大変おもしろい本です。読みおえて、久しぶりに爽快な気分になりました。
山崎流の株式投資の考え方がわかりやすく書かれています。新書ということもあって、むずかしい話は出てきません。誰でも読めるし、理解できると思えます。
最近のファイナンス理論に関する山崎氏の勉強ぶりはさすがです。こういう人の本ですから、基本的に信用できそうに思います。
p.64 「「悪しき結果主義」を卒業しよう」ということです。「悪しき結果主義」は「何が正しいかは、実際に運用してみたパフォーマンスで決めよう」という考え方です。
これについては、乙がブログで述べたことがありますが、ヘッジファンドについて、実際に運用してみて、結果を見ようとしています。
2007.5.7 http://otsu.seesaa.net/article/41009406.html
2006.8.16 http://otsu.seesaa.net/article/22402936.html
山崎氏はこれを否定しています。仮にそういう運用がうまくいっても、「幸運な誤差」だというわけです。山崎氏は p.67 で「少なくとも、知的には、「悪しき結果主義」を卒業した話ができる人とでなければ、運用の話をしても不毛だ。」と述べています。ですから、乙は山崎氏と話ができる資格がありませんが、ヘッジファンドについては、「悪しき結果主義」でいいように思います。数年間運用してみて、パフォーマンスが悪ければ「自分が間違っていた」ということで解約すればいいですし、パフォーマンスがよければ、その線をさらに延長して投資してみてもいいのではないかと思います。(延長しなくてもいいですが。)ヘッジファンドがインデックスを上回る可能性が、主観的には 40% くらいありそうに思います。逆にいえば、下回る可能性が 60% くらいでしょう。合理的な判断としては、ヘッジファンドに投資しないほうがいいのかもしれません。しかし、資金の一部でそういうものに投資してみるのも(ギャンブルと同じで)おもしろいと思います。
p.73 「目標株価の設定は必要ない」というところです。乙は、この議論に納得しました。しかし、以前、乙が株を買ったときには、見事に目標株価などを決めていました。今では、当時は株のことを知らなかったのだなあと思っています。
p.159 「投資信託などのファンドマネージャーが市場平均よりも稼いでくれるという実績がないのに、顧客がファンドマネージャーにお金を預けるのは、「自分がやっても同じくらい儲からないなら、失敗した時に他人を責めることができる方が気楽だ」という心理が働いているからだろう、という研究もある。」この言い方は、投資信託を買う人の心理を鋭く指摘しています。山崎氏のオリジナルな研究ではないところが残念ですが、まあ、「終わりよければすべてよし」です。山崎氏は投資信託の意味の一つを指摘してしまいました。
p.179 「(5) 直近を含む過去の一定期間に成功している方法は、必ずしもそれ故に有望とは言えない(場合によっては、むしろ警戒すべきだ)。」p.180 では、過去の運用がよかったファンド(特にヘッジファンド)について、「うまい運用だから今後も有望だ」と考えるよりも「畑が荒れたから今後はむずかしい」と考えるべきだとしています。この考え方は乙と正反対です。一般の人でも、過去の成績がよかったファンドに投資する傾向が強いように思います。やっぱり結果を見て、ファンドマネージャーの腕を推測するような考え方をしているのでしょうね。
【関連する記事】
- 香川健介(2017.3)『10万円からできる! お金の守り方教えます』二見書房
- 大江英樹、井戸美枝(2017.2)『定年男子 定年女子』日経BP社
- 天達泰章(2013.6)『日本財政が破綻するとき』日本経済新聞出版社
- 安間伸(2015.11)『ホントは教えたくない資産運用のカラクリ 投資と税金編 ..
- 橘玲(2014.9)『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 2015』幻冬舎
- 橘玲(2014.5)『臆病者のための億万長者入門』(文春新書)文藝春秋
- ピーター・D・シフ、アンドリュー・J・シフ(2011.6)『なぜ政府は信頼できな..
- 小幡績(2013.5)『ハイブリッド・バブル』ダイヤモンド社
- 吉本佳生(2013.4)『日本の景気は賃金が決める』(講談社現代新書)講談社
- 川島博之(2012.11)『データで読み解く中国経済』東洋経済新報社
- 吉本佳生(2011.10)『日本経済の奇妙な常識』(講談社現代新書)講談社
- 野口悠紀雄(2013.1)『金融緩和で日本は破綻する』ダイヤモンド社
- 吉田繁治(2012.10)『マネーの正体』ビジネス社
- 午堂登紀雄(2012.4)『日本脱出』あさ出版
- ウォルター・ブロック(2011.2)『不道徳な経済学』講談社+α文庫
- 内藤忍(2011.4)『こんな時代を生き抜くためのウラ「お金学」講義』大和書房
- 瀬川正仁(2008.8)『老いて男はアジアをめざす』バジリコ
- 増田悦佐(2012.1)『日本と世界を直撃するマネー大動乱』マガジンハウス
- 藤沢数希(2011.10)『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門..
- きたみりゅうじ(2005.10)『フリーランスを代表して申告と節税について教わっ..
「新しい株式投資論」を読みました。
内容は理解できても、
他の山崎さんの本より、私にはちょっと
読みにくい感じがしました。
TBさせていただきます。