2008年02月13日

日経マネー(編)(2007.10)『8841人アンケートでわかった!「勝ち組」投資家の法則』日本経済新聞社

 乙が読んだ本です。
 8841人にアンケートして、その結果を分析することで、どういう人が株式投資で勝つ傾向があるのかを明らかにした本です。ということで、何だかとてもおもしろい本のように響きます。「株式投資で儲ける方法」はいろいろあるけれど、多人数に対する調査であれば、かなり信頼できそうに思えます。そういう期待があったから、乙は 1,050 円を出して買ってみたのです。読後感としては、がっかりする本でした。
 まず、「勝った、負けた」の判定ですが、2006年2月から2007年1月までの運用収益を基準にしています。この1年間でどうであったかということです。乙に言わせれば、これでは短期投資の成功・失敗しかわかりません。この1年では、新興株が下落し、大型株(東証1部)はそうでもなかったと思いますが、そのことがアンケートの結果に大きく響きます。新興株に投資していた人は負け組が多く、大型株に投資していた人は勝ち組が多いとわかったとしても、では、それを一般化して、大型株に投資すれば勝てるのかと考えれば、決してそんなことはありません。そのときのマーケットの動きに左右されるのです。
 というわけで、この本のような考え方を進めていくと、どうしても短期投資になってしまいます。だって、勝ち負けの判定基準がそもそも短期投資志向なんですから。
 内容面でも、「あれれ」と思うところがいろいろあります。
 たとえば、p.54 で、「株式投資をする上で心がけること」として「損切りと利益確定のラインを決めておくこと」と答えた人の比率を示し、ニコニコさん(勝ち組)では 19.6% であったのに対して、トホホさん(負け組)では 21.6% であったということから、損切りと利益確定のラインを決めておく考え方は負け組のほうが多いという結論を出しています。いやはや、こういうことでは困ります。日経マネー編集部は比率の見方がわからないのでしょうか。それぞれの数値をよく見てください。19.6% と 21.6% で、たった 2% の違いしかありません。こんなのは意味があるはずないじゃないですか。
 もう少しきちんと数字を詰めてみましょうか。p.24 によれば、ニコニコ投資家は 484 人、トホホ投資家は 764 人だそうです。ということは、損切り・利益確定ラインを決める人は、勝ち組の場合、484 人中の 95 人、負け組の場合、764 人中の 165 人ということになります。この数字を使って比率の差の検定をしてみると、有意差なしとなります。つまり、この 2% の差は統計的に意味のある差ではないということです。統計的に意味がないだけでなく、(仮に有意差があったとしても)常識で考えたって、20% と 22% のたった 2% の差が意味を持つとは信じがたいでしょう。
 同様に、p.59 でも、証券会社選びで「モバイル機能」を重視している人の比率が、ニコニコさんで 13.2%、トホホさんで 16.1% と、トホホさんのほうが多く、したがって、証券会社選びではモバイル機能を重視しないほうがよいという結論を出しています。しかし、両グループの差は、たった 2.9% しかないのですよ。
 これまた、比率の差を検定してみると、64/484 と 123/764 を比べると有意差なしです。
 この調査は、「日経マネー」という雑誌の編集部が 2007 年の2月に行ったものだそうですが、こんなずさんな結果を堂々と単行本に掲載しているということに対しては、きつく文句を付けておくほうがいいように思います。こういうことでは「日経マネー」は信頼をなくすと思います。
 この本の中で一番おもしろいところは、p.11 にある投資力チェックテストです。18問に答えると、株式投資でどれくらい利益が出せるかがわかる仕組みになっています。
 ちなみに、今は、この本を買わなくても、ネットでできるようになっています。
http://nikkeimoney.jp/topics/071026/check_test.xls
 たぶん、今回のアンケートの結果に基づいて、林知己夫氏の数量化理論第U類か何かを適用して、個々のカテゴリーの点数を求め、その結果を丸めて簡単に計算できるようにしたのでしょう。そのような手続き自体は、悪くありません。(上述のように、あくまで短期投資を基準に考えているのですが。)
 さっそく乙もやってみました。その結果、乙の投資力は 68.5 点と出ました。p.99 によれば、これはランクA(超優秀)なのだそうです。「ふ〜ん」といった感じです。(でも、おもしろかったです。)
 で、乙は本書で自己採点しながら「おや?」と思ったのはQ18でした。「ネット証券選びで重視するポイントに、「外国株(米国、中国、韓国など)」の品ぞろえは外せない。」ということに対して、「そうだ」と答える方が投資力が高いと判定されるのです。乙は「まったくそうは思わない」を選びました。資金の一部を外国株に投資することは望ましいことだと思いますが、それは「ネット証券を選ぶ」ときのポイントとは無関係だと思います。ネット証券とは別の手段で行えばいいのです。ネット証券は安く株の売買ができればそれでいいのではないでしょうか。外国株の売買まで考慮してネット証券を選ぶというのは、乙の感覚では、ずいぶんずれているなあと思いました。いや、つまり、乙の考え方が本書でいうところの勝ち組の考え方と違っているということでしょう。
 ともあれ、変な本を買ってしまったということで後悔しています。
 こういう本は、世の中に害毒を流すだけで、「日経」の名折れだと思います。
 ま、マネー雑誌の(編集部の)レベルを知ることができたという点では意味があるかもしれません。


2008.3.2 追記
 この話に関係することを
http://otsu.seesaa.net/article/87896547.html
に書きました。ご参照ください。


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posted by 乙 at 05:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 投資関連本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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