まで書いてあります。インデックス投資の考え方では、株はずっと保有したままなのですが、横田氏は、ダイナミックにポートフォリオを変えていく考え方ですから、どう売るかも考えておかなければなりません。
第3章は「Jリートは本当にバブルか?」です。p.90 では、金利が上がってくればJリートの価格は下落するから、このタイミングを読んで(利益を確定して)売るということです。当然の考え方です。横田氏の場合、すでにたっぷり仕込んであるわけですから、今は売るタイミングを見計らう時期なのです。
第4章は「海外投資の予定」ということですが、実は、今は円安なので、海外投資には向かないという見方が述べられます。そろそろ米国債を買ってもいいかという時期のようです。p.97 では、もう少し待って、金利高・円高のタイミングでヨーロッパ債券に投資するという考え方が示されます。
第5章は「3×3の資産クラスでいく」ということで、投資全般の考え方が述べられます。これは、日本、アメリカ、ヨーロッパという3地域と、株式、債券、不動産という3種類の投資先を組み合わせて、9つの資産で考えようということです。エマージング諸国は無視するのですね。これも一つの考え方です。
p.112 に述べられるように、この9つの資産のうち、安いものから順次買っていくとのことです。広い意味でのバリュー投資の考え方です。
また、p.123 に述べられるように、グローバル株式のインデックス・ファンドをベースにして、それに加えて9つの資産で少し比重を変えて投資するようなこともいい方法でしょう。
p.124 では、中国株、インド株、ベトナム株など、少しは持っていても、基本的には興味がないとのことです。p.125 では、マイナーな通貨の債券も興味なしとしています。
第6章は「オレの理想的投資バランス」です。p.130 値上がりしたものから売っていく、p.132 値下がりしたものから買っていく、というやり方を説いています。個別株式にはナンピン買いといわれる方法がありますが、横田氏はこれに否定的です。一方、インデックスで買い下がる分には結構うまく行くとのことです。そんなものかもしれません。
p.150 から、最終目標の比率を載せています。でも、これってちょっと変です。経済状況に応じて、ダイナミックにポートフォリオを変えていくやり方をするなら、「最終目標」は存在し得ないはずです。それとも、最終目標を設定しつつ、実際はそれとは違った比率で投資するのでしょうか。いずれにせよ、ここの記述は違和感があります。
第7章は「初級・中級者への親切アドバイス」です。この章は、横田氏の豊富な経験に基づいて書かれていて、おもしろいと思いました。
p.162 で、どんな金融商品も買ってみなければわからないということが出てきます。乙もまったく同感です。変な商品でも、それが変だとわかるのは、買ってみてからではないでしょうか。頭のいい人は買う前に気が付くのでしょうが、一般には、買ってから、運用状況を見ていて、どうもこれは変だと気が付くものだろうと思います。そのようなことのすべてが勉強ですから、少しくらい損失を出しても、その後の大きな損失を避ける知恵が付いたと考えて、いいのではないでしょうか。最終的にこうするという結論に達しても、その話を伝え聞いた人は、きちんと理解できないと思います。やはり試行錯誤しつつ経験を積み重ね、きちんと自分のものにする必要があるのではないでしょうか。
p.167-172 (日本の)小型株はきらいだという話です。なるほどなあと思いました。乙も、若干の小型株を持っていますが、ここのところの値下がりで、どうしようもなくなっています。なぜ小型株がおかしくなるのか、この部分の記述でわかるような気がしました。
p.185 から、インチキ野郎として、マネー雑誌、新聞、アナリスト、ファンド・マネージャー、ファイナンシャル・プランナー(本書では「ん」が「そ」で印刷されていてぎょっとします)、テレビ、などを滅多切りにします。最後に「本」が出てくるのも笑えます。この本も「本」なのですから。
というわけで、ある見通しを持った投資のやり方を教わった気がしました。乙は、まだまだ初心者であり、ここまでの経済観は持っていませんが、将来的には、こんなやり方をしてみたいものだと思いました。
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