http://otsu.seesaa.net/article/62004596.html
「最近、ファンドからETFにシフトしている中、ハンセンH株を増やしているのですが、(乙注:中国を)新興国としてみるのか、準先進国?としてみるのかによって、今後の投資配分が違います。乙さんの考えを教えてください。」
ちょっとこれについて考えてみましょう。
結論からいうと、乙は、中国を新興国に入れて考えています。
先進国と新興国の違いは、株式市場の時価総額だけではないと思います。時価総額で考えると、香港+上海で日本を追い越す規模だという話ですが、それでも中国は先進国に入れるには問題があると思います。
第1に、中国は資本主義経済を標榜していますが、社会構造の基本は共産党の一党独裁であり、この点で他の先進諸国と決定的に違っています。民主的に選ばれた議員たちが国の方針を決めているわけではありません。
このような体制では、いつ何時、時の政権が経済制度をひっくり返すようなことがあるかもわかりません。そんなことしたら大混乱が起こりますから、しないだろうと思いますが、しかし、税制や各種の税率を大幅に変えることくらいは行うでしょう。他の先進国と比べれば、そういう大変化・大事件が起こる確率が高いだろうと思います。
第2に、中国の株式市場はまだ十分に成熟していないと考えられることです。これについては、最近読んでいる、張志雄・高田勝巳(2007.6)『中国株式市場の真実―政府・金融機関・上場企業による闇の構造』ダイヤモンド社 にいろいろと記述があります。この本については、読み終わったらブログで取り上げる予定ですが、中国の株式市場を巡って、さまざまな汚い事件がたくさん起こっていることを赤裸々に詳しく記述しています。こういうことを知ると、中国では何でもありだと思えてきます。これでは先進国とは呼べません。
第3に、最近の株価の高騰があります。上海A株は、特にすごいわけですが、こんな高騰は、新興国ならではでしょう。中国人の余剰資金が株式市場に過度に流れ込んでいるだけです。先進国の株式市場の場合は、もっと安定して上昇するものです。H株にしても、その上昇ぶりは目を見張るものがあります。これは単に上昇を喜ぶべきではなく、そのうち、大暴落があるのではないかと思わせます。こんなふうにボラティリティが高いことは、中国が新興国であることを示唆しています。
第4に、世界に開かれた資本市場があるかどうかという点があります。人民元は、他の通貨と自由に両替できるようにはなっていません。為替レートは人為的に決定されています(少なくとも、そのように見えます。)したがって、外国人が自由に人民元投資ができるようにはなっていません。(各種の裏道はありますが。)人民元が変動相場制になり、他通貨との間で自由な資本の行き来ができてやっと「開かれた資本市場」といえると思います。
中国企業が香港において香港ドル建てで上場したものがH株ですが、そもそもこんな上場があること自体おかしい制度だといえます。
BRICs 各国は、世界の中で次第に大きな存在になってきています。これらの国で経済成長が続いていることは周知の事実です。特に、中国とインドの株式市場の時価総額が大きくなっています。このままいけば、今後10年程度で先進諸国と肩を並べ、その後抜き去るでしょう。しかし、その他もろもろのことをあわせて考えると、諸制度が整っていて安心して投資できる先進国とはやはり違っていると思います。
準先進国扱いをするのはいつごろか。それは、そうなってみるまでは何ともいえません。乙は、単に時価総額だけを見て準先進国扱いするのはよくないと考えます。
中国株には、乙も ETF の形で投資していますが、完全に信頼しているわけではありません。今は、おっかなびっくり資金の一部を投入しているといったところです。
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